家庭菜園者しか食べられない野菜たち~秋~
<家庭菜園者しか食べられない野菜たち~秋~>
実りの秋。
そう、多くの植物にとって秋は種をつける季節だ。
しかし、人間のように雑食の動物は種以外もたくさん食べる
・完熟ウリ
多くの夏野菜が未熟果を食べる。
その代表格がウリ科野菜のキュウリやゴーヤだろう。
彼らは熟すと綺麗な黄色になる。
キュウリはもともと黄ウリが訛ってキュウリと呼ばれるようになった。
植物はもともと種子を作るために生きているので
未熟果で食べられるのは面白くない。
だから食べられないように毒を作っているのだが、
それが人間にとって薬となる。
キュウリの酸味とゴーヤの苦味は毒であり薬である。
そして、見つからないように緑色をしている。
植物にとって種子を広く散布するために動物に運んでもらいたい。
だから完熟した果実は黄色となり見つけてもらう。
そして、種子の周りに甘い成分を作る。
それを動物が種子ごと食べて、そしてウンチと一緒に散布してもらうのだ。
種子は油分やガラス質でコーティングされており、簡単に胃腸で消化できないようになっている。
スイカのタネを食べるとおヘソから芽が出るのではなく、うんちから芽が出るのだ。
このゴーヤの赤い実はほのかに甘いおやつになる。
もちろん味も甘さと苦味が混ざり合った美味しさがある。
ぜひ炒めたり煮たりして食べてもらいたい♪
・サツマイモのツル
サツマイモといえば、江戸時代に全国に広がった野菜で救荒作物呼ばれるほど
荒れ地でよく育つ野菜だ。
そのサツマイモはツルも美味しい。
サツマイモはヒルガオ科なので、親戚が空芯菜である。
そう、まさにサツマイモのツルは空芯菜と同じ食感である。
違いはその強い甘味だろう。
サツマイモのツルを切ると切り口から白くて甘い汁が出る。
それを吸ってもいいのだが、その甘さを活用して煮詰めたり、炒め物にするのがオススメだ。
味噌汁など汁物に入れるのも味がしみて美味しい。
西日本ではサツマイモのツルを蒸した後、天日干した保存食がある。
サツマイモ自体も真冬まで保存可能だし、
干し芋(蒸してから干したもの)やかんころ(生のまま切って干したもの)など保存食にもなる。
まさに秋だけではなく冬も救荒作物なのだ。
・穂ジソ
秋のエディブルフラワーの元祖といえば、穂ジソだろう。
この頃になるとあらゆるシソ科のハーブたちが穂をつける。
シソ科は簡単に自生し、他のシソ科とも簡単に交雑してしまうので、
特に自家採種をしたい種類だけを咲かすようにした方が良い。
なので、どんどん穂を摘み取って食べてしまおう!!
しかも、摘み取れば摘み取るほど脇芽からどんどん穂が出てくるので、
期間限定食べ放題祭りが始まる。
穂を食べれば食べるほど、タネをたくさんつけてくれる。
塩漬けなどの漬物、味噌汁やスープ、佃煮・和え物などバラエティー豊かなレシピがある。
そのなかで意外と面白い食べ方が天ぷらだ。
しかも、さまざまな種で作る天ぷらだ。
赤シソの天ぷら、青じその天ぷら、えごまの天ぷら
バジルの天ぷら、ホーリーバジルの天ぷら、レモンバジルの天ぷらなど
すべて香りが違うので個別に食べたり、混ぜたりすることで香りの違いを楽しめる。
・里芋の茎、ずいき(芋茎)
里芋の茎のことを「ずいき」と呼び、食べる地域がある。
実は里芋には大きく3種類に分けられる。
①芋を食べる品種:石川、土垂れなど
②茎を食べる品種:はす芋など
③芋も茎も食べる品種:八頭、海老芋など
面白いことに②は芋を食べない。
里芋の芋は地下茎であり、茎は地上茎で
食べているのはどっちにしても茎。
そんな地上茎は下処理が必要。
フキのように包丁を軽く入れて皮をむき、30分ほど水にさらす。
そのあとお酢を加えたお湯で1~2分湯がき、もう一度水にさらします。
そのあと煮物や和え物などフキの使い方とほとんど同じだ。
地上茎を食べる品種は赤い茎のものが多い。
なので、赤ズイキと呼ばれる。
西日本の多くで栽培されている。
そのなかで高級野菜として白ズイキというものがある。
これは九州南部や愛知県などで栽培されていて、地上茎をゴザや紙などで巻いて
日光を遮ることでとても綺麗な白い茎にしている。
まるで白アスパラガスのような作り方だ。
※白アスパラガスは茎部分を土に被せていく
そして、芋は食べずに地上茎だけを食べるはす芋は青ズイキと呼ばれ、
生産地の一つである高知県ではリュウキュウとも呼ばれている。
里芋は10月頃になると芋は大きくならないので、掘り上げても構わないのだが、
追熟した方が美味しいので、霜が降りるまでの期間に
まずはズイキを食べていって、土の中で追熟させるのがオススメだ。
そして、ズイキも干しズイキとして冬の間の保存食となる。
縄文時代から栽培されていた里芋は各地方に根付いた品種があり、
食べ方があり、呼び名がある。
私たち日本人を養ってきた野菜の一つだ。
そのなかで一番俺が好きな里芋は屋久島の「かわひこ」である。
ぜひ、屋久島に訪れた際には食べてもらいたい。
・間引き菜
実りの秋であるとともに種まきの秋でもある。
秋冬野菜と呼ばれる野菜の多くは「とも育ち野菜」と呼ばれる。
漢字は「共育ち」とも「友育ち」とも書く。
つまり、同じような形をした植物が周りにいた方がよく育つ野菜のことだ。
そのためこれらの野菜の種まきは一般的にたくさん蒔いて、少しずつ間引いていく。
その初期の段階で間引いたものは近年流行り野菜のスプラウトと同じだ。
サラダにも和え物にも汁物にも刺身の添え物にもぴったりだし、食卓に彩りと香りを足してくれる。
友育ち野菜の代表格であるアブラナ科、セリ科、キク科は
畝の上に少しでも空いているスペースがあったら蒔いておこう。
そして、少しずつ間引いて長い期間野菜を楽しもう。
家庭菜園初心者は「間引くのがかわいそう」という人間の都合を野菜に押し付けてしまうために
かえって野菜は込み合いすぎて弱り、病気になり虫に食われてしまう。
また、大きくならずにタネもたくさんつけられないまま春を迎えてしまう。
つまり、友育ち野菜にとって間引いてもらう方が輝くのである。
葉と葉が重なり合う頃には愛でて、間引き、そして味わおう。
そうやって、一粒の種も無駄にしないようにしてほしい。
・菊芋の花
なんと!菊芋はすべて食べられる!!
葉っぱも天ぷらや和え物、酢の物など普通の野菜と同じようにして食べることができる。
味はやはりキク科の野菜らしく香りが高い。さらに芋に含まれているイヌリンもたくさん葉に含まれているので腸内細菌を増やしてくれる。
だが、やはり花が食べられるのは意外だろう。
花弁は生のままサラダや汁物の彩りに使うのが一番良い。
菊芋に限らず芋と呼ばれる野菜は花が咲いたら、摘み取ってしまうのが常識だ。
タネをつけようとするエネルギーを芋に回してもらうためだ。
そうすることで芋の肥大化と味の質をあげることができる。
里芋やサツマイモは日本では滅多に咲かない。
しかし、ジャガイモの花は毒があるので食べないように。
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