見出し画像

「魔女だけど杖は振りません~『リューンノールの庭』~」【YA③】ネタバレあり

 『リューンノールの庭』松本 祐子 作 佐竹 美保 絵 (小峰書店) 
          第1回日本児童文学者協会 長編児童文学新人賞受賞
                          2004.6.28読了
少し前の本ですが、これも魔法が題材のファンタジーものです。
中学生になったばかりで甘えん坊の未散(ミチル)は、ファンタジー作家・水無月サナの本の大ファン。
そんな未散のもとに、パソコンメールが届きました。いきなりドラゴンが画面上で火を噴くという、臨場感たっぷりのもので、でもこれって水無月サナの本に出てくる”ドラゴンD”そっくりです。
差出人の名前はないけど、どうやら招待状らしいのですが…。
 
両親にこのことを言うと、なんと水無月サナはどうやら自分の叔母さんだと聞かされました。今の今まで、自分には知らされていなかった血のつながった叔母だというのです。
一風変わったところのあるこの叔母は離れた所に暮らしていて、親戚づきあいもあまりないらしく、これまで未散にも聞かされていませんでした。
 
でも大好きな水無月サナと同一人物である叔母さんから、夏休みに家においで、というような招待状がきたからには絶対に行くしかないと喜んで向かいました。
 
でも叔母さんの家にいったその時から、未散に不思議なことが待ち受けていたのです。それはなんと魔女の修行をする体験でした!
 
一人じゃ何もできない、甘えん坊で主張だけは一人前の中学生時代。
私にも身に覚えがあるので耳が痛いのですが、そんなふつうの女の子の忘れられないひと夏の体験。
魔女の弟子入り…というと、未散も思ったことですが、ほうきに乗ったり、水晶玉を使ったり、杖を振ったりと考えがちですが、そんなものはこの本には全く出てきません。
 
知識を頭の中にたたきこみ、それをどう活かすかでその人間の値打ちが決まります。
未散は叔母さんから、「知識は力」「大切な古い知恵、知識を新しい世代に語り継いでいけば、永遠に古びはしない」「知識と知識の断片から新しい物語をつむいでいくことのできる者だけが、本物の魔女になれる」ということを教わりました。

これは魔女に限らず誰にも言えることではないかしら。
「古きを温ねて新しきを知る」は何にでも通じる言葉です。
例えば「ハリポタ」だって、いろんな古くからの伝説や言い伝えがたくさん散りばめられています。

たくさんの知識を得れば得るほど、新しいものがおもしろいほど理解できます。なるほどと腑に落ちることもありますね。
少しずつだけど、未散も成長していきます。幼い子どもから大人になるためのワンステップとして必要な体験でした。
 
未散と同年代の子どもたちの心にすっと入り込める素敵な物語です。


この記事が参加している募集

#読書感想文

188,902件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?