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思わぬ出会い

休日に何気に美観地区を歩いていた、昔からのお店に新しいお菓子屋さんや猫ショップなどよく知っていた景観を変えていく
日本一金賞コロッケやベーコン串や見慣れぬフィナンシェで受賞したお店「はれもけも」さんなど老舗の天丼屋さんや洋食屋さんから離れて歩きながらつまんでいた。
時は過ぎて変わらないのは大原美術館と喫茶エル・グレコさんや大原邸の趣きで何かの用事に帰って深呼吸して帰る。
音楽図書室には大原総一郎氏が聴いていた蓄音機などがいまだに並び、リクエストでその音色を聞かせてくれる。
カラヤンが来日し大原氏が雑談を交わした時の写真が窓辺に蓄音機と並び旧の洋風建築の室内を飾る。
ジムノペティのSPレコードを聴いてみたいと聞いてみると蓄音機用にコレクションはなかったらしい。タイスの瞑想曲をリクエストして椅子に座り静かに、針を司書の方の指が落としていくのを眺めていた

タイスの瞑想曲はバイオリンの室内楽の印象が強いが元はオペラの声楽曲だったらしい
パチパチと摩擦しながらゆっくり重く確かめるように柔らかく響く音に歌声が重なった。
窓から見える明治建築の建物の光が溢れて、裏表の曲を聴きながら、ゆっくり大原美術館の作品を思っていた
母が、ずっと若い時から好きだったエル・グレコが心に浮かび重厚な額縁におさまる時間を思いうかべた・・

受胎告知の模写を今度また描いてみようか
昔1枚油絵模写を描いた事があったのだが、1枚書き残してみたいと

マリアの顔が流れガブリエルを見つめる眼差しの美しさと天上の雷鳴のような光を思い浮かべた・・

いつもと違いちょっとした用事で歩いただけなので、何の目的もなかった。
何かいつもと違うモノが欲しかった好奇心をコロッケやフィナンシェで満たすと
珈琲に喉の渇きを覚えた、自分でもいつからかわからないが珈琲はよく手がのびる
蓄音機でタイスの瞑想曲を聴きながら欲しいものはただ黒い液体の安らぎだった
私の足はエル・グレコの蔦のからまる店先に立ち止まり・・

一杯の珈琲を呑み干して店先を出ようとした時にドアの横にアンティーク展示コーナーがあった、昔のアンティーク飾りや古代のローマングラスや紀元始めのローマコインのネックレスなどが並べであった・・今まで見た事がないスペースだったがもう何年も前からあったらしい

その並べたアンティーク展示を見ていると、数年前に見た本が並べてあった
アンティークコインマニアックス
古代エジプトやコインに詳しい方が出版した本ではないかと
店主に尋ねると何故誰から入手したものかは、よくわからなかったらしい

しかしこれだけ離れた場所に、こんなあの方の本があるのはやはり努力なのだなと一人感心しながら、考えてしまった
人は積み重ねで何かを残していく

たとえ近くであれ、遠くであれ
その人が丹念につみあげた時間が重ねられるのだ

夢を見て、誰かが夢に出会い
誰かと夢を叶えていく・・
優しい気持ちに包まれて白壁をあとにした

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