高校生の弟に「雇用契約書ってどういうもの?」を説明する
【本記事は、2月23日に配信したポッドキャストの文字起こしです。】
雇用契約を結ぶ際に明らかにしなければならないこと
金山:社労士のかなやまです。
弟:どうも。弟です。
金山:よろしくお願いします。
弟:お願いします。
金山:今日は、雇用契約を結ぶときに、明示、明らかに示す、しなければならないことについて話したいなと思います。
弟:なるほど。お願いします。
金山:バイトとかって、したことある?
弟:いや、まだ学校でしちゃダメってなってるから。
金山:そっか。じゃあ、これからバイトをする可能性があるということで、そのときに備えて、ということで、話をしたいなと思います。
弟:ありがたいです。
労働契約について
金山:まず、労働契約について。「労働しますよ」「バイト始めますよ」ってなる場合には、使用者、これは使用する側、会社、と、労働者の間で労働契約をまず結びます。契約というのは、民法っていう法律で定められているんだけど、口頭でも両者の合意があれば成立します。これはOKですか?
弟:OKです。
金山:OK。それで成立するんだけど。ただ口頭で言うだけだと、使用者よりも労働者のほうが、会社よりも雇われる側のほうが、立場が弱かったりするので、トラブルが生じたときに「あのとき言ったよね?」みたいな問題になりかねないということがあります。
労働側は、今言ったような形で会社側と雇われる側が立場が対等じゃない、力関係があるので、労働基準法という法律が別途あって、それによって立場が弱い労働者を守るための決まりがいろいろ定められています。
弟:なるほど。
金山:分かりますか?
弟:分かります。
金山:なかでも、労働基準法の15条に労働条件を明示するっていう項目があるんですけど、そこで定められている項目については、まず契約を結ぶ際に明示しなきゃいけない。明示、示さなきゃいけないよ、と。その示す方法も書面の交付、つまり、紙を渡して示さないといけない項目がいくつかあります。
例えば、バイトをするときって、雇用契約書を交わすと思うんだけど。交わさなきゃいけないというか、口頭でもいいんだけど、さっき言ったこともあって、普通は結ぶ。そこで、「バイト始めます」って書類をもらうときに何が書いてある必要があるかというのは、覚えておくことに意味があると思うので、今話をしています。
弟:覚えなきゃ、だめだと。
金山:うん。覚えておいたほうがいいね。
弟:そうだね。
金山:こういうことが書いてあったほうがいいと。
何が書いてある必要があるか〜絶対的明示事項
金山:じゃあ、何が書いてある必要があるかということなんだけど。まず、そもそも明示事項というのは、絶対的明示事項と相対的明示事項というのがあるんですよ。絶対的明示事項って何かと言うと、絶対に定めなきゃいけないもの。定めた上で、労働者に示さなきゃいけないもの。相対的明示事項というのは逆に、定めても定めなくてもいいんだけど、定めたのであれば、明示しなきゃいけないよっていうもの。
弟:なるほどね。
金山:この2つの違いがあります。あ、大丈夫かな? ここから説明するので。
弟:(笑)
金山:絶対的明示事項のほうが重要なので先に説明をします。
順番に言うと、【①労働契約の期間】。例えば、1年間だけとか6カ月間だけ。逆に期間の定めなし、ずっとうちで働いてね、とか。1つ目が期間ね。
2つ目が、【②就業の場所】。どこで働くか。例えば、コーヒーショップAっていうところの、道玄坂の店舗であればA道玄坂店とかが就業の場所。あと、【②従事する業務の内容】。だからカフェで働く場合、カフェのホール、とかキッチン、とか。
弟:なるほどね。そういうところ。
金山:そういうところ。例えば、別の会社でエンジニアとかプログラミングをするのであれば、そういう業務ですみたいなこともちゃんと書いておく。それが二つ目、場所と業務の内容。
三つ目が、【③働く時間に関すること】なんだけど、中身は、始業・就業の時刻、何時から何時まで働くか。とか、最初に決めた労働時間を超えて残業をさせる場合は、残業があるかないか。あと休憩時間・休日・休暇など。そういう働く時間とかに関することも、絶対決めた上で示さなきゃいけない事項です。これが三つ目。
四つ目が、【④賃金に関すること】。賃金の決定方法、計算の方法、支払いの方法。締切日と支払日。例えば、1月1日から1月31日分については、2月15日に支払いますとか。そういうようなことを決めておいて書く。
五つ目が、【⑤退職に関すること】。「辞めたい場合には、2週間前に申し出てくださいね」とか。逆に、「こういうことをしたら会社のほうで解雇しますよ」とか。そういうようなことを決めて書いておく、という感じです。
弟:なるほど。
金山:以上が、絶対決めた上で絶対に明示しなければいけない事項です。なので、これらが雇用契約書を渡されたときに見なければいけないこと。
弟:なるほど。書いてあるか書いてないかは、ちゃんと確認する。
金山:そうだね。ちなみになんだけど、雇用契約自体は口頭でも成立するじゃないですか。なんだけど、書面で明示しなきゃいけないっていうルールがあるから、労働条件を通知するのと合わせて雇用契約書も結ぶことが多いよっていう。
弟:まとめてやっちゃう。
金山:まとめてやっちゃう。だから、大体、雇用契約書を交わすと思うので、そこに今言ったようなことが書いてあるという感じですね。
金山:なんとなく分かった?
弟:なんとなく。
金山:ザックリまとめると、①期間。あと②場所と内容。③働く時間に関すること。休日とかね。④賃金に関すること。給料。時給何円ですよ、とか。最後が、⑤退職に関すること。辞めるときのルール。ルールっていうかね。そんな感じです。これが絶対書いていなければならないこと。
弟:なるほど。
金山:ちなみに、絶対的明示事項、決めなければいけないっていったのは、今言ったのとプラス、【⑥昇給に関すること】です。昇給っていうのは、給料が上がる。こういうタイミングで昇給します、とか。逆にそもそも昇給は一切ありません、とか。そういうものは、決めておかなければならないんですよ。
弟:バイトリーダーみたいな感じですかね?
金山:バイトリーダーみたいな感じも含まれるね、昇給ってなると。このタイミングで給料上がります、とか。
何が書いてある必要があるか〜相対的明示事項
あとは、定めても定めなくてもいいけど、定めたのであれば示さなければいけない事項っていうのがあります。例えば、【⑦退職金に関すること】とか【⑧ボーナスに関すること】とか。
例えば、バイトするときの制服のお金だけ負担してください、とか。そういうのがある場合には、そういうのも決めておかなきゃいけないし、決めた上で示さなきゃいけない。
その他には、【⑨安全衛生】。職場の衛生状態に関するものとか。業務に必要なスキルがある場合に、それを訓練する【⑩教育】。講義とか受けなきゃいけない場合は、そういうものについてとか。あと、【⑪災害補償】職場でケガをした際のルールとか。表彰とか。逆に、制裁、罰則とかがあったら、そういうものだとか。【⑫表彰制裁】 あと【⑬休職】。体調を崩したりしたとき会社を少し休みます、だとか。そういうことに関するルールがあるのであれば、ちゃんと労働者に示してくださいね、という形になっています。
これが雇用契約の、労働条件の明示っていう基本ルールです。今、言ったのをなんとなく覚えておけば大丈夫です。
弟:そうですね。一応、安心。
アルバイト、パートはさらに4項目
金山:一応、安心です。今のが、労働基準法の15条っていうところで定められているものなんだけど、一つ注意しなければいけないのが、パートタイマーとかって聞いたことある? アルバイトとかパートタイムとか。要するに、正社員は朝から晩まで、1日8時間で週5日とか、フルタイムで働いている人に対して、パートタイム。短い時間だけ、例えば週3日、5時間。
弟:パートのおばちゃん、みたいな。
金山:パートのおばちゃん、とか学生とか。短い時間で働く人たちのことをパートタイム労働者と言うんだけど、そういう人については、今言ったことに加えて書面で通知しなければいけない事項が4つほど多いです。4項目プラスされてる。なんでかって言うと、パートタイマーのほうが正社員よりも立場がもっと弱い可能性が高いから。
それが何かと言うと、まず昇給。さっきのバイトリーダーに昇格するみたいな話。一般的な労働者については書面で示さなくてもいいんだけど、パートタイマーについては、昇給があるかないかっていうところだけは、書かないといけない。
4つあるんだけど、昇給の有無。退職金の有無。賞与・ボーナスの有無。この3つについては、有るか無いかをしっかり書面で示す。それから4つ目が相談窓口。何か労働に問題、働く上で問題があったときには、ここに相談してくださいねっていうところ。例えば、担当者と連絡先、メールアドレスか電話番号とかを書面で示す。
アルバイトで働く場合は、雇用契約書なり、労働条件通知書なり、紙を渡されると思うので、そこに今言った4つも合わせて、書いてあるかどうかチェックします。
弟:はい。
金山:ちょっと駆け足でしゃべったんですけど、あとでもう一回、聞き直して復習しておいてください(笑)
弟:分かりました(笑)
金山:大丈夫そうですか?
弟:はい。でも知らないと結構怖いですよね。
金山:怖いですね。
弟:ちゃんと勉強しておきます。
金山:ありがとうございました。
弟:ありがとうございました。
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