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数学を学べば人間関係がうまくいく!かもしれない話 ~脳と関数~


他人と関わるのは難しい

昔から人間関係がそこまで得意ではなかった。というか友達はいたけれども喧嘩ばかりであった。今では多少改善されたが、三つ子の魂百まで的なことで、本質的にはあまり変わっていないかもしれない。

喧嘩の理由はおおむね私のデリカシーのなさにあったと思う。「自分がされて嫌なことは人にもしない!」みたいなお説教を何度食らったことだろうか。

でも、この論理は不十分だ。人はそれぞれ異なるのだから、私がされて嫌でないことでも、相手にとってはされて嫌なことである、という可能性があるからだ。逆に自分がされて嫌なこと(例えばお説教)であっても、先生は「あなたのことを思うからこそ説教するのだ」と主張してくる。こういうことを言い放つから、ますます関係性が悪化する場合があったのは想像に難くない(笑)。

さて、人間関係は成長過程で学ばれるものである。多くの人は、自然に共感能力が育って行ったりするのかもしれないが、私にはあまりその感覚がない。良く言えば、子供の心を持っている。悪く言えば、自己中でデリカシーにかける。

そんな私が、子供の頃よりはまともに、他人と関われるようになっているとすれば、それは数学的思考能力によるものかもしれない。

文系理系と安易に分類するのは不適切だが、あえて言ってしまえば数学的(理系的)思考を用いることで、文系的思考たる共感能力を補完できる可能性があると感じるのだ。

逆に人間関係がうまくいかずに悩んでいる人は、数学を学ぶことでその改善が狙えるのではないか、と感じるわけだ。ここで言う数学とは、面積を求める計算を暗記するとかそういうものではない。より本質的なエッセンスの部分の話である。

キーワードは、関数だ。実は、人間の脳を関数と考えることができるのだ。それを考えるために、まずは関数について簡単に学習してみよう。

関数とは

関数の基礎(1変数関数)

関数とは、簡単に言えば、特殊な箱のことだ。これは、もともと関数が函数とかかれていたことからもわかる。函館(はこだて)の函という字が使われていたというわけだ。

では関数はどのような箱なのか。それは、変数を入力したときに、入力された変数に依存した値を出力する箱だ。これは何かの数字のボールを入れたら、ある規則に従って、ある数字のボールが出てくるみたいなことだ。

具体例を挙げてみる。$${f(x)=x+1}$$という関数を考えてみる。この$${f(x)}$$というのが、$${x}$$を変数とする関数のことである。関数は英語でFunctionなので、関数にはfという文字を使うことが多い。

この意味は、fという箱、$${f()}$$に$${x}$$という変数を入力すると、$${x+1}$$という出力がされますよ、ということ。

具体的には、例えば$${x=2}$$の時を考えれば、$${f(2)=2+1=3}$$となる。

つまり、2という数字を入れると、3という数字が返ってくる。2と書いてあるボールを入れたら、3と書いてあるボールが出てくるというのが、$${f(x)=x+1}$$という関数だということだ。もちろん、3を入れたら4が出てくるし、10を入れたら11が出てくるし、1000を入れたら1001が出てくる。

多変数関数

ここまで紹介したのは1変数関数だ。これは、変数が1つだけの関数だということだ。先ほどの例であれば、変数は$${x}$$の1つだけだ。

実際には、関数の変数は1つである必要はない。これを多変数関数という。例えば、$${f(x,y)=x+y+1}$$という関数を考えることができる。この関数の変数は、$${x}$$と$${y}$$の2種類である。

具体的な計算例を見てみると、$${x=2, y=3}$$の時を考えれば、$${f(2,3)=2+3+1=6}$$となる。

順問題と逆問題

ここまで関数について見てきたが、これらのものを順問題ということがある。順問題とは入力から出力を求める問題のことである。関数に変数を代入して出力を得るのは、順問題を解いていることになる。

これと逆の作業に逆問題というものがある。逆問題には、出力から入力を推測するものと、入出力の関係性を推定するものの2種類がある。前者は、$${f(x)=x+1}$$がわかっているときに、$${f(x)=3}$$という結果が与えられた場合に、$${x=2}$$を求めるものである。これは比較的簡単だ。

ただ、より興味深く、今回のテーマで重要になるのは後者の方だ。これは、入力と出力が両方わかっている場合、その関数が何かを推定するということだ。

$${f(1)=2, f(2)=3, f(3)=4, f(100)=101}$$みたいな入出力関係が与えられたときに、この関数は$${f(x)=x+1}$$だ!と推定するのが今回注目すべき逆問題である。

脳と関数

脳がすべて

人間は関数である。正確には人間の脳は関数である、とみなすことができる。

人間の行動は基本的に脳の情報処理に基づいて行われる。脳は、五感を通して外界の状況を入力して、それに基づいて情報処理を行い、何らかの行動をとるように体に命令している。

それは意識的なものもあれば無意識的なものもある。かけっこの時に走ろうと意識的に思って走る場合もあれば、無意識に体温が36℃くらいに保っていたり心臓がいつも動いていたりするホメオスタシス的なものもあるということだ。

いずれにせよ、すべての生体反応は脳の情報処理によってもたらされるといっても過言ではない。このことを考えると、入力があって出力があるということだから、脳の情報処理そのもの部分を関数と考えることができるのだ。

脳の関数の逆問題を解くこと

ここまでのことを考え合わせれば、人間関係において相手のことを知るには、逆問題を解く必要があることに思いいたる。

相手の脳に与えられている入力、そして相手の行動(出力)を見て、相手がどんな脳(関数)を持っているのかを推測できる。仮に正しく推測できれば、今まで見たことのない入力を与えてもそのときに相手がどう行動するかを予測することができる。

先ほどの例で言えば、$${f(1)=2, f(2)=3, f(3)=4, f(100)=101}$$という関係を見て、この関数は$${f(x)=x+1}$$だと推測した。これによって、$${x=5}$$という新たな入力がなされたときに6という出力がなされることがわかるのと同じだ。

脳は時間変化する超多変数関数

脳は関数である、という話をしているが、脳はかなりかなりかなり複雑な関数だ。なぜなら、脳に対して入力される変数は1つや2つレベルの話ではないし、脳そのものが経験によって変わっていくからだ。

脳には外界の情報が入力されるから、身体が検知する外界の情報はすべて入力値だし、もちろんその時の身体・精神状態、例えば疲労の感覚やその直前まで考えていたことや気分だって入力値だ。ものすごくたくさんの入力値=変数がある超多変数関数が脳なのだ。しかもそれはもちろん数値化できないようなものも含んでいる可能性が高い。

また、脳は経験を積むことで変わっていく。5歳の自分と今の自分に同じ入力値を与えても絶対に出力は異なるはずだ。これは5歳から今までの間に脳の関数が変化したからだ。

この2つの事情があることによって、現実問題として、脳という関数は一筋縄ではいかない、取り扱いが非常に難しいものなのだ。

データ数の重要性

時間変化する超多変数関数である脳の逆問題を解くのは、実際にはかなり難しい。これに挑むには、データ数を増やすしかない。

1変数であっても$${f(2)=4}$$というデータがあるだけでは、$${f(x)=2x}$$の可能性もあれば、$${f(x)=x^2}$$の可能性もあれば、$${f(x)=x+2}$$の可能性もあれば、、、とありとあらゆる可能性があり、逆問題の答えをしぼりこんでいくことはできない。

ただ、このとき、$${f(1)=1, f(3)=9, f(10)=100}$$みたいなデータがあれば、$${f(x)=x^2}$$だ!と推測できる。つまり、データ数が増えたことで、推測がしぼりこまれて、正確になっていくのだ。

人間関係に活かす方法

脳と関数が同じものと考えることで、相手のことを知ることができるかもしれない、と考えてきた。

ただし変数が多ければ、データ数が多くてもなかなか関数は決定されない。現実問題として、脳という関数の逆問題を解くのは不可能だ。しかし、データ数が増えてくれば、ある程度近似的な解が得られてくるとはいえる。

またもう一点加えれば、人間という種である以上、ある程度、人間の脳という関数のパターンはしぼりこまれてくる。これは1つには本能的なものであり、虎が来たらどんな脳でも逃げようとする。また社会的なものもあり、日本で育てばおそらく列を見れば最後尾に並ぼうとする。

ということで、多くの人間の、多くの入力と出力の関係をみてデータ数を増やすことが重要だということになる。それによって、人間という関数の形をしぼりこんでいくことができる。

また、特定の個人との関係で考えれば、そのような人間としてあり得る関数のバリエーションの中で、特に目の前の相手の脳という関数を仮定し、ある入力を入れたときの出力を予想し、予想と実際の出力の違いを見ていくことから、より相手の関数を正しく推定していくことができる。

すなわち、個人とのかかわりを増やすことで、抽象度を高めて人間という関数の形のバリエーションを蓄積し、それを逆に新たな出会いの個人に対して適応していくということになるだろう。

具体的にデータ数を増やしていく過程では、こういう言葉をかけたときに、こういう反応をした、というのがデータの一つであり、それをもとに相手の関数を推定していくことになる。実際には、なるべくその時の気温や湿度といった環境要因のレベルから、その時の話題に対する感情の働きといったありとあらゆる部分に、入力と出力の関係があり、それに対する感度を高く持つことが、データ数を増やすうえで重要になってくる。

このようにある意味地道であるが、人と関わっていくことで人間関係がより円滑に行えるようになっていくと考えられる。そしてその際には、数学的思考、特に関数的な思考が大事なのだ、というのが脳=関数のもたらす結論だ。

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