つぼたのロゴのデザインプロセス
デザイナーのつぼたです。プロダクトからグラフィック、ロゴなど幅広くデザインをしています。あまりプロセスの話をしたりはしていませんでしたが、今回は自分のロゴをデザインしたので、そのデザインプロセスを公開しようと思います。
ロゴには文字で表現される「ロゴタイプ」と、記号で表現される「シンボルマーク」があり、この2つを合わせて「ロゴマーク」と呼ぶことが多いです。
私の屋号「SPOT DESIGN」にはロゴタイプはありましたが、シンボルマークがありませんでした。しかし今後の展開を考えるとシンボルマークがあったほうが便利だなと感じ、作ることにしました。
1、名称
まず、前提として屋号の「SPOT DESIGN」という名前についてお話しします。名前自体には、デザインポリシーは含まれていません。2017年に命名した屋号ですが、私の名前は坪田なので「坪=エリア=スポット」というダジャレのようなつけ方をしました(超尊敬している引退されたパフォーマーKKさんのネタの中からヒントをいただきました)。エリアという名称は、建築設計事務所や都市開発的な印象を与えそうなので避けました。
先に「デザインポリシーは含んでいない」と書きましたが、名前自体に意味はなくても「ダジャレのように付けたこと」には理由があります。
私がデザインをする際、モチーフとして幾何学形状を使用することが多いです。幾何学形状を使用すると有機的な形状とは異なり、硬い冷たい印象を受けることが多いです。しかし、私のデザインでは幾何学形状を用いながらできるだけ温かい印象を与えるデザインに仕上げるように努めています。その温かさを与えるために「意味」としてダジャレのような連想ゲームの「ゆるさ」を用いました。私の抜けている性格やデザインを知っている友人たちから「坪田らしいね」と言われました。
2、ロゴタイプ
デザインする上での「幾何学的だけど温かい」というのは重要なポイントです。初めてロゴタイプを作った時、「Gill Sans(ギル・サン)」というフォントを使用していました。
欧文フォントに関して軽く説明すると、欧文フォントは「セリフ、サンセリフ、スクリプト、ハンドライト、ブラックレター」の5種類に分けられます(分類の仕方は何種類かあるので、違う!と思った方はスルーしてください)。
そしてこのギル・サンというフォントは、1926年にエリック・ギルによってデザインされ「サンセリフ」の中の「ヒューマニスト・サンセリフ体(人間ぽい温かいヤツ)」という種類に分類されます。しかし、フォルムは「ジオメトリック・サンセリフ体(幾何学的なカッチリしたヤツ)」の側面を持っています。つまりギル・サンというフォントは「温かいけれどカッチリしている」というフォントなのです。(※ここまでは旧ロゴタイプの話です)
3、新シンボルマーク
シンボルマークを作るにあたり、デザイナーポリシーや核となる条件をまとめました。それはこの5つです。
1・価値観の反転(=デザインで価値観を変えたい)。
2・不明瞭なものを明確にするイメージ(可視化・言語化・具体化)。
3・様々なものをデザインするデザイナーとしてイメージの片寄りが少ない。
4・強い形状(線ではなく面)であること。
5・シンプルで覚えやすくアイコンとして使いやすい。
ここで色々考えながら手を動かしてアイデア出しをしていきます。SPOTのイニシャルである「S」、「SPOT」を組み合わせたデザイン、「スポットライト」や「エリア(坪)」をモチーフにアイデアを出していきました。いくつか良さそうなものが出たので、ここで良さそうなものいくつかピックアップして、アイデアを広げます。広げることが目的なので、描き込まず、解像度の荒い状態でアイデア出しをしていきます。下のスケッチはアイデアの一部です。
何度か繰り返しているとこれはいけそうだ、と思えるデザインがあります。それをillustratorでパスにします。実際に作ってみると「何か違う」となることが多いので、とりあえず手を動かすことも大切です。今回選んだのは照明が床を照らす様子を元にデザインしたシンボルマークです。
ただ楕円をカットして直線で繋げただけなので曲線に違和感があります。そこから何種類か曲線を作ってみて違和感のないものを選びます。
「003」が一番曲線に違和感がないですね。
シンボルマークが完成しました!
4、調整 + 新ロゴタイプ
このシンボルマークに今まで使用していた「SPOT DESIGN」というロゴタイプを合わせてみると、違和感がある。ギル・サンというフォントは新しいシンボルマークに合わせるには特徴がありすぎる印象を受けます。調整をしてみてもなかなか良くなりません。各々が好き勝手主張しているように感じます。
先に説明したようにギル・サンというフォントは「ジオメトリックに近いヒューマニスト・サンセリフ体」です。そこでギル・サンよりも、もう少し人間らしさを減らしたカッチリしたフォント「Gotham(ゴッサム)」を選びました。ゴッサムはトビアス・フレア=ジョーンズによって2000年にデザインされた比較的新しいフォントで、「ヒューマニストに近いジオメトリック・サンセリフ体」です。オバマ元大統領のポスターで一躍有名になったフォントですね。私のデザインポリシーのひとつ「あたたかい幾何学形態」にもぴったりです。
ゴッサムのロゴタイプとシンボルマークを組み合わせ、風通しを良くすると完成です。フォントに手を加えませんでしたが、場合によってはフォントに少し加工したり、オリジナルで作成したりすることもあります。
今回は自分のロゴですが、クライアントのいるロゴデザインでもプロセスとしては似ています。デザインには理論的な側面と感覚的な側面が共存しているので、美しいグラフィックを作れるバランス能力だけではなく、クライアントの話を聴き取る能力や、話を鵜呑みにするのではなく話の裏にある本質を見極める能力も必要になってくると思います。デザインとは生まれ持ったセンスを発揮して作っていく職業ではないので、アイデアを出すのはもちろん、考える時間というのも非常に重要ですね。
ご覧いただきありがとうございました。
SPOT DESIGN 坪田将知
Web:http://spotdesign.jp
Twitter:https://twitter.com/spot_tsubota
最後まで読んでいただきありがとうございます。コメントもすべて読ませていただいています……!