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ものがたり

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#小説

果てて、息

果てて、息

彼女がため息をついたのは、私が全てを吐き出しきった後だった。
「大体わかった。で、どうするの?」
ハツはいつでも合理的だ。でも私が欲しいのは解決策ではなく、上っ面でいいから寄り添いの言葉なんだ。せめて、ハツ自身の評価がほしい。
「いや別に、反対しない。でもさ、今後のことを思うとね。」
副流煙で充満した空気が肺を出入りすると、自分がそのまま煙になってしまいそうになる。ハツはやたら細長いそれを愛用して

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黎明謄

黎明謄

あらぬ場所に私はいる。

そこは井戸の中かも知れないし、とんかちで叩かれた頭の中かも知れないし、からくり人形の中かもしれない。

鼠取りに一部を取られたから、四肢の残りを以て動く。

葬儀場からは狼煙が上がって、嫌に咽ぶものだ。

「向こう岸」と記された立て板は墨が滲み、経年の劣化が著しい。

「ここ、ここに居るんだ。」

喉元を響かせる老人の声が頭上から降ってくる。

何か用か、と言い掛けて止め

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