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水月抄

今 うつし身に 口火をつけて 煤ぶりかけて 止まない焰になる 人にせめられて告げた 幻想のまんなかに 産声をあげてやまぬ 太陽の不滅の燈 不断の夜を油とし ひかりあふるる 白いシーツの寝顔が 暗室にかうべの痛みに 寝乱れて 髪をすかしている 窓硝子を折れ屈りし影 さまざまの珠玉の 黄と藍は涙ぐみて 白日の虚空に立ちのぼる 曇り玉 静けさに酔ふ曙光を 孕みたり 極楽鳥の翼はいろ変わる ゆふべむらさきに鳴りわたる ささやき歌ひ しとやかに 淡いかげさす白金の薄明かり 涙

    • からしいろ

      鉄のベッド あたしのかわりに生きている あなたのようになりたいあたし もっと想像が及ぶかぎりに感じとれるかぎりの女というものを心に浮かべながら夢うつつで泣いていた 胸元を広げてこんなにやりきれないと 払いのけられない この鳥が売られていくときに、うちの肩に止まったんよ 海へ放してやると世の末までたましいが帰ってゆく気がして 「帰れ、帰れ、故郷へと」と声をあげていく 棄てられたあたしはゆくところがない 青いおだやかな光の中で帰るだけで十分だった。 海をわたる女がそのことばに

      • 春に

        この世界の優しさを 集めて 君に捧げたい 春が雪を溶かすように

        • 徒然

          ちょっとホラーなのが 続きましたね・・ 桜舞い散る艶っぽいのより、ちょっと硬質な文章遊びでした・・ 春の宵、隣は何をする人ぞ 昔の幻談を読むと運びが面白く 芥川龍之介が訳したゴーチェなど 翻訳者の五感の鋭さが心地良いのです・・

          白昏

          「かしこみて見よ、主の来たらんとす」 (エツケ・ミナキテル、イミネト・アルビテル) 「いと高きもの」 (イレ・スプレムス) 「来たらんとす、来たらんとす、悪の終わりの時が」 (イミネト、イミネト、ウト・マラ・テルミネト) オルガンと声楽がへだてられない暗い部屋で聖歌隊の楽譜に鳴りつづける 晩餐がかたく閉じた夜の静けさを犯す闖入者をよびいれ言葉も肉體も越えてしまった欲望がおりてくる夜の官能に軋むように、ちがう岸辺から屍の場所を行き来する 「教えは役に立たなかったが私にはあなた

          夜咄

          この傍にいるのだ、あれは 人の眼に見えないようにした家の 襖の奥に 大きな蝶が夜飛んでいる 黒い蝶がぎらぎらした眼の下に 飛んでいった 生首を一杯貰おうか 覗き込むようにして響いてくる声で 遠ひ睡りの向こうで何かを飲み乾す流れが 擦り切れて空いた穴をうめていく 吹き消すように ひとつきりともった電灯が記憶の暗さに 踏み入れていく 「帰ってきたんか」 あどけなさが埃に吹き溜まるがらんとした部屋に放り込まれたように灯りにとどまってゐる 朝なき家で着物の袖を握りしめた少女は

          春のカフェに

          都会のカフェに行きたくなる 白金台や神楽坂のパティシエたちの作品をゆっくりと楽しめる場所 陽射しが明るく街を照らす風景を窓から 見ながら いつもの街から抜け出て 夢を見たいと春からはじまる時間を うめていく 優しい陽射しを めざして 文字を書いていく 楽しい時間を閉じ込めた 本を作れたら 君が1ページ目を開く為に

          春のカフェに

          優しい物語

          指先をのばして 一つ二つと見つめながら 君の名前を 書くように 言葉を描いていたい 夜は見たくないものを隠して 見たいものだけを見せてくれる 想う事は 君のために 余計な感情がどこかで 僕を探すほど 消え失せて 僕の体は軽くも重くもなりそうだ きみは笑ってくれるかな 優しい物語を 子供のように 楽しみにして 新しい世界を きっと作れると 君と話せたら 本当はもっと話したい事があるのに 今は夜の静けさに しまっている いつか絵本を開くように 優しい魔法で 包むか

          優しい物語

          一夜

          深い夜に 君をさがして 君はいつも 笑っていて 遠くを見つめる僕を 子猫のように 抱きしめて 光の朝に連れていって くれる 朝まで想う柔らかな感情が ゆるやかに 君がいることで ながれていく 君がどこにいても 僕がどこにいても 夜を一緒に ぬけて 優しい朝が待っているから

          思わぬ出会い

          休日に何気に美観地区を歩いていた、昔からのお店に新しいお菓子屋さんや猫ショップなどよく知っていた景観を変えていく 日本一金賞コロッケやベーコン串や見慣れぬフィナンシェで受賞したお店「はれもけも」さんなど老舗の天丼屋さんや洋食屋さんから離れて歩きながらつまんでいた。 時は過ぎて変わらないのは大原美術館と喫茶エル・グレコさんや大原邸の趣きで何かの用事に帰って深呼吸して帰る。 音楽図書室には大原総一郎氏が聴いていた蓄音機などがいまだに並び、リクエストでその音色を聞かせてくれる。 カ

          思わぬ出会い

          夢の中で

          ただ夢の中で 君に会いたい 雪より君の手は白く見えて 温かくなるまで 僕を握りしめて 朝溶ける雫の光に 昨日のぬくもりが流れていく 灯りをつけて 君を見たいから もう一度握り返して 夜の深さを教えてくれて 朝の眩しさに 手を翳して ずっと見ていたかった 幻を残して 優しく撫でた掌を 重ね合わせて

          夢の中で

          聖夜

          ホキ美術館を前に勧めてくれた方がいたのを画面の前で思い出した・・感動を理解出来た時間を過ごせた時にもっと深く理解出来たような気がした 心の聖夜に一つしまえて良かった 夜が知らずに更けてゆくように、少しずつ僕の目も深まっていく 大切な時間を与えてくれる知人は 私なりに口に出さなくても尊敬しながら 大事に胸にしまっている いつか東京で見る事があるかな・・ 人は誰かの足跡と面影を追っていく

          写実の静寂

          よく雑誌で見かける写実主義絵画のリアリズム 紙に写された写実は平坦な薄い印象に見えたが、実際の写実絵画作品のキャンバスの画面の色彩と仕上げの工程が見えるともっとリアルな処理がわかって見応えがあり久しぶりに霊感を得たように思えた ホキ美術館作品を推奨していた言葉を実際に油絵を目の前に理解した 仕上げの静寂を大画面で額に収めたバランスが完全に計算されていて、どこか飾る時に 日本の最も上質な世界に置かれるのが見えてくる もっと浅薄な評価をしていたが、画面の静寂に心が奪われた時間を忘

          写実の静寂

          選択

          あらゆる世界があり、自分が価値を見出す事に選択をなさねばならない時がある 生命が維持され、されなくとも美術品は生きる 自分を導くものを人生に見出す その出会いを失うか得るか たとえ不得手であっても、自分が自分の絵画を描いて見るとき自分の線を見出す 1万本かも百本かもしれない線に価値を見出す数本の線、確かな手応えを自分で見出した喜び 一つの始まりとして時間を無為にしなかった手応え あらゆる死を超えて見出す生の歓喜の瞬間 選択であろうか

          精神的色彩

          「絵画とは作者の魂と見る人の魂との間に架けられた一本の橋だ」 ドラクロワの断言だが 真の詩人の魂は真の詩人のみこれを知ることが出来る 生きた詩人の呼声を聞いたのはオディロン・ルドンだった 彼はルーブルのアポロンのギャラリー天井に描いた有名な装飾画について語っている 「・・これは闇に対する光の勝利であり、夜と影の悲しさに対する昼の歓びである・・まったく新しいが故に、かくも力強く、かくも強烈なこの作品は、完全にひとつの詩であり、ひとつの交響曲である・・。ヴェネツィアもパルマも、ヴ

          精神的色彩

          人の価値

          先日馴染みの骨董商に聞いてみたら 今は絵画を売ろうと思っても草間彌生や現代アートや文化勲章でもとってないと価値がつかないと買い取りをしぶるらしい 歴史に残り美術館に入る作家作品でも、だから値が上がらない 「馬鹿か」と思いながら、しかし美術を本当に学ぶなら安価で入手出来る時代なのだと確信した。 異常な時代といえる、中国人が備前焼の煎茶道具を買うからないかとあちこちの業者が中国に倣う。 自国の優秀な美術が価値がさがるのに、金権崇拝に陥る あらゆる存在の価値が病と不況により下がるら

          人の価値