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敗者だから伝えたい こうして会社は倒産しました 13

~スーパーが倒産していく時代~

 前回までのあらすじ。再建中で資金が無いのに架空残業されました。

 時代の荒波の中で、経営再建に取り組んでいますが、荒波にもまれているのは自分だけでなく、得意先も同様です。私が専務時代に1件、社長就任して倒産が2件、民事再生が1件ありました。

県内3店舗を有するホームセンター併設店舗

 こちらは私が専務時代の倒産で、卸売業であるB社の得意先。
倒産の報告を受けて、社長と共に会社に行きました。ホームセンターが本業の会社が始めたスーパーで、2店舗の展開をしていましたが、近隣の競合の増加で店舗が赤字になり倒産。

 社長同士が懇意にしていた関係もあり、入金サイトが2カ月あり、当月分を含めて約1000万円の貸し倒れになります。当時は私が自社の債務超過を知らなかったのですが、知らなくてもダメージが大きいのは誰の目にも明らかです。

 お飾り専務として当事者意識の薄い私だったので、実はほとんどこちらの倒産についてタッチしていません。振り返ればその程度の意識で役員していること自体が問題だと思います。

地域で頑張っていたお店2社

 私が社長時代も、1店舗で営業しているスーパーが2社倒産しています。B社の得意先です。

1社は倒産前に支払が遅延しているため、社長と交渉。既に一部の問屋が取引を辞めているらしく、店内の棚に空きがあります。
 この時の頭の中は、貸し倒れが嫌なので、どうやって回収するかが中心です。普通の社長なら同じだと思います。

・月次の売上上限の設定
・当面の回収のために売掛金での店内物品の購入
を行います。

 冷静に考えれば、これをやればどこかの支援を受けない限り、倒産は必須でしょう。当社が牛乳から豆腐まで運んでいるので、スーパーで要冷蔵の品ぞろえが悪くなるのは、経営維持自体が不可能になります。

 確か話をしてから数カ月以内に倒産したはずです。

 別の店舗も支払が悪化していたので、交渉しましたが、その月の支払日に社長が消えました。店内は納品した業者が商品の回収作業を行っていて大騒ぎになっている状態です。

 従業員が「商品を回収されると困ります」と言われていましたが、誰一人聞く耳などありません。また別の従業員が「私も2カ月給料をもらってないんです」と言われてましたので、当時無慈悲な私は「社長がいなくなったのですから、今日働いた分の給料も出ませんよ」と答えてしまいました。

 今の知識で言えば、未払賃金立替払制度で、監督署が賃金の支払いをすることがありますが、社長が夜逃げすれば、その手続きをしてくれる人もおらず、そうした知識を教える人もいないので、どうすることもできないかもしれません。

中堅スーパーの民事再生

 これはA社の得意先で、元々B社の取引もありましたが、物流センターへの一本化でB社では取引が無くなった相手先です。A社の取引として貸倒金額は大きくは無かったのですが、企業規模が上記企業の数十倍で、しかも民事再生案件なので、債権者説明会も非常にたくさん集まっています。

 民事再生を裁判所に申立すると、「弁済禁止の保全処分決定」が行われます。これは、簡単に言うと、買掛金や借入金の返済や支払ができなくなるのです。つまり、店舗での商品回収とかはできないですし、差し押さえもできません。

 債権者説明会も大幅にもめていましたが、債権額が大きくなかったことと、もめているやりとりが茶番に見えてきたので、途中で退席して帰りました。最後まで確認したところで、入金額が増えるわけでもなく、早期に入金されるわけでもなく、大規模な債権者が同意した結果にしかなりません。

当時の感想

 感想と言うと不謹慎ですが、やはり夜逃げは最悪です。会社内も荒らされるし、従業員も何が何だか分からない状態なのに、文句は言われてどうしようもなくなります。しかも始末ができません。

 債務超過で再建中である意識はありましたが、実はこうした得意先の倒産を見ても、自分がそういう立場になるとは、全く思っていなかったのが事実です。

債権回収に必死だったという面があり、明日は我が身と考えて同情している場合でも無いし、当時は再建や再生を手助けするような知識も能力も無いのですから。

倒産社長が伝えたい経営の教訓


会社の危機は、それを理解できる人に相談して

 これは教訓ではなく、お願いかもしれません。
その筆頭は破産案件に明るい弁護士になるでしょう。基本的に仕入先や金融機関は取引先であって、相談相手ではありません。その多くは取引して利益を受けるから、親密にしている部分が大きいのです。稀に例外的な方はいますが、例外的な方で無かった場合は最悪な状態になります。

 私も自分が当事者になるまでは、回収しか考えてませんでしたし、相手に配慮できるだけの余裕などありません。また、取引先からの回収が困難に陥ることを知りながら、それぞれに寛容になっていたら成り立ちません。

 私も現在はこうした経験上で相談を受ける場合はよくあります。先日もあったのですが、既に破産申立後の相談だったので、助言できることもほんの少ししかありませんでした。

 ネット情報も嘘が多いです。有償でノウハウを教えるコンサルがいますが、万能に解決できる手段は絶対に存在しません。多くは最終的に弁護士案件になるので、あんまり意味がありません。

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シリーズ1回目はこちらからです。

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