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事業を創る人を創っていく!/藤村昌平さん(ライオン株式会社 ビジネスインキュベーション部 部長)

藤村昌平さん プロフィール

ライオン株式会社 ビジネスインキュベーション部長
2004年にライオン入社。
R&D部門で新規技術開発、新規訴求開発、新ブランド開発を経て、2016年よりプロジェクトベースの新規事業創出業務に従事。
2018年に新設されたイノベーションラボにて新規事業の実現とイノベーションを生み出す人材創り・組織創りに注力。2019年4月より新価値創造プログラム「NOIL」事務局長を務め、2020年1月より新設のビジネスインキュベーション部長に就任。
新規事業開発とイノベーター育成がミッション。

(豊田)
こんにちは!スパイスアップ・ジャパン代表の豊田圭一です。

「人事」のHRと「トランスフォーメーション」のXを掛け合わせて「HR-X」と名付けた当チャンネルは、「トランスフォーメーション人材で組織を変革する」をスローガンに、「人事」と「トランスフォーメーション」、つまり「変革」というキーワードで様々な取り組みをしているゲスト、Mr. Xをお迎えしてお話を伺っていきたいと思います。

今回の「Mr. X」にはライオン株式会社でビジネスインキュベーション部の部長でいらっしゃる藤村昌平さんをお迎えしました。
藤村さん、今日はよろしくお願いします。

(藤村さん)
よろしくお願いします。

(豊田)
まずは自己紹介をお願いできますか?

(藤村さん)
はい、改めまして藤村です。
よろしくお願いします。
ご紹介いただいた通り、ライオンという会社でビジネスインキュベーションという部を持っているのですけど、その部はライオンの中で新規事業をやっているオーナーしかいない部になっていて、ライオンの中の「新規事業」のど真ん中にいるという形になっています。
そんな中で色々活動しているのですが、新規事業って思ったようにうまくいかないケースの方が多くてですね、私自身も数年前は自分自身がオーナーとして新規事業を創ったりしてたんですけど、会社の中で新規事業を創っていくのってハードルとか障壁がいっぱいあるよなと思って、私がメインでやっているのは「事業を創る人を創っていく」がメインのミッションになっています。

(豊田)
事業を創る人を創るっていい言葉だなって思ったんですけど、今まさに変革が叫ばれていて、私のこのチャンネルも「人事と変革」というキーワードでやっているんですけど、事業を創る人を創るってピッタリな言葉だなと思いながら今も聞いていました。
具体的にはどういうことをやるんですか?

(藤村さん)
この言葉自体は、『「事業を創る人」の大研究』という書籍があって、中原先生と田中先生が書かれているんですけど、大学の先生が書かれた本なのでいろんな新規事業にトライした人たちを分析して統計化して、こういうような壁にぶつかるよねとか、こういうことを言われるよねとか、この人はこういう風に考えてしまうよね、みたいなことが体系立てて書かれているので、私はそれを新規事業やった後に読んだので、すごいあるあるで私自身もそうだなと思いますし、私のところで一緒にやっているメンバーを見ても、かなり当てはまる部分があって、これって私もしくは一緒にやっているメンバーの特有の課題というよりは、すでにみんなが共通して持っている課題なんだなということが分かったので、むしろ人の部分の推進を止めている課題を解決してあげないと、そもそも新規事業って生まれないよねというところから、事業の前に「人を創る!」ということをやらないと、例えば、経営から100億の新規事業を創れ!って言われても、そんなに創れている人はいないじゃないですか。

紐解いていくと結局、「人」に行き着くので、人を創らないとダメですよねってことを発信していくために「事業を創る人を創る」ということです。

(豊田)
ある意味当たり前かもしれないですけど、組織は人でできてますから。
事業という箱はあるわけじゃないですもんね。

(藤村さん)
そうなんですよね。
経営から出されるボールが先ほど申し上げたように、事業を創れ!という風に来るわけですよ。
そこのゴールというかコミットメントだけは皆さんイコールなんですけど、この解き方は分からないまま一旦預かるケースがすごく多いと思うんですよ。
それを因数分解していくと、結局その事業自体は数あるテーマというか、推進しているプロジェクトの中から選抜されて最後選ばれていくみたいな形になるじゃないですか、どうしても。
それはスタートアップでも事業会社でも一緒で、かなりテーマが潰れていった後に良いテーマが残っていくじゃないですか。
この潰れていくテーマを創っていくような場が必要で、創れと言われても、いきなり審議ができるところまで創れるわけではないので、そういう活動できる場がいるよねってことで、例えばアクセラレータープログラムとか色々な名前が付いているんですけど、場を作ったら事業が生まれるわけでもなくて、それを走ってくれる人がいるよねって話になるので、人がいて、場があって、テーマが生まれて、事業が生まれていくというフレームがない限りは、事業ってラッキーパンチで1個創れるかもしれないけど、長く事業会社の中で生み続けていくってことを考えると、やっぱり人起点から始めて、創っていかないといけないですね。

(豊田)
それ間違いないですよね。
だって事業を創るってHow toがあるわけじゃなくて、そもそも起業して10年もつ会社が何社あるかという割合でもすごい少なかったりするわけじゃないですか。
スタートする時に、失敗しようと思ってする人なんて誰もいないのに、結果的にそれだけしか残らないとすれば、How toがあって、こうすれば成功するよ!なんて正解は1つもないと。
アントレプレナーシップって言葉だってやっぱり“シップ”ですから、リーダーシップとかアントレプレナーシップってスキルとかじゃないんですよね。
だからどういう風にそこに向かうかということなのかなと思うと、まさに「人」ということなのかなと思うんですけど、今やイノベーションだとか新規事業ってどんな会社でも取り組んでいるじゃないですか。
藤村さんが仰っていた、「人」という観点で大切にしていることってありますか?

(藤村さん)
体系化されたプロセスって、例えば、デザイン思考プロセスとかリーンスタートアップみたいなやり方はかなり出てくるんですけど、すごい抽象化されるので中で動いている人のことは表面化してこないので、それを手に武器として持ってみて動いてみたら、プロセス側は問題ないんだけど、人側の問題が出てくるんですよ。
それは進める人の問題ももちろん出てきますし、受け取るミドルマネジメントの問題も出てきます。
さらにそのミドルマネジメントと現場が持ってくる提案を審査する取締役とか上の人たちの課題も出てくるので、これを通常のオペレーションの中で企画を創って事業していくところと、新規事業はやっぱりやり方も人も考え方も含めて全部違うので、1個1個ちゃんとチューニングしていかないと現場がいきなり上に上げてもダメって言われるし、上から落としても現場は何やって良いの?って話になるので、そこを丁寧に汲み取っていくことが必要ですし、現場の子が何人もチャレンジした上でライオンの中で新規事業が生まれてくると思うので、彼らが滑らかに仕事ができるように周りがサポートしていくってところがすごい大事なんじゃないかなと思っています。

(豊田)
今、話を聞きながら考えてみたら、下が上に上げたとしても、その上の人たちも新規事業を立ち上げたことないですよね?

(藤村さん)
はい、まさにその壁は至る所でありますし、みんなそれを分かっているので、つい口にしてしまうことの大きな1つでもありますね。
「あいつら、新規事業、創ったこともないくせに分かるわけないじゃん」ってめちゃめちゃ出てくるワードですね。

(豊田)
上の人は上の人で、出てきたものに対して、こんなの実現可能性低いじゃないかとか、コストいくら掛かると思ってるんだって、それはそれで経験値の中から言ったりしますよね。

(藤村さん)
そうなんですよ。
経営の方々に、先ほどご紹介した書籍の中でも出てきていることが、「うちには人がいない」って言うんですよ。
こっちは「人がいない」と言って、こっちは「選ぶ人がダメだ」ってどっちも人の問題なんですよ。
人の話はすごく出てくるので、やっぱりそこに向き合わないとダメで、例えば新規事業の最近の流行りはDXですよね。
DXも会社の中にデジタルツールを入れたり、デジタル化したりすることでビジネスの可能性も広がっていきますし、そこからより高次元に顧客と繋がっていくことでって話になるんですけど、あれも言葉として、デジタル、デジタル、デジタルってなってしまっているので、それを使う人とか、そこを使って事業を生み出す人がなくなっていて、人がアップデートされないまま置き去りで、会社の中に入れるツールだけが、すごいモノが入っていくという状態なので。

(豊田)
DX用のツールがたくさん入ってくるんだけど、誰がこれを使うのって話になってますよね。
藤村さんはライオンには新規事業をやりたくて入ったんですか?

(藤村さん)
いえ、そういうわけではなかったですね。

(豊田)
なんで今の位置にいらっしゃるんですか?

(藤村さん)
元々ライオンという会社を子供の頃から知っている会社でもあったので、ものづくりの会社であり、皆さんの手に取ってもらえるものを作っている会社なので、私自身よく知っている会社というのもあって選んで入ったんですけど、10年間くらい洗剤を作ったり、そういうことをずっとやっていたんですね。
途中から会社の変革のために新しいものを生み出していかないと、当然一生手洗い洗剤や歯磨き粉だけで食っていけるほど、甘い世の中ではないので会社の変革の一環として新規事業のチャレンジっていうことが段々機運が高まっていくタイミングだったので、そこにチャレンジしたいなと思って自分で手を挙げた感じですね。

(豊田)
最初は自分自身も経験値がない中で、取り組むじゃないですか。
自分が身につけなきゃいけないという最初の一歩はなんだったんですか?

(藤村さん)
最初の一歩でいうと、そこまで高尚な話はなくて、まさに人のせいにするフェーズでした。
自分で手を挙げたんですけど、こんな会社で新規事業やれるわけないって普通に言ってましたし。
それこそ社長が悪いとか、上司が悪いって私も言ってたんですよ。
とあるアイディアを当時の上層部の方に持っていった時に、かなりの剣幕で怒られて、そんなことをやらせるために君がやっていたプロダクトマネージャーからこっちに動かしたわけじゃないと。
何を言っているのかその時は分からなかったんですよ。
そこから、その会の中でもそうでしたし、その後の活動を見ていく中で、ライオンの中でも答えのないことをやってるんだなと。

そもそも「問い」すらないものをやろうとしていて、社内に答えがないものを社内でやっていても上手くいくわけないなと思ったので、それに気付いてからはできる限り外に出るようにし始めたのが結構大きな気付きではありました。
そこで出会う人に教えてもらったりとか。

(豊田)
外っていうのはあちこちのセミナーに行ったり、人に会ったり、本を読んだりとかそういうことですか?

(藤村さん)
はい、そうです。
セミナーなんかは本当に結構行きましたし、当時はオープンイノベーションって言葉がグッと言葉の検索としても上がってきているような状態だったので。

(豊田)
5、6年前くらいですか?

(藤村さん)
はい、そのくらいです。
なので調べると、オープンイノベーション室とか書いてあるところに知り合いがいる時は知り合いに紹介してもらったり、誰もいない場合は直接メールして、そこの人に会わせてくれ、遊びにいかせてくれって言うと、皆さんだいたい返してくれて、遊びに行くと「お前何しに来たの?」って話になるんですね。
そこから色々な議論をしていく中で、先ほどの書籍に出会うことになって、私自身が他人のせいにして俺は悪くない、周りが悪いって状況から、そうか自分は通常のオペレーションの中ではキャリアを積んで来たけど、新規事業に関しては全然素人だなってことに気付き、大反省をして、じゃあ何ができるんだろうと取り組みを始めて、気付いたのは私自身が一つの事業に向かってやるよりも、組織の中で新規事業が創りやすい風土や制度だったり仕組みを作ってあげた方が、中でやっている子たちが楽しそうに新規事業できるなとか、可能性が高まっていくんじゃないかなって気付いてからは、一歩引いてというか先ほど言った上と下を繋ぐ仕事だったり、場を作ってそこにみんなが参画しやすいようなもの作ったり、そういうことを今やっています。

(豊田)
さっき機運って言葉を仰っていたんですけど、藤村さんが手を挙げようかなって言ってからも年数がちょっと経っているわけで、今ライオンさんの中で取り巻く環境、イノベーションとか新規事業というキーワードって変わっていますか?

(藤村さん)
変わっていますね。
当時はかなり強い既存事業があって、ほんのちょっとだけ新規事業に取り組んでいるってぐらいの空気感だったんですけど、今は新規事業も既存事業も関係なく、会社全体として変革していかなきゃいけないし、そのためには今までずっと作ってきた歯磨きをする習慣とか手を洗う習慣など習慣そのものを我々はずっと作ってきたんですね。
作ってきた上でプロダクトを買っていただいて、プロダクトをどんどんブラッシュアップしてきたというのがここ120、130年の歴史なんですね。
時代が変わってきたので、いつまでもその状態だけでは会社は変わっていかないので、新規事業、既存事業に関わらず、会社自体を変えていくために何をするかっていったところが、今のメイントピックです。

(豊田)
そんな風に変わってきたんですね。
そもそもイノベーションとか新規事業は貴社のような大きな会社では何のためにやるべきなんですか?

(藤村さん)
先ほど変革という言葉を使ったのですが、我々自身は次世代の経営ビジョンを出していて、その中で「リデザイン」という言葉を掲げていて、それは今まで我々が良くするために作ってきたものを一度壊してでも、今の時代に合ったより良い生活のためにもっとできることあるんじゃないの?みたいな話を問うために、それを作っているんですよね。
なのでそこのメッセージにどう我々会社のメンバーとして応えていくかってところが、今それが会社の中でやるべきことだと思いますし、そこはチャレンジし甲斐のあるところなんじゃないかなと思います。

(豊田)
実際周りの人たちは、やっぱりそうだよね!って言いながら、付いてくる人たちは徐々にでも増えてきてますか?

(藤村さん)
それはそう思います。
必ずしも新規事業のフロントに立つってことだけではなくて、既存事業を支えて下さっているお客さんもそうですし、新規事業の中でご協力いただいているメンバーもそうなんですけど、彼ら自身もどちらも大事という形にかなり意識が変わってきているなという風には思います。

(豊田)
そうでしょうね。
僕自身も小さいながら色々な事業を創ってきたので、どんな風にやっているのかなとか、オープンイノベーションをやっている会社の顧問をやっているので、その辺り今後も色々話を聞きたいなと思いながらも、今日はこの辺で終わりにしたいと思いますが、藤村さんが取り組んでいる取り組みはかなり注目しているので、また教えてください。

(藤村さん)
はい、ありがとうございます。

(豊田)
さて、HR-Xではこれからも「人事」と「トランスフォーメーション」というキーワードで、様々なゲストをお呼びしてお届けしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
藤村さん、今日はありがとうございました!

(藤村さん)
ありがとうございました!

豊田圭一(株式会社スパイスアップ・ジャパン 代表取締役)
上智大学を卒業後、清水建設に入社。約3年の勤務後、海外留学コンサルティング事業で起業。以来、25年以上、グローバル教育事業に従事している。
現在、国内外で「グローバルマインドセット」や「変革マインドセット」を鍛える研修を実施する他、7ヶ国(インド、シンガポール、ベトナム、カンボジア、スリランカ、タイ、スペイン)にグループ会社があり、様々な事業を運営している。
2018年、スペインの大学院(IE)で世界最先端のリーダーシップ修士号を取得。
2020年に神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部の客員教授に就任。
著書は『とにかくすぐやる人の考え方・仕事のやり方』『ニューノーマル時代の適者生存』など全19冊。
早稲田大学トランスナショナルHRM研究所の招聘研究員、内閣府認証NPO留学協会の副理事長、レインボータウンFMのラジオ・パーソナリティも務めている。

豊田が2020年6月に出した著書『ニューノーマル時代の適者生存』

株式会社スパイスアップ・ジャパン
 公式ウェブサイト  https://spiceup.jp/
 公式フェイスブック https://www.facebook.com/SpiceUpJP/

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