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拷問投票

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SF長編小説。二十年後の日本、凶悪犯への厳罰化を求める世論に流され、一部の犯罪者を合法的に拷問することができる拷問投票制度が存在していた。残虐なレイプ殺人事件で娘を失った高橋実は…
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2023年9月の記事一覧

○拷問投票32【第一章 〜毒蛇の契約〜】

 もちろん、裁判員裁判が維持されるからといって、裁判員等に対して積極的に介入することが正…

山本清流
10か月前

○拷問投票33【第一章 〜毒蛇の契約〜】

「第四号には、いま高橋さんに読み上げていただいたものを含めて、いくつかの例が列挙されたう…

山本清流
10か月前

○拷問投票34【第一章 〜毒蛇の契約〜】

「ともかく、ほかの被害者遺族の方々とも関わりをつくっておくくらいでいいのではないでしょう…

山本清流
10か月前

○拷問投票35【第一章 〜毒蛇の契約〜】

 なによりもまず、全体で十票がある。そのうち六票以上の賛成があれば、拷問の発動が決定され…

山本清流
10か月前
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○拷問投票36【第一章 〜毒蛇の契約〜】

「制度が施行された直後は国民の士気も高く、実際に過半数が積極的刑罰措置に賛成していました…

山本清流
10か月前
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○拷問投票37【第一章 〜毒蛇の契約〜】

「裁判官たちが合計で三票、国民が一票を持っているに過ぎないので、六票以上の賛成を得るため…

山本清流
10か月前
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○拷問投票38【第一章 〜毒蛇の契約〜】

 この規定が持ち上がった背景には、拷問投票法第一九条の存在がある。第一九条は、拷問投票における裁判員としての投票権を与えられた者またはその権利を継承することのできる補充裁判員について、その辞退を禁止したものである。  わざわざ辞退を禁止したのは、その段階になって裁判員たちに辞退されると、拷問投票という制度が実質的に機能しなくなるからだ。  投票は責任が重いので、わたしはやめます、わたしもやめます、みたいなことを認めるならば、裁判員が足りなくなる危険性がある。 裁判員が足りなく

○拷問投票39【第一章 〜毒蛇の契約〜】

「ここまでで国民の壁、裁判員の壁、とお伝えしてきました。最後に残っているのは、当然のよう…

山本清流
10か月前

○拷問投票40【第一章 〜毒蛇の契約〜】

 この立場の人たちは、次のような例を挙げる。たとえば、その手に大きな石を握り、いまにも相…

山本清流
10か月前

○拷問投票41【第一章 〜毒蛇の契約〜】

「具体的な全体像が見えてきました」  それだけ言うと、高橋実は、光線のような鋭い視線をテ…

山本清流
9か月前

○拷問投票42【第一章 〜毒蛇の契約〜】

「当該犯罪の被害者遺族には、投票権が与えられないことはもちろん、投票活動も禁止されていま…

山本清流
9か月前

○拷問投票43【第一章 〜毒蛇の契約〜】

   ※  佐藤龍が子供時代を過ごしているうちに日本経済は着実に弱体化していったが、人権…

山本清流
9か月前

○拷問投票44【第一章 〜毒蛇の契約〜】

 無事に大学を卒業してから悠々自適なフリーター生活を送っていたある日の夜、バイト帰りの夜…

山本清流
9か月前

○拷問投票45【第一章 〜毒蛇の契約〜】

「あ、ありがとう……ございます」  細々とした声が聞こえてきた。その声があまりに弱弱しかったので、思わず、「大丈夫ですか?」と質問していた。相手の反応が返ってくる前に、その質問があまりに無意味すぎたことに自ら気が付いた。 「ああ、ごめんなさい。どうしよう、俺は……」  このまま去るわけにはいかないし、かといって、どう接すればいいか、マニュアルがあるわけでもない。  法的な義務としては、警察に通報するべきなのだろう。  不同意性交等罪は親告罪ではないので、事件が発生した以上は、