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やさぐれ日記 #451〜500

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やさぐれ日記 #468  墓参り

やさぐれ日記 #468 墓参り

夕方5時過ぎ、祖父母の墓参りに行った。

墓参り、というものに1人で行くのは初めてだ、何気に。

近くのスーパーで花を買い、母から借りた線香とライターを持って墓まで向かう。

花は、あらかじめ短く切られて売っていた仏花があったので、それにした。

墓は山に面していて、そこまでの小道もかなり鬱蒼としていたが、最近、山を削って建物が出来て、それに合わせてとても綺麗になった。

もう、鬱蒼としていた頃の

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やさぐれ日記 #467  喫茶店

やさぐれ日記 #467 喫茶店

用事までの時間潰しに、仕方ないから、そこにあった喫茶店に入ることにした。

そこにあった、というだけの理由で選んだ喫茶店。

今流行りのレトロ"風"な店ではなく、説得力のあるレトロな店構えの喫茶店。

重みのある木で出来た扉と木枠の窓は美しく、古臭いけれど品が息づいている。

賑やかな大通りに面しているが、そこだけ木陰に守られているような静けさがある。

重みのある扉をくぐり店に入ると、威圧される

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やさぐれ日記 #466  私の平和な午後

やさぐれ日記 #466 私の平和な午後

今日は映画を観ると決めていた。

そもそも遅い始まりの朝、部屋の掃除と買い物が長引いて、映画を観始めたのは昼過ぎだった。

今日のために買っておいた、PRINGLESのサワークリームオニオンをつまみながら再生ボタンを押す。昨日ちょっとつまみ食いしてしまったのだけど。

泣くつもりじゃなかったのに泣いて、でもどことなく泣くつもりだった気もしてて、映画が終わる頃には机の上はティッシュでいっぱいだった。

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やさぐれ日記 #465  ハンカチ

やさぐれ日記 #465 ハンカチ

この頃ハンカチを使うようになった。

何かと貰う機会の多いハンカチ、ずっとタオル派だった私は、引き出しに溜まって行く一方だった。

だけどあるものなら使ってみようと使い始めたら、これが意外と使い良かった。

ハンカチは水を吸うと乾きにくいイメージだったが、思ったより速く乾くし、なにより荷物にならない。

こないだ使ったハンカチが、物干し竿に吊るしてある。いつか昔にもらったツモリチサトのハンカチ。

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やさぐれ日記 #463  四葉のクローバー

やさぐれ日記 #463 四葉のクローバー

あ。

ふと目があった、四葉のクローバーに手を伸ばす。

プツン。と摘み取ったそのとき、瞬間的にやめておけばよかった、と思った。

幸せを終わらせてしまった、そんな気になって、ついつい手に入れたくなってしまった自分を恥じた。

せめて押し花の栞にしようと、水道で土を流して、水気を切るために少しだけ干しておくつもりだった。

だけど何かと用事を済ましているうちに忘れてしまっていて、翌朝みたらシワシワ

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やさぐれ日記 #462 雨上がり

やさぐれ日記 #462 雨上がり

車に乗って遠出をしようと思う日は、何故だかいつも雨予報だ。

晴れていた日もあるのだろう。でも、私の頭は雨の日ばかり覚えている。

今日も、少しずつ雨足が強くなり、夕方には落雷や激しい豪雨になるらしい。

それでも、何となく不安な気持ちを拭うように、車のエンジンをかける。

最初こそよかったが、しばらく走ると徐々に雨足が強くなってきた。

細かい雨粒が、いたずらみたいにフロントガラスにぶつかってく

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やさぐれ日記 #461 桜

やさぐれ日記 #461 桜

眠気なまこの体に鞭を打って、桜を撮りに家を出る。

おそらくもう、数日で散ってしまうだろう。

撮っていたら、散歩の人が「満開ですね」と私に声をかけた。

「そうですね」、と返す。

春生まれだが、風が冬より冷たい気がするし、何だか落ち着かないし、春はあんまり好きではない。

ただ桜を見たときには、春が来てよかったと思う。

春はこのためにあるのだ、とさえ思う。

やさぐれ日記 #460  春の人々

やさぐれ日記 #460 春の人々

電車の車内は、春めいた服の人々が詰め込まれている。

3月下旬、日曜日の大阪。

1ヶ月くらいぶりだけど、たぶん季節が変わったこともあるのだろう、電車に乗るのは随分と久々なことのように思えた。

目の前に、ジャケットにタータンチェックのパンツを履いた小柄な女性が乗り込んでくる。

オフィススタイルのような小綺麗な格好の彼女が懸命に覗き込むスマホには、イケメンのキャラクターが映っていた。

少し伸び

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やさぐれ日記 #457  焚火

やさぐれ日記 #457 焚火

わけもなく、無性に泣きたくなる時がある。

いやもう、泣いている。

暖房が入らなくなったワンルームのアパートの、ホットカーペットの真ん中で。

わけもなく涙が出る、なんて言葉にすれば、やばい状態の人だ。

だけど悲しい。

世の中のことを考えても悲しい。

仕事のことを考えても悲しい。

お金のことを考えても悲しい。

恋のことを考えても悲しい。

例の『イケメン』に会ってから、どうも自分のやる

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やさぐれ日記 #459  図書館

やさぐれ日記 #459 図書館

昼過ぎ、図書館に行った。

この町に引っ越してから初めての図書館。

いやそもそも、図書館なんてかなり久しぶりではないか。

きちんと本を読みに入ったのは、15年ぶりくらいかもしれない。

館内に入ると、小綺麗でこそあったが、ふわりと時間を感じる匂いがした。

それは決して『いい匂い』ではなかったが、不思議と不快感はなく、誰も拒まない匂いだと思った。

無数の背表紙を眺めながら、ぐるりと館内を歩く

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やさぐれ日記 #456  イケメンはライバル

やさぐれ日記 #456 イケメンはライバル

『ヒエラルキー』というものは、どこに行ってもいくつになっても、ふとひょっこりと顔を出す。

久々に、人間社会の『ヒエラルキー』のてっぺんの部類であろう、イケメン上司と飲みの席で一緒になった。

ピラミッドで言えば、頂上のキャップストーンの部分だ。

物事の良し悪しを図るには無数の視点があるとは言え、人間が社会的な生き物である以上、社会で上手く立ち回ることができ、自分の幸せを明確に持ち、実現のために

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やさぐれ日記 #458  ほろよいジャスミンライチ

やさぐれ日記 #458 ほろよいジャスミンライチ

ほろよいのジャスミンライチ。

絶対美味いやん、と思って買ったジャスミンライチ。

何か今日、文字に書こうと思ったことがあったのに、3%のアルコールで脳みその隙間が満たされたせいでしっかり忘れてしまった。

やっぱりめっぽう酒に弱い。
飲む機会が減って、さらに弱くなった気がする。

でも美味かった、ジャスミンライチ。

頭がぼんやりとして、素直にテレビに笑えちゃったりして、酒を飲みたくなる人の気持

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やさぐれ日記 #455  散々な日も

やさぐれ日記 #455 散々な日も

今日は『散々な日』というのがぴったり似合う日だった。

朝起きたら、右の耳がぼんやりと重く曇っている。

この感覚は初めてではない。

これも立派に生きている証拠だから恥じずに言うけれど、私は生まれつき耳垢が極端に柔らかく、定期的に耳鼻科に行かないと、耳の穴に詰まってしまうのだ。

ここまでの曇り具合はご無沙汰だ。久々にやってしまった。

仕方なく、いつもの半分のぼんやりとした音のまま仕事に向かう

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やさぐれ日記 #454  雀

やさぐれ日記 #454 雀

信号が青に変わるのを待っていると、道路脇の垣根にいっぱいの雀が生えていた。

つまらぬところが母に似て、鳥はどちらかと言うと得意ではないが、雀にはだいぶと甘い。

ぽてりとしたフォルムと、まあるい頬っぺたと、可愛らしい鳴き声に騙される。

私は100%、鳥を外見で判断している。

その愛らしい雀の群れが垣根にとまって、白くて丸い花のように咲いている。

中にはふらりと飛び立って、ガードレールにとま

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