48年を埋める43分:フレッド・マイロウ『ブルーエンゼル』オリジナル・サウンドトラック
1975年は、まだ小学生だった自分にとって特別な年だったようです。
『タワーリング・インフェルノ』が公開されて、京都の松竹座に観に行きました。いまだに観ている映画です。フレッド・アステアがタクシーでタワーに到着するところから観初めて、終わって、またそこまで観て帰りました。今ならあり得ない観方ですね。それにしてもなぜ48年前のそんなことを覚えているのでしょうか。
『ジョーズ』が公開されて、同じ松竹座に観に行きました。いまだに観ている映画です。その時の松竹座の光景を覚えています。なんかサメの歯とか売ってました。なぜか真珠もありました。どちらもフェイクだったろうと今なら思います。それにしてもなぜ48年前のそんなことを覚えているのでしょうか。
ビートルズ『イエロー・サブマリン』のアニメをテレビで観て、サントラ盤を買いました。記憶にある限り、これが自分にとっての「初洋楽レコード」だったと思います。A面がビートルズの曲、B面がジョージ・マーティン・オーケストラの演奏のみ。なので当然A面ばかり聴いていました。古いステレオセットにレコードを乗せて、針を乗せていたその光景を思い出せます。
そして1975年公開の映画、『ブルーエンゼル』。映画自体は観ていません。なのにパンフレットを買って(松竹座の横にいろんな映画のパンフだけを売っている店があった)、そして映画を観ていないのにサントラ7インチシングルを買いました。作曲はフレッド・マイロウ。ドン・コスカレリの『ファンタズム』(大好き)や『ボーイズ・ボーイズ』、そして『スケアクロウ』『ソイレント・グリーン』といった70年代名画で有名です。
このシングルの、まずA面『Blues Anthem』のボーカルはジム・コナー。いまだに誰だか分かりません。そしてB面『The World is Golden Too』は、モンキーズのマイク・ネスミスが歌っています。モンキーズファンの間では、この日本盤7インチシングルがそこそこプレミアがついているみたいです。そして作詞が、クレジットによるとピーター・アイヴァース。「あの」ピーター・アイヴァースかどうかもまったく分かりません。
*追記:wikipediaによると、そのピーター・アイヴァーズでした。
この2曲がどちらもめちゃくちゃ好きで、買ってから48年経った今もMP3に針落とししてずっと聴いています。先述の『イエロー・サブマリン』収録曲と並んで「もっとも長い間、聴き続けている曲」だと思います。
でもそのアルバムは、ずっと持っていませんでした。30年以上前、仕事の途中に寄った中古レコード屋で見つけたのですが、まだ新入社員の自分にはそれを買って会社に持って帰ることはできませんでした。それをずっと後悔していました(まだ!)。
そして今に至ります。長い。
そのサントラアルバムを、ネットで買うことができました。ジャケットに映画の原題『Threshold: The Blue Angels Experience』の文字はどこにもなく、完全に日本オリジナルのレコードであることが分かります。ライナーは懐かしい、ジャケ裏面印刷。
そして聴きました。
飛行機の音を現わしているような「キーン」という音が多く使われています。その合間を埋めるように音楽が入っています。『The World is Golden Too』の主題が何度も再現されてきます。現代音楽的な響きも多いです。ジム・コナーによる歌ものがもう一曲入っていましたが、これは普通。シングル曲ももちろん入っていて、前の曲から繋がっている感じで新鮮ですがミックスなどは完全に一緒。そりゃそうですね。
というかもうそんなことどうでもよく、このアルバム1枚を聴けることが自分にとってはほぼ奇跡のような感じです。この感覚は言葉にすることができません。こんなのCD化なんか絶対にされないし、ましてやブルーレイ化もあり得ない。中古で探すしかなく、かつレアもの。それが決して高くはない金額で入手できた。自分が音楽に興味があるということにも気付いていなかった時代からの48年がついに埋められて、もはや幻想的な経験ですらあります。
なんだかついに聴いてしまった感が強すぎて、少し怖いくらいです。これでもう、絶対に入手したいレコードはなくなってしまいました。思いつきません。あるとすればラッシュの12インチシングルとかですが、それは「そこに入っている曲が聴きたい」という意味ではないですし。
最近知った事実。ナレーションの脚本が『デューン』の原作者、フランク・ハーバート。そして『フライング・ハイ』や『裸の銃を持つ男』で有名なレスリー・ニールセンがまだそのコメディ路線に行く前にナレーターをしています。なんでしょうその豪華スタッフ。
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