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主に音楽についての文章

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  • 心臓日記

    心臓は大切に 命も大切に

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心臓日記第4部──4日目から7日目

4日目  ICUが朝からバタバタしている。難しい患者さんのようだ。たくさん声が聞こえる。  二つ向こうの部屋で、亡くなられた方に声をかけているような言葉が聞こえる。「好きなことしたから悔いはないっていつも言ってたし」「治ると思ってがんばったのにね」。泣いてしまう。  朝の採血で貧血が進行していて、また輸血するかもしれないとのこと。血圧も70/40と低い。寝ている分には自覚症状はないのだが。  とは言え昨日よりは元気が出ない、というか全体がだるい。リハビリの先生も来たけど今日は

    • 心臓日記第4部──1日目から3日目

      1日目  入院準備はさすがに慣れたもので、手続きから各種事前検査までするすると流れるように終わらせる。赤ちゃんがベッドで運ばれていくのを見られてかわいい。  明日は左手首と右鼠蹊部の両方からカテーテルを入れる計画。これはつらそう。  夜からまた点滴を入れる。 2日目  今回は午後からの手術(時間がかかるのが分かっていたから)。いつもの手術室。ビニールの帽子を被らされたが、初めてな気がする。しかしこれを被らないと入れないらしい。これまでも被っていたのに気付いてなかったのだろう

      • 心臓日記第3部

         3回目の手術入院が終わった。今回は短いのでまとめて書く。 1日目  入院受付で書類を受け取っていつもの病棟のナースセンターへ。血圧と身長体重を測る。ベッドがまだできていないのでということで先に心電図とレントゲンを撮りに行く。  昼ごはん前に先にレンタルパジャマと水を買いに行く。帰り、エレベーターが混むだろうと思って階段で行ったら途中までだった。階段で病棟まではいけないことが判明。  戻ってきていつもの簡易心電図マシンをつけて、採血する。明日は右手首からやるらしいと聞く。

        • 心臓日記第1部 その7──退院

           4週目半ば、遂に退院。  朝から退院準備。次回外来までの薬をもらって、その後支払いに行く。高いだろうとは思っていたけど、通常の3割負担でも普通ではそう簡単には払えない金額。高額医療費なんとかを使ってかなり減る。  ペンギンが迎えに来てくれて、タクシーで10:30くらいに家に戻り、食料を買いに行く。10分程度だが非常に疲れる。  家に冷凍パスタがあった。塩分2.5gだったのでこれとキャベツを食べる。味が濃くて感動。  眠すぎるので夕方まで寝る。  夕食前にシャワー。湯船はちょ

        心臓日記第4部──4日目から7日目

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        • 心臓日記
          14本

        記事

          心臓日記第1部 その6──通常病室パート2

           当初の予定では2週間で退院、つまりICU1週間+通常病室1週間のはずだったが、まったくその気配がないまま3週目に入る。  この週のメモを見ると: ・ごはんが普通になって来る。お箸で食べられるもの。 ・リハビリも進んでいく。一日だけ大きなリハビリルームでの運動があった。 ・車椅子で検査に連れて行ってもらうついでにコンビニに寄ってもらう。おやつをいろいろ買う。 ・車椅子でトイレまで連れて行ってもらう(入院後初トイレ)。 ・歩行器で一人でトイレに行けるようになる。 ・歩行器なし

          心臓日記第1部 その6──通常病室パート2

          心臓日記第1部 その5──通常病室パート1

           1週間のICU幽閉の後、一般の部屋に移動した。1週間ぶりに眼鏡をかけた。  ICUは左右の部屋の雰囲気しか分からなかったのだが、ベッドのまま通常病室に運ばれながらやっと全体像が見えた。案外たくさんのベッドがあった。そしてそこに添えられている装置も各々それぞれ違っていて、自分のが一番シンプルだった。そしてほとんどの人が微動だにしていない。やはりこういう場所なんだなと思った。  着いた一般部屋はお見舞いで見慣れたあれ。四人部屋。  ごはんは1日目からしっかりと食べられる(ただ

          心臓日記第1部 その5──通常病室パート1

          心臓日記第1部 その4──ICUパート3:インペラ、食事、リハビリ

           心臓にはステントだけではなくてインペラというものが入っている。これは比較的最近できた治療器具で、簡単に言えば小型心臓ポンプ。これで急性心筋梗塞、心原性ショックの生存率がかなり上がったそうだ(ネット調べ)。数年前だったら助かってなかったのかもしれない。  そのインペラを抜く日が来た。ちょっと簡易的な手術になります、とは聞いていたけど、ICUを手術室に改造してほんとに「簡易手術室」になった。すごいなこんなになるんだ、と感心していると、さっそく手術が始まった。  最初は局部麻酔の

          心臓日記第1部 その4──ICUパート3:インペラ、食事、リハビリ

          心臓日記第1部 その3──ICUパート2:3つの夜

           夜。薄暗い中、何日も眠れない。それだけではなく、なにかこれまでに感じたことのない異常な感覚がある。「これをこうしてこうならないと眠れない」みたいなものが浮かぶ。それがなんだかは分からないのだが、そうかこれをこうしてこうできないと眠れないのか、と思う。具体的なものなど何もない。  次に「眠る方法」が分からなくなる。方法も何もないのだが「眠るにはどうすればいいのだ?」と考え始める。  眠っていない時、何かを考えている。ふつう眠ったらそれは消えて、起きた時に「眠っていた」と気付く

          心臓日記第1部 その3──ICUパート2:3つの夜

          心臓日記第1部 その2──ICUパート1

           ICUに入ってベッドに寝かされる。時計を持ってきてもらう。真夜中だった。電話の履歴から見ると、救急車到着から6時間強が経っていた。  すでに消灯されているので周りは薄暗い。カーテンで仕切られた左右にもベッドがあって人がいるのが分かる。一部屋は非常に広い。一週間後に通常病室に移ってそれがよく分かった。  ぼんやりと暗い中、しかし眠れるわけもなく、ただぽわぽわとしている。尿道カテーテルの違和感がすさまじくおしっこをしたい感覚が我慢できず、いったん抜いてもらう。しかしその後やはり

          心臓日記第1部 その2──ICUパート1

          心臓日記第1部 その1──発症、救急車、緊急手術

           2024年の正月休みが終わり、またすぐに連休に入った。ある日の夕方に横になりながらスマホを見ていると、突然胸が苦しくなる。強烈な痛み。まったく治らない。冷や汗が出てくる。  こういう「苦しくて冷や汗」は初めてではなく、これまでは胃がおかしくなっていてトイレに行って出すもの出したら治まっていた。今回もそれかと思ったのだがトイレに入っても何も出ない。苦しさ、痛みはますます強くなっていく。体が痺れてくる。  生まれて初めて自分で自分の救急車を呼ぼうと思う。が、日和ってその前に#7

          心臓日記第1部 その1──発症、救急車、緊急手術

          心臓日記第2部 その3──ICU、通常病棟、退院

           夜が明ける。前回のICUと同様、スマホのインカメラを使って頭の後ろにある計器の数字を見る。血圧が上は80台なのに下が30台だった。低すぎる。しかし特に自覚はない。熱も37度強が続く。平熱が低いので普段かぜをひいてこの体温だったらもうしんどくて仕方がないのだが、この時はまるでどうでもないのが不思議。意識ははっきりとしている。  昼過ぎにバルーンを抜きに先生方がやって来る。たしか4名。前回インペラを抜く時は大掛かりだったのだが、今回は局部麻酔だけで抜けた。あっという間だった。痛

          心臓日記第2部 その3──ICU、通常病棟、退院

          心臓日記第2部 その2──手術終了、ICU

           この辺りの記憶があいまいなのだが、たぶん自分の異変に気付いたのが先だ。まず耳が詰まり始める。そして顔がビリビリしてくる。なんだか腫れあがっている、という感覚になる。歯医者さんで麻酔をすると唇などがビリビリして噛んでも痛くなくなるが、あれが顔全体である。そう思っていると先生が「鼠径部からのアプローチに変えますね」と言う。ここではその理由は聞いていなかったと思う。すると今度は寒くなってくる。寒いというレベルではなく、体全体が凍り出して物理的に震え出すくらいの感覚。歯がガチガチと

          心臓日記第2部 その2──手術終了、ICU

          心臓日記第2部 その1──説明、準備、手術開始

           一回目の手術から約四カ月を開けての二回目の手術の日が近づいてきたので、入院説明を受けに病院に行く。すぐ終わるかと思っていたら、先に全体説明とか薬剤師さんのチェックとかもあって意外と時間がかかった。  入院説明窓口で詳しく会話。一度入っているのでだいたいは分かっているけれど、計画的にやろうとすると書類がとんでもなく多いことに驚く。前回の緊急手術は、これぜんぶすっ飛ばしてやったわけだ。すごいな。  一回目の入院中、検査に行くときに院内レストランの前を通るたびに食品サンプルを指を

          心臓日記第2部 その1──説明、準備、手術開始

          心臓日記 まえがき

           2024年の年明け、急性心筋梗塞+心原性ショックを起こし、救急車で病院に運び込まれてノンストップで緊急手術、ICUに入れられてそのまま四週間弱入院。そして二回目の手術入院をこのまえ終えてきた。  一回目のことをまとめて書いておきたいと思いつつどこからどう書いていいのか、どこまで書けるか、書けない部分をどう割愛するか、などと考えていると結局何も書けないまま二回目が終わったので、記憶が新しいうちに二回目のことから書いていこうと思う。つまり『スター・ウォーズ』方式である(エピソー

          心臓日記 まえがき

          2023年 ベスト音楽

           去年とはまるで違う2023年音楽になりました。  まずライブ。数は少ないとは言え今年前半もいくつか観ましたが、やはり11月から12月にかけてのベテランブリティッシュ祭が記憶に新しいです。 11/1: Jesus Jones 11/18:Manic Street Preachers 11/18:Suede 11/28:Morrissey 12/13:Napalm Death  こんなの、ぜんぶ良いに決まってるじゃないですか。濃淡こそあれ、すべて30年以上聴いている人たちです。

          2023年 ベスト音楽

          48年を埋める43分:フレッド・マイロウ『ブルーエンゼル』オリジナル・サウンドトラック

           1975年は、まだ小学生だった自分にとって特別な年だったようです。  『タワーリング・インフェルノ』が公開されて、京都の松竹座に観に行きました。いまだに観ている映画です。フレッド・アステアがタクシーでタワーに到着するところから観初めて、終わって、またそこまで観て帰りました。今ならあり得ない観方ですね。それにしてもなぜ48年前のそんなことを覚えているのでしょうか。  『ジョーズ』が公開されて、同じ松竹座に観に行きました。いまだに観ている映画です。その時の松竹座の光景を覚えてい

          48年を埋める43分:フレッド・マイロウ『ブルーエンゼル』オリジナル・サウンドトラック