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「パラレルワールドで大冒険~『海駆ける騎士の伝説』~」【YA㊹】

『海駆ける騎士の伝説』  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ  作  野口絵美  訳  佐竹美穂  絵 (徳間書店)
                          2007.3.16読了
 
紹介する本ですけど、ここ数記事が重いテーマのものがやけに続いたなあと思いましたので、ここらへんでエンターテインメントなものをひとつ。
 
作者はジブリ作品としてアニメ化された『ハウルの動く城』の原作『魔法使いハウルと火の悪魔』を書いた方でもあります。1970年に大人向けの小説でデビューし、1973年の『ウィルキンズの歯と呪いの魔法』より子供向けのファンタジーを中心に作家活動を続けていましたが、この本はまだ彼女がデビューする前の1966年に書かれたものです。
 
その頃、連作が6作品書かれましたが、これはその最後の作品だそうです。(あとがきより)
 

さて内容ですが、100年ほど前のイギリスが舞台で、海のすぐ近くにある土地に住むセシリアとアレックスの姉弟は、海の向こうの島からやってきた幽霊のような騎士に出会います。
この不思議な島からきた幽霊を見てしまうと、島の近くにある流砂にのまれて死ぬという伝説がありました。
セシリアとアレックスは当然のごとく恐怖におののきます。
 
しかし、この運命の騎士。
何か訳ありのようで、ひどく疲れており誰かに追われている様子です。
どうやら身に覚えのない殺人の容疑をかけられているらしいのです。それも主君である大公を殺したと濡れ衣を着せられているといいます。
 
初めは怖かった二人ですが、よくみれば誠実そうな男性です。妙にかしこまってセシリアのことを「我が姫」などと呼ぶのです。
 
困っているのを見ると放っておけないので一晩泊めてあげたのですが、朝早くにメモを残して突然立ち去った騎士。
 
二人の父が買った土地をもともと持っていた領主・コーシー家から招かれていたパーティに行きたくない彼らは、ふとあの島へ足を向けました。
そこから、彼らの人生をも変えてしまうような事件が待っているとも知らずに…。


 この作者が得意とする、現実世界と別の世界が共存するパラレルワールド&ファンタジーです。他にもパラレルワールドものの作品を多く書かれています。
 
ちなみにアニメ『ハウルの動く城』でもさりげなく別世界を描いていますが(弟子のマルクルがドアを操作するたびに違う街に出るとか、ソフィーにハウルが夢の家をプレゼントする場所とか…)、原作ではもっとはっきりと描かれており、ハウルが現代の一般家庭にも出没し子どもたちとビデオゲームで遊ぶシーンなどもあります。
 
とにかくファンタジーが大好きで得意な作者の、裏切りあり・戦いあり・友情あり・ロマンスありのてんこ盛り状態でなかなか楽しめる作品です。若い頃の作者の、好みのタイプの作品なのでしょうね。


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