見出し画像

〈持続可能な明日のための、今日のジェンダー平等〉 ~アフリカ マラウイの女性たちの事例から~ Spica×NPO法人せいぼ

〈はじめに〉

 こんにちは。代表のみゆきです。

先日の国際女性デーで、Spicaは今年のテーマである“Gender equality today for a sustainable tomorrow” 「持続可能な明日のための、今日のジェンダー平等」に着目し、環境問題や気候変動とジェンダー格差、女性の健康問題との関連について、専門家の先生からお話を聞きました。

すると、私が高校生から活動している国際ボランティア団体の先輩が、前回の記事を見て

「アフリカのマラウイの女性たちについて、ぜひ取り上げてくれない?」

と声を掛けてくれたのです。

画像1

 彼、山田真人(やまだ まこと)さんは、私と同じ国際ボランティア団体に所属しながら、NPO法人せいぼの理事長も務めていて、まさに国際貢献をライフワークとする方です。
せいぼは、“A simple daily meal for every hungry child”
「おなかを減らしているすべての子どもに給食を!」

というコンセプトで、学校給食などの支援活動に取り組む、特定非営利活動法人(NPO)。その活動拠点の一つが、アフリカのマラウイという国です。

マラウイでは洪水やサイクロンなどの災害被害、教育のジェンダー格差、性別役割分業など、前回の記事で解説した内容の具体例となる問題にまさに直面していると、山田さんは語ります。


今回は、そんなマラウイの女性たちの実状、そしてせいぼの取り組みが女性たちの生活にもたらした変化についてお話を聞き、グローバルな視点でのジェンダー平等についてさらに学びを深めていきたいと思います!

画像11


〈マラウイの気候変動〉


  みゆき「山田さん、そもそもマラウイってどんな国なんですか?」

画像2


 山田さん「マラウイは平和で、政治も比較的安定していますが、世界の最貧国の一つでもあります。人口は約1,730万人で、約67%が25歳未満です。そして、その多くが農業に従事しています。」


  みゆき「国民の多くが農業従事者、つまり気候変動の激化によるダメージを最も大きく受ける人たちということですね。」


 山田さん「CCKP(The Climate Change Knowledge Portal )のデータを見ると分かるのですが、地球温暖化の影響はマラウイも例外なく受けており、洪水・干ばつなどの異常気象がますます激しくなっています。


 実際2015年には、マラウイ史上最悪の洪水が起き、子どもの約半数が栄養失調に陥る事態が起こりました。これを受けて、せいぼはマラウイでの活動をスタートしたんです。
マラウイの日常では、干ばつや洪水によって農作物ができなくなってしまい、貧困に拍車をかけてしまうことがしばしばあります。そこから様々な問題が連鎖的に発生しているのです。それには、ジェンダーの問題も密接に関連しています。」

  みゆき「なるほど。具体的にどのような問題が起こっているのか、これから見ていきましょう」

〈マラウイの女性たちの暮らし〉


①農業を担う女性たち

  みゆき「やはり世界的な傾向と同じように、マラウイでも農業に従事する人は女性が多いんですか?」


 山田さん「そうですね。マラウイでは、男性は出稼ぎなどに出たり、都市部で働いてたまに家庭に戻ってくるというケースが多く、地域で農業に従事するのは主に女性です。農作物は日々の食糧として消費するだけでなく、販売をすることで女性たちの現金収入源にもなっていて、わずかですが、それが子供たちの学費や家庭の食費を支えることになります。」


画像3

▲外で農作物の販売をしている女性


  みゆき「子どもが教育を受けられるかや、家族が毎日ご飯を食べられるかは、女性の労働と収入にかかっているのですね。」


 山田さん「しかし、マラウイでは3年程度置きに干ばつが起こってしまいます。また、気候の特性として雨季と乾季があるため、洪水と干ばつの繰り返しになることが頻繁にあります。農作物の不足が特に起こるのは雨期になります。この時期は多くの家庭が、生活に十分な収入になるほどの仕事を実施できない状態になります」


  みゆき「重要な収入源であるのにもかかわらず、それではかなり不安定ですね。」


②女性が担う家庭の仕事

  みゆき「男性が出稼ぎに行って家を空けるとなると、農業だけでなく家庭の仕事全般を女性が担っていることになりますよね?」


 山田さん「はい。男性が家にいない状況で、必然的に性別役割分業が固定化されています。家事や子どもの世話など、全てが女性の仕事です。
女性が担う家庭の仕事のなかでも特に大変なのが、生活水の確保です。水道インフラが整っていないマラウイでは、女性たちが大きなバケツを持ち、遠方まで水汲みへ行かなくてはなりません。」

画像4

▲水汲みをするマラウイの女性


 みゆき「水を手に入れるというだけで、多くの時間と労力が奪われてしまいますね。」


 山田さん「お母さんが水汲みや仕事のために日中家を空けている間、留守番や小さい子どもの世話のため、女の子が学校を辞めざるを得ないという状況も起こっています。」

③女子の教育

  みゆき「性別役割分業が強いことで女の子が教育を受けられず、女性の選択肢は限られしまい、性別役割分業がさらに強化される…負の連鎖になってしまいますね。」

 山田さん「結果的に、政治の決定の場も男性ばかりになってしまいます

2020年にマラウイで初めて、Stella gomma(ステラ・ゴマ)さんという女性の環境活動家が誕生しました。彼女も、女性が家庭でで多く具体的な被害を被った一方で、男性がその回復のための活動の舵を握っていることを問題視しています。」

画像5

▲マラウイ初の女性環境活動家 ステラさん


  みゆき「政治の場でのジェンダー平等の実現が環境問題の解決の鍵となることは、前回もしっかり学びました。改めて、女子教育はとても重要ですね。」


 山田さん「家庭の手伝い以外に、マラウイの女の子の教育を阻む課題は様々です。幼いうちの結婚、ほかには、学校に女子トイレが完備されていないことも、女の子が学校に行きづらくなる要因と考えられます。」

  みゆき「女の子が学校に行かないと、学校を作るときも女の子がいることを想定されないから、トイレなども完備されなくなってしまいますね。」

〈せいぼの取り組み〉


①給食・教育支援

  みゆき「せいぼの主な活動は学校や幼稚園などへの給食支援ですよね。ここまで挙げた様々な課題と、学校給食は何か関係があるのですか?」

 山田さん「給食は、子どもの栄養状態の改善はもちろんですが、他にも様々な課題解決に繋がります。マラウイでは小学校が無償なのにも関わらず、多くの子ども達が学校に行けないという問題がありました。それは先ほども少し話したように、食べていくのもやっとという状況のため、子どもたち、特に女の子たちが家庭の仕事をしなければならないことが原因のひとつです。しかし、学校に行けば子どもの食事が確保できるとなれば、子どもにとっても親にとっても、学校へ行く(行かせる)モチベーションになります。」

画像6


  みゆき「全ての問題の根本的解決のためには子どもたちが教育を受けて適切な知識を付けることが必要不可欠で、学校給食はそのきっかけになるんですね。」


 山田さん「現地では女の子の早期の結婚も問題ですが、教育を受けて将来の選択肢を広げることは、女性の社会的地位の向上に繋がり、児童婚の問題の解決にもつながると思います。」


 みゆき「平等な教育が充実すれば、ステラさんような女性のアクティビストももっと増えるかもしれませんね!」


 山田さん「また、子どもたちが学校や幼稚園に行っている間、お母さんの時間の余裕ができます。以下はせいぼによる支援先への家庭訪問のレポートなのですが、できた時間で新たな仕事を見つけたり、スキルを身に付けることで、女性たちが農業だけに依存しない生活が徐々に実現してきています。


  みゆき「子どもが学校に行くことは、その子の将来の選択の自由に繋がりますが、それだけでなく、お母さんの今の選択肢も広げるんですね!」

②井戸の建設

 山田さん「また、せいぼは給食以外にも様々な支援活動をしています。2017年、せいぼはマラウイのタウィナという地域に井戸を建設しました。」

  みゆき「水の問題の解決ですね。」


 山田さん「井戸の建設の中心となったのは、女性たちでした。それまでタウィナの女性たちは、水を汲むために朝1時に起きて、長い距離を移動しなければなりませんでしたが、井戸が出来たことで彼女たちの生活に、安心と時間の余裕がもたらされたといいます。」

画像7


  みゆき「当事者である女性たちリーダーシップを持つことで状況が改善した良い事例ですね!」

 山田さん「せいぼが井戸を建設し、タウィナに水が安定的に供給されるようになったことで、その翌年には現地の女性を中心とした共同体が自主的に、村のトイレ建設を開始しました。」


 みゆき「トイレが整備されると、衛生面も改善されますね。また今後、学校などでもトイレの整備が進めば、女の子たちももっと学校に行きやすくなるかもしれませんね。」


③保育士のトレーニング

 山田さん「現地にはCBCC(Community Based Children Center)といって、地域の人たちが共同で運営する子どもセンターがあるのですが、せいぼは各地域のCBCCへの支援も行っています。CBCCの先生、保育士、給食調理などのスタッフの多くが地元の女性、お母さんたちです。」

画像8


  みゆき「CBCCは地元の女性たちの働く場になっているんですね。」


 山田さん「しかし、コロナウイルスの被害が大きい際は、CBCCを運営する余裕がコミュニティの人々にはなくなり、一旦運営が止まってしまう場所も増えました。
そんな中、せいぼはCBCCの皆さんに対してコンペを開き、各CBCCの教育についての取り組み、子供たちの栄養管理状態などを比較し、競争をさせて、勝利したCBCCを表彰した上で、賞品を提供しました。これによって、コミュニティ内での女性たちの自尊心が高まり、CBCCの運営も復帰させることができました。また、賞品として家庭の食品やCBCCのための教材が提供されました。こうして、子供たちだけではなく、お母さんたちの生活をさらに支えることができる活動に繋げることができたのです。」


  みゆき「モノやお金で支援するだけでなく、現場の女性たちの自主性を尊重し、エンパワメントすることで、より持続的な支援を実現したんですね。」


④フェアトレードコーヒーの販売

 山田さん「NPO法人せいぼは、Warm Hearts Coffee Clubというフェアトレードコーヒーブランドも運営しています。」


  みゆき「日本ではあまり見かけないですが、マラウイコーヒーってすごく質が高くて美味しいんですよね!」

画像9

▲マラウイコーヒーを淹れていただきました。味のバランスが良くてとても美味しいんです!


 山田さん「マラウイのコーヒー農園では、多くの女性たちが働いています。フェアトレードによって、生産者たちの生活の質を向上できます。また、国際フェアトレード認証の奨学金が生産地に支払われるシステムがあり、生産の向上や、病院の建設など地域社会の貢献に役立てられます。

そして、Warm Hearts Coffee Club最大の特徴は、売り上げの100%がマラウイの給食支援に使われることです。」


  みゆき「100%ですか!よく他のメーカーが売り上げの数パーセントを寄付するキャンペーンをやっていますが、全てが寄付になるのは珍しいですね。」

 山田さん「これは、他の複数の企業がこのプロジェクトに賛同し、支援を受けていることで成り立っています。1000円のコーヒーを買うと、65人の子ども達が給食を食べる事ができます。」


  みゆき「美味しいコーヒーを飲むことで、コーヒー生産者と子どもたちの生活を支えられる…とても良いシステムですね!」

画像10

▲マラウイのコーヒー農園の女性


〈おわりに〉


   みゆき「山田さん、お話ありがとうございました。せいぼは子どもへの支援がメインのNPOだと思っていたのですが、女性支援やジェンダー平等に繋がる様々な取り組みがあると分かって、改めて素晴らしい活動をしているんだなと思いました!」


 山田さん「こちらこそ、ありがとうございました。マラウイで実施している学校給食の付加価値として、女性の生活の向上などに対する効果についてもご紹介できてよかったです。

マラウイは、皆さんにとって馴染みがあまりない国だと思いますが、今回の記事で少し親近感を持って頂ければ幸いです。そしてさらに現地のコーヒーを飲んで頂いて、さらに親しみを覚えて頂ければ、もっと嬉しいです! 

コーヒーの定期便で、定期的な寄付をすることもできます。皆さんが飲む度に、今回のSpicaさんの記事の内容を思い出して頂ければ幸いです!そうやって少しずつ、世の中への意識変革を促していくことも、私たちのミッションです。

  みゆき「NPO法人せいぼの詳しい活動や最新ニュース、コーヒーの購入は下記URLよりご覧ください!」

🕊コーヒーの詳細と購入▼

🕊NPO法人せいぼ最新ニュース▼


最後まで読んでいただきありがとうございました✨

*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*


💫フォロー、いいねなど、皆様からのリアクションが励みになります

💫Instagram @spica_forwomen もぜひご覧ください!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?