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ぼちぼちブックレビュー

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主に新刊・近刊のブックレビューです。自分のブログに転載することがあるかも。記事は無料公開ですが、記事中のAmazonリンクからポチっていただけたら、ちょっとうれしい。
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#レビュー

広告&広報に関わる人の必携本『新プロパガンダ論』

広告&広報に関わる人の必携本『新プロパガンダ論』

今年に入って広告関係の書籍がたくさん出ていますね。その中で異彩を放っているのが『新プロパガンダ論』。広告や広報に関わる人に、とにかくおすすめしたいのです。

本書は、近現代史の研究者である辻田氏と公共政策を専門にしている西田氏による対談集です。2018年4月から2020年9月にかけて行われた、5回にわたる対談を掲載しています。

広告業界に身を置くと、「政治なんて自分とは関係ない」と言い切る人も意

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そのノンフィクション、誰のため?/『女帝 小池百合子』

そのノンフィクション、誰のため?/『女帝 小池百合子』

これまで緻密な取材を積み上げて対象に肉薄してきた筆者だが、本書はあまりにも掴みどころがなく、茫洋とした読後感が残る。それはSNSのタイムラインを長時間見ていた時に似ている。小池氏の虚無性を理由にあげる声を聞いたこともあるが、そうではない。対象への「違和感」を具体的に言語化せず、「虚無」の正体を掘り下げていないのだ。筆者も気づかぬところで、社会の歪みを曝け出す作品なのだ。

ノンフィクションは、時に

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セーラー戦士を閉じ込める「わたしたち」/『with』8月号

セーラー戦士を閉じ込める「わたしたち」/『with』8月号

講談社の女性誌『with』8月号に反応する人は多いでしょう。『美少女戦士セーラームーン』の原画を使った表紙のほか、作品とコラボしたコンテンツも掲載。注目の綴じ込み付録は、セーラームーン仕様の婚姻届です。この企画に意を唱える前に、読んでほしいレビューです。

ちなみに、『with』は主に20代女性を読者層とする情報誌で、タグラインは「恋も仕事も わたしらしく」という現実志向。カルチャー誌のような作品

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君の小宇宙(コスモ)は燃えているか?2020

君の小宇宙(コスモ)は燃えているか?2020

一度でも小宇宙(コスモ)を感じようとしたあなたは、即「買い」案件。

NETFLIXの「瞬の女性化問題」について、何も賛成も否定もないところは圧倒的な広告記事感なのですが、その代わりに資料価値がすごい。メインの語りは地上波TVアニメシリーズ(ポセイドン編まで)なので、「あの」聖闘士星矢の世界観が楽しめる。「完全保存版」の文字は嘘じゃないです。

登場人物紹介が細かすぎて、シャイナさんやジュネさんの

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どこまで続く? 「少女まんが道」

どこまで続く? 「少女まんが道」

タイトルそのまま、「元・少女漫画家」の作者が「少女漫画家」の時代を振り返ったコミックエッセイ。主に『ぶ〜け』で少女漫画を発表していた作者の「今だから話せる」エピソードの数々が、大量に投入されている。

マンガ家であり続けるのに大切なことが随所にちりばめられていて、マンガ家を目指すなら本棚に入れておくべき、いわば「マストバイ」アイテムだ。共感と、ジワリと涙することもあるだろう。もちろん、1980年代

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