見出し画像

なぜいま、世界が植物工場を必要としているのか

こんにちは、スプレッドnote編集部のユーリストロガノフです。
突然ですが、私がスプレッドに入って一番驚いたことは、なんだと思いますか?

…いえ、時々ベジタスをもらえることではありません(嬉しいですけどね)。
ほぼ毎日、世界中からお問い合わせが届くことです。Webサイトを通じて、昨年度一年間では約70カ国から450件ほどのお問い合わせがありました。(先輩に聞いたら、毎年それくらいですって!)
植物工場事業を始めたい、工場を見学したいなど、内容は多種多様。
恥ずかしながら、モーリシャスという国を初めて知りました。私の知識も日々”スプレッド”です!(座布団1枚いただけますか?)

というわけで、この記事ではお問い合わせ担当の私が分析した世界的な植物工場ニーズと各国の事情について紹介してみたいと思います。

アメリカ「一極集中から地産地消へ:レタス生産大国の課題解決に動く大金」

数年前、アメリカの植物工場ベンチャーが日本の某ファンドから何百億円という大金を調達したニュースが、日本でも話題になりました。
実は、近年アメリカでは植物工場への投資が非常に活発になっています。
70年代から研究を進めていた日本と比べて技術レベルは発展途上とも言われますが、
さすがアメリカというべきか、勢いは凄まじいです。なぜなのか?

アメリカといえば土地が広く、穀物生産や畜産が盛んな農業大国。
しかし、葉物野菜の栽培に向いている地域は非常に限られていて、主に西海岸に集中しています。
特にカリフォルニア州のモントレー群にあるサリナスという産地が有名です。
なんと人口43万人しかいないモントレー群はアメリカ全国で生産されるレタスの6割も担っているという、驚くべき事実があります。
(アメリカのレタス年間生産量は日本の約7倍。モントレー群だけで日本全国の4倍ものレタスを生産しているほどの規模感)

【cover写真】サリナス

サリナスの果てしないレタス畑

ところが、西海岸で採れたレタスをトラックに積んで、NYやワシントンD.C.がある東海岸まで運搬するのに2週間もかかるのです。とても広いのです。アメリカ イズ ソーグレイト。
2週間もかかると野菜の鮮度や味はどうしても落ちてしまいますし、さらに数年前から問題となっているロメインレタスの食中毒や農作業の移民への依存など、レタスを取り巻く環境には課題があります。

この従来のシステムに改革をもたらすのが植物工場だと言われています。
東海岸に植物工場を建てれば、すぐに新鮮な野菜を消費者に届けられ、地域の雇用創出にも貢献ができます。いわゆる地産地消の最たるものです。
衛生管理がされていれば食中毒のリスクも抑えられ、百利あって一害なし、といった感じでしょうか。

地産地消マーケット_2

NYのマーケット。ニューヨーカーは新鮮な野菜を渇望しています

中東「Nextオイルマネーなるか:砂漠で起こる農業革命」

中東と聞くと、読者の皆さんは何を連想しますか。
因みに、筆者が思い浮かべるのは砂漠・ラクダ・石油といった、もう、非常にステレオタイプなものばっかりです。(想像力のなさよ)

砂漠_ラクダ

砂漠をゆくキャラバン

一方で、UAEやサウジアラビア、クウェートに関しては、いわゆる「オイルマネー」のイメージもありますよね。高層ビルがみっしり並んでいる大都会で、真っ白な長い服に身を包み、豊かなライフスタイルを送っている人々。

しかし、水と食料に関しては実は多くの課題を抱えているそうです。
特に深刻なのは水資源で、たとえばサウジアラビアの場合はほとんどが地下水で今のペースで使い続ければ、なんと60年後に枯渇するとも言われています。60年なんてあっという間…
では、水や食料を全部輸入すればいいのかというと、持続可能とは言いがたいですね。

ここでUAEやサウジアラビアの政府は、最先端の農業技術に賭けることにしました。
最先端農業で、節水もできる技術って何かありましたっけ…えっと…
え?あ、それそれ!植物工場です!
ところが、現地企業で植物工場技術を持っている会社はまだ少ないので、
政府が投資をして外国から企業を誘致したり、農業の経済特区を作ったりしています。
昨年、UAEで200億円弱を投じた、年間1万トンの野菜を生産できる巨大な工場プロジェクトが発表されました。
中東のイメージに「先進農業」が加わる日はそう遠くないのかもしれません。

欧州「オーガニックにあらずんば野菜にあらず:植物工場の挑戦」

ご存じの方も多いかと思いますが、欧州の方々は「ナチュラル」や「オーガニック」を好み、環境に良くないと思われるもの(例:プラスチック包装)には、大変厳しいのです。
例えば、ドイツでは使い捨てプラスチックの使用が全面禁止されています。日本で始まったレジ袋有料化のレベルではないですね。

★我が家のマイバッグ2

母国の実家にて。ウクライナでもエコバッグは生活必須アイテムになりつつあります

植物工場に対しては、欧州といえども、国によって状況はかなりまちまちです。ここではいわゆる「欧州連合」(EU)の代表的なメンバー、ドイツとフランスについて紹介させていただきます。そういったヨーロッパの方々の中には植物工場に対して相反する想いがあるようです。
一方では資源の効率的な利用という持続可能性、農薬を使わない栽培方法や高品質といった点を評価しつつも、
土と太陽を使わず、「オーガニック」ではないこの野菜を受け入れるのに抵抗があるようです。理屈じゃないのです。

以前、スプレッドの工場を取材で訪れた某ドイツTV局のディレクターのエピソードを紹介したいと思います。
彼は、スプレッドのレタスにとても興味を持ち、レタスの見た目も褒めてくれ、さらに将来的に必要な技術であるとも認めてくれました。
ところが、取材の終わりに「では、食べてみますか」の問いに対して、「あ、私は結構です」とさらっと断られました。オーガニックに負けていない自信があるのに!少しだけ悔しかった記憶があります(笑)。

とはいえ、最近はスーパーで小型植物工場を設置するドイツのスタートアップが巨額な資金を調達したり、花の都パリで「都市型農業」という名のコンテナ型植物工場が流行ったりしていて、地産地消のトレンドとともに植物工場が少しずつ認められつつあります。
さらなる広がりを見せるか?今後の動きが見逃せません!

***

世界各国の植物工場ニーズについて、私なりに分析してみました。
いかがでしたでしょうか?
面白かったら、ぜひとも「スキ」を押してくださいね!
次の記事でまたお目にかかることを楽しみにしています。
до побачення(ではでは)!