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きみのヒーローになりたい

現在Youtubeにて先日109巻が刊行されるに至った大人気漫画「ONE PIECE」と、Mr.Childrenの2002年発売の名曲である「HERO」がコラボしている動画が公開されています。

昨日見たこの動画すごかったです。何がすごいか。全てです。何はともあれ気になる方は是非とも見てみて欲しいです。ただ、最新刊のネタバレが思いっきり含まれているらしいのでそのあたりはご注意を。

これはすごいです。ONE PIECEに空島編あたりで挫折してしまった、とっくにあの世界観から取り残された存在の私でも泣きました。きっとONE PIECEのファンにも、Mr.Childrenのファンにも、どちらも知らない人でも感動すると思います。両方のファンなら尚更ではないでしょうか。それほどに素晴らしい動画でした。


ちなみに元々の「HERO」のMVはこちら。

先程言及した通りに私はONE PIECEの最近の展開について一切知らないこと、また動画を見るか迷っている方に対してネタバレになってしまうと失礼だと思うので、今回はあくまでMr.Childrenの「HERO」についての記事を書いていこうと思います。




久しぶり、なんなら7年ぶりくらいに聴いた歌でした。私がMr.Childrenにはまってまず借りた「シフクノオト」というオリジナルアルバムを思い出します。その最後に収録されているのがこの曲です。曲名の「HERO」、その言葉からまずどんな印象を抱かれますでしょうか。先程のONE PIECEの動画を見て下さった方は「くま」になっているのかもしれませんね。

ヒーローといえば、私が思いつくのは悪と戦ってくれるヒーロー。簡単に例えるのならアンパンマンなんかがそうです。けれども、最近のヒーローものはストーリーが難しいらしいと聞いたことがあります。

「アンパーンチ!」「バイバイキーン!」では終わらない複雑なストーリー展開がそこにあるそうなのです。己の持つ信念や正義のために戦う。視点が移動すればどちらもがヒーローとして成り立つ。駆け引きめいたその展開、登場人物を取り巻く愛と裏切り、勝ったとしても一体どうなるのか――。


オタクの私にはついついそんな構図が見えてきてしまうのですが、今回の「HERO」については全くそんな話ではありません。このヒーローとは誰かを守るためにいるヒーローのことなのです。さきほど私の想像したような、わかりやすく「戦う」ために存在するようなものではありません。

選ばれた存在の強い主人公がみんなを守るわけではないのです。どこにでもいる、弱い人間が守りたい大切な存在と生きていく。そんなありきたりのようで実はとても難しいことが、愛おしいのだと教えてくれる――私にとってMr.Childrenの「HERO」とはそんな歌でした。

例えば誰か一人の命と引き換えに世界を救えるとして
僕は誰かが名乗り出るのを待っているだけの男だ

Mr.Children「HERO」

私が最初にイメージしたような強いヒーロー像と比べると、弱々しいようで少し情けない――けどとてもリアルな心境からこの歌は始まります。等身大の勇気なんてほとんどないちっぽけな大人。そんな人の視点から語られるささやかで、とても優しい歌です。


えっ?Mr.Childrenの普段の曲調からして「戦うぞー!」といった感じではないだろうと思ったあなた。「Fanfare」という曲をどうぞ。これこそがMr.Childrenによって正式に提供されたONE PIECEの映画主題歌です。そもそもこのときの映画自体、作者の尾田栄一郎先生が「ミスチルが主題歌をやってくれるなら……!」と作ったものだそうです。すごい話ですね。




話を戻します。

最初これを聴いたときに私が思ったのは壮大なラブソングなんだなという印象でした。とにかく愛が大きいんです。世界の人を救うことはできないけど君にとってだけのヒーローになりたいだなんて、やっぱり桜井さんの書く歌詞は素敵、とてもロマンチックだなと思いました。けど、二番に入るとちょっと雰囲気が変わるんですね。

駄目な映画を盛り上げるために簡単に命が捨てられていく
違う 僕らが見ていたいのは 希望に満ちた光だ

Mr.Children「HERO」

ここで一瞬「あれ?」ってなります。だってさっきまでは守りたい君と守りたい僕のはずでしたから。実はMr.Childrenといえば「言いたいことは一番ではなく二番に持ってくる」という法則があるんです。そしてその答えを示すように、その先へと進むとこんな印象的なフレーズが出てきます。


人生をフルコースで深く味わうための
いくつものスパイスが誰もに用意されていて
時には苦かったり 渋く思うこともあるだろう
そして最後のデザートを笑って食べる君のそばに僕はいたい

Mr.Children「HERO」

なんだか、ここで視点が恋人ではないような気がして来るんです。もっと温かく身近にいて見守ってくれる存在。そう思うと歌全体の印象ががらっと変わってきます。

もちろん、恋人に当てはめる方もいると思いますし、解釈は人それぞれです。私が感じたのは先生や家族としての慈愛に似ているということでした。まるで成長を見守ってくれているような。


私は以前同じMr.Childrenの曲で「SUNRISE」についても記事を書いたことがあるんですが、これと似たような印象です。2007年発売の「HOME」というアルバム収録なので少し時期は違いますが、この曲の歌詞は「守られる側」の意識で書いてあるように思います。

大きなもの ゆるぎないもの 
そう疑いもしないで過ごした
家族の愛にいつも守られて
どうしてこんな不確かなもの 
無邪気に信じていれたんだ?
どうしてこんな不安定なものを

少年の日々を思うとき
不思議なほど幸福な気持ちが僕を包む

Mr.Children「SUNRISE」



そして「HERO」のCメロ。先程の「人生をフルコースで~」から始まった歌詞は二番のサビなのですが、その先にやっぱりという表現がありました。当時は全く気付かなかったのですが、こうして「HERO」「SUNRISE」とまとめてみると共通点が見えてきますね。

残酷に過ぎる時間の中で 
きっと十分に僕も大人になったんだ
悲しくはない 切なさもない
ただこうして繰り返されてきたことが
そうこうして繰り返していくことが 嬉しい 愛しい

Mr.Children「HERO」

こう追ってみると人として生きていくサイクル自体が愛しいと言っているように聞こえてきます。桜井さんは実生活でもお子さんがいますし、そういった視点も含めた歌を作ったとしたら納得のできる歌詞だと思います。

どこか人生を達観しているような、少し離れたところから見てくれているような慈愛を感じます。親に見守られて生きてきた自分、これから生きていく子供たちを見つめている自分――これは両方の視点があるからこそ書ける歌詞ではないでしょうか。

きっとこの視点の温かさが、発売されてから既に22年(!)も経っていた「HERO」という曲を現代に呼び戻した理由なのだろうなと思っています。


尾田栄一郎先生、再びこの曲と出会える機会を下さってありがとうございました。私にとってはONE PIECEも、Mr.Childrenも偉大な存在です。こんなところで書いてもきっと届かないと思いますが、お体に気を付けて完結まで執筆頑張って下さい。心より応援しています。

ここまで読んで下さってありがとうございました。




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