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社労士とAIについて 3

鹿児島で社労士をしています原田です。

以前にAIはいずれ社労士を超えるかもしれない話をしました。

 記事を読み返しながら、手続き業務でAIが社労士を超えたあとのことを考えてみると、想定した夢のような世界では無い姿が見えてきました。
 更にAIと社労士で色々と考えることも出てきたので、前編・後編で終わらせたのは無しにしてもう少し続きます。
AIは本当に社労士を超えられるのか。

社労士AIの誕生した世界

 現存するクラウドシステムで、個人情報や企業情報を入力することで、電子申請ができるシステムは多数あります。システムを導入しなくても、e-Govでもやろうと思えば可能です。それらは申請する際に、人間が書類を見ながら判断し、必要な情報を必要な場所に入力しているので、AIは関係ありません。

 今回のお話は、社労士がいなくても、手続きが自動で簡単にできるAIシステムが完成したと言う前提で考えます。それを使うのは、もちろん事業主や企業の総務担当者です。

 AIが自動的に行うということは、必要書類をスキャナー等で読み込ませれば、自動的に判断して申請してくれるということになります。前回の話で補完したように、もし読み込んだ情報が、判断するのに不十分な場合は、不十分であることをAIが判断して、「○○を教えてください」とAIから聞いてくれるという便利なシステムです。

完全なシステムなど作れない

 さて、ここで問題です。
 このシステムは、はるか未来に渡って、あらゆる全ての法改正に対応し、ミスや間違いが起こることは完全に皆無で、100.00%完璧に運用できるでしょうか?
これが「絶対できる」と断言できるまともなエンジニアはいないでしょう。
・システム上のバグ
・立法上で想定していなかった法の隙間
・外部からのハッキング等の攻撃
・スキャニングのミス
 これらを全て0にするのは、どれも限りなく不可能に近いからです。

 私がクラウドシステム提供業者であれば、そんなリスクがあるサービスは提供できません。完全自動判断で自動的に行われるということは、判断したのはシステムであり、システムを提供する会社は、起こった結果に全ての責任を取らなければなりません。

 AIクラウドシステムができたら、販売するときに
「社会保険手続きが、何も知らない私が何も入力しないで自動的にできた」
なんてキャッチフレーズで売りたいですよね。これで喰いついた会社で、間違った手続きが起ころうものなら、「嘘つきシステム」「金返せ」と非難するでしょう。

 リスクを回避するためには、申請前に「こういう条件で○○を申請します」とデータを見せて、人間によって最終判断の確認を行うべきです。ネットショッピングの最終確認のようなものです。
最後に判断した人の責任で申請をさせることが重要です。

 しっかりと確認してもらうことで、申請結果が想定と違うのは、システムの責任では無いことを明らかにしておくべきです。

 しかし最終確認をさせると言うことは、それで間違いないかかどうかの判断ができる人が、そこに必要になるということになります。
それだとなんだか今と状況が変わらないような話になってきました。

AIと社労士の関係はどうなる

 社労士業の主となる収益は、多くが労働集約型産業(人力に依存する産業)であり、手続き業務の依頼が増加するほどに、従業員の人数が必要になります。

 そこにAIがある程度まで自動判定するようになれば、社労士事務所としては、かなり省力化に役立ちます。履歴書も読み込んである程度自動入力してくれると、私の事務所の職員がうれしくてワクワクしそうです(言い過ぎ)。できれば出勤簿を読み込んで、賃金締切日以外で退職したパートの離職票を作成して欲しいですが、正しく読み取れているかを確認する方が大変かもしれません。

 それでも人名の漢字の読み取り間違いは、必ず起こるでしょう。人が見ても判別できないことすらよくありますから。異体字だと書き間違いなのかどうかの判別も難しい。

 社労士事務所への導入であれば、最もコスト削減効果があるので、有償システムとしてAIを組み込む価値があります。

 こうしたことを総合的に考えると、
AIの手続きシステムを利用する最も適した利用者は、社労士事務所
になる可能性が高いです。
当然今まで自分たちで申請していた事業主や、総務担当者にも有効でしょうが、大規模事業者でない限りコスト削減効果はさほど見込めません。

 画像生成AIで私傷病報告の絵を、めっちゃリアルで書いたら監督署が感動するかもしれませんね。ケガによってはグロテスクで嫌われるかもしれませんが、そういう時は、ほのぼのするように「AIいらすとや」で作りましょうか。(けがの程度が軽く見えるかもしれません)

 AIと社労士の未来は、思ったよりも明るく見えてきました。システム屋さん早く作って私の事務所だけでいいので安く提供して下さい。

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