見出し画像

「身近な謎にほっこりアプローチ~『司書子さんとタンテイさん ~木苺はわたしと犬のもの~』~」【YA84】

『司書子さんとタンテイさん ~木苺はわたしと犬のもの~』 
冬木 洋子 著 (マイナビ出版)
                           2018.2.3読了

この本は、いわゆるライトノベル(略してラノベ)のジャンルには入ると思うのですが、異世界&ファンタジー、もしくは切ない恋愛ものなどの王道ラノベとは一線を画していると思います。
作者が元図書館司書ということで、このような作風に納得です。

司書子ししょこさん…司 蕭子(つかさ しょうこ)のことを本名も知らずに、図書館司書のお姉さんという意味でそう呼んでいる近所の男性・反田たんだは、いつも散歩の途中で蕭子の家の前に立ち寄ります。
そして、庭になっている木苺を毎回一粒ずつつまんでそのまま行ってしまうのです。
 
この木苺には蕭子と亡くなった彼女の祖母の思い出が詰まった大事なものなのに、いつも平気でつまんでいく反田のことを訝しんでいました。しかし彼のことは、のちに蕭子が勤務する図書館の常連の利用者だと気づきます。
 
それはある日のこと、図書館の利用者である小学生の女の子が失くした髪飾りを、この反田とともにいっしょに探すことになったのがきっかけで、いろいろと会話をするようになったからです。
 
かなりな大捕物のようなことになる髪飾りの顛末から、次第に出会うことが多くなったこのふたり。
それからというもの、他の謎解きじみたいろんなことに関わっていくことになるのです。
 
各章の合間に蕭子によるブックレビュー、特に私が児童書担当なせいか(読んだ当時、勤務していた図書館での担当)、児童書多めのレビューが多いのがうれしいです。(もしかしたら、作者もそうなのかな?)
 
そんな本の楽しみ方もありますが、蕭子のほんわかした語り口と世間ずれしていない…というか、浮世離れした感があるところと反田の人の良さが、いい相性の展開が予想されるふたりの行く末はいかに!

どうしても仕事柄、“図書館”とか“司書”という文言がついたタイトルに目がなく、ついつい吸い寄せられるようにそのような本を手に取る傾向があるのは、司書アルアルかもしれないですね。
(他の司書さんがどうかは知らないけど、勝手にそう思っている…)

これは小説に限らず、漫画でも言えることなのですが、“読書”とか“本”などの文言がタイトルについているのも同じです。
 

話はすこし変わりますが、「〇〇とはどういうことか?」とか、「※※の発祥はいつ、どこでなのか?」とか、「あのテレビ番組で言っていたことが気になって…あれは本当?」などのあらゆる疑問って、日常ふと出てくることがあると思います。
 
そのような簡単なものから難解なものまで、あらゆる疑問に対して図書館の司書に相談して解決できるサービスがあります。

“レファレンスサービス”という名前のコーナーが、ほとんどの図書館カウンターにあると思いますが、まさにそこがさまざまな疑問に応えてくれるところです。
 
その図書館に所蔵している書籍や辞書、各種事典、時には古文書や郷土資料にいたるまで(場合によっては他館の蔵書を借りるという手段を講じることもあります)のあらゆる資料を提供して答えを探すお手伝いをします。

しかしながら、それは決して完全なる答えをお教えするのが目的ではありません。
 
利用者が調べる意欲や学ぶ喜び、自ら答えを見つけ出した時の安堵感やスッキリ感を阻害するものではありません。
 
あくまでも、正解へ導くためのお手伝いをする役割ですので、「この本に載っているかもしれませんよ」とか「この辞書にこういう文献に載っているということが書かれていますよ」という情報を提供しています。
 
ですから調べる疑問の答えは、確たる証拠に基づくものとなりますので大変安心できるものです。
皆様も、何か自分では解決できない疑問がありましたら、何でもいいのです、一度図書館でお尋ねになってみてはいかがでしょうか。
 
今ではネットでも簡単に調べることができますが、ネット情報って中には根拠や証拠が怪しいものもあり、間違った知識を身に着けてしまう可能性もあります。
それがフェイクと言われる偽情報を世間一般に広めてしまう恐れもありますから、気を付けたいところですね。
 
と、多少横道にそれてしまいましたが、そのようなレファレンスをテーマにした小説なども案外多く出ています。

図書館にまつわる物語って、今回ご紹介した本のように多少ミステリーっぽいけれどほっこりするものが多いのですが、中には本格的なミステリー仕立てになっているものもあり、本好きの方もそれほどではない方も楽しめる物語があります。
図書館、書店でそういう本を見かけたら、ぜひ手にとってみて下さい。
図書館や本のうんちくなどが知ることができて、新しい知識の扉が開くかもしれませんね。


 

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,685件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?