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飲食店を完全キャッシュレス化させてみた

レジに様々な支払い方法を案内するシールが貼られているお店が増えています。みなさんも、現金を使うシーンが年々減ってきているのではないでしょうか。キャッシュレス決済の市場はまさに戦国時代。各社、ユーザーを増やすためのキャンペーンなど枚挙にいとまがないです。個人的にはポイントとかキャッシュバックがどうとかそんなに興味はなく、ただ便利だから使っています。カード1枚あれば出かけられるし、Apple Watchをかざすだけで何でも買えてしまうのは一度覚えたらやめられないです。

世の中のキャッシュレス化が進む一方、日本はまだまだ現金主義である。

日本のキャッシュレス利用率は20%程度。アメリカは50%、シンガポールや中国は60%、韓国は95%を超えているそうです。まだまだ日本は現金の取り扱いから抜け出せずにいます。特に飲食店は現金主義の筆頭ではないでしょうか。最近ではキャッシュレス対応している店も増えていますが、それでもまだまだレジカウンターでは現金でやりとりしている場面を多く見ます。

僕はもっとキャッシュレス化した方が良いと思っています。小銭をジャラジャラ探したり、割り勘するために両替するなんて非効率なことはすぐにやめるべきです。そこで、完全キャッシュレス化した肉汁水餃子 餃包 六本木交差点の事例を紹介したいと思います。

なぜ『完全キャッシュレス』にしたのか

大前提として、テクノロジーの進化に伴い今後も必ずキャッシュレス化は進みます。そのための様々なサービスは誕生するだろうし、現金を使わなくなるユーザーも増えていきます。買い物や公共料金の支払いはもちろん、子供のお小遣いもキャッシュレスに変わっていきます。そんな未来は見えているのに日本のキャッシュレスはなかなか進んでいません。だから僕は、

『だったら、うちが先陣きってやるべきじゃないか』

と思いました。もちろんそれだけが理由ではないのですが、根源にはそんな想いがあります。だから、これを機に完全キャッシュレスを進める店舗が増えたら嬉しいです。ポイントは『現金を一切扱わない』ことです。なぜなら、現金を扱うと『現金管理コスト』が発生します。詳しくは後述しますが、レジ金はもちろん、経費用の小口現金も全て廃止すると効果絶大。現金の呪縛から完全に解き放たれた時の感覚は、限界まで挑戦したサウナ後の水風呂に匹敵する開放感です。

現金を管理するには様々なコストがかかります。一般的に、現金管理コストは売上に対し1.5%ほどになると言われています。100万円売ってたら15,000円くらい負担するイメージです。「それならクレジットカードの手数料の方が高いじゃないか」と思われるかもしれませんが、その他の付随する業務への影響も含めると十分検討できると感じています。それに現金管理とは、人が本来やるべき『付加価値』の高い仕事じゃないことは確かです。

主なコストは以下のような感じです。

両替の手間や手数料

釣り銭用に小銭を両替したり、毎日の売上を銀行に入金したりする作業はかなりの手間と時間を要します。ATMで入金している時に、札が汚れていたり破れていたりして、機械が読み取ってくれない時には本当にイライラしますよね。

ちょっとでも両替をサボると、週末に100円玉が無くなってスタッフみんなの財布から両替したり、近くのお店に「すいません小銭が無くなっちゃって両替できませんか」とお願いしてまわるハメになります。

金庫やドロアなどの設備やスペース

現金を保管するためには、ある程度厳重さが必要です。自分1人だけででやってる個人店ならオーナーのバッグに入れて持ち歩けばいいですが、他にスタッフがいたり、防犯のことも考えると金庫が必要になります。当然、1円玉から5千円札まで取り揃えておく必要があり、金額が合ってるどうかのチェックも必要となります。ただでさえ少ない店舗スペースに、金庫やドロアを設置しなければならないのは小さい店舗のオーナーとしては痛いですよね。

教育の手間

一番コストがかかるのは、現金もキャッシュレスも両方対応することだ。現金対応のマニュアルとキャッシュレス対応のマニュアル両方が必要になり、かなり複雑で教育には一定の時間が必要だ。「1万円入りまーす」を全員に必ず言わせるようにするだけでも大変だ。

現金過不足

お金はなぜか無くなります。お釣りを間違えて渡しているのか、風でどこかに飛んだのか、頂く金額がそもそも間違っていたのか、それ以外の理由か。僕は15年近く店舗運営をしてきたが、『1ヶ月間毎日過不足0』という記録を見たことがありません。また、現金が無くなるコストよりも、「もしかしてあの人か?」と無意識にスタッフを疑ったり、監視カメラの映像を確認したりするのも大きなコストとなります。

金額がズレないように毎日何回も現金チェックをします。チェックしたことのチェックもします。そのチェックがちゃんとされているかのチェックもします。現金はまさにチェック地獄です。

このように現金には様々な管理コストがかかってしまいます。それを無くしたかったのも大きな理由の1つです。

デメリット

デメリットだけを紹介してもしょうがないので、その対処方法や改善プランなども挙げていこうと思います。

チャンスロスが発生する可能性がある

キャッシュレスに一切対応してないお客さんは利用ができない。実際の計測では、平均で1日0.5組が利用できていません。六本木という都心なのでキャッシュレス利用率は高いエリアですが、一定数はチャンスロスが発生する可能性がある。田舎や高齢者の多い場所ではさらに増えると思います。

対処方法として、キャッシュレス決済の種類を多く持つと良いです。クレジットカードであればVISA、MasterCard、JCB、アメックス、DCなど各社取り扱うだけでも多くの利用者をカバーできます。その他にもPayPayやLINE Pay、交通系、タッチ系、キャリア払いなど揃えておけば、全部持っていないという人はかなり減ります。

また、現金が使えないことをポジティブにお客さんに伝えることも重要です。「なんか面倒臭そうだからやめとくわ」となってしまっては本末転倒になってしまいますので、「せっかくの機会だから今からPayPay始めましょう!」と利用者を地道に増やしていくのもいいかもしれません。

割り勘会計ができない

3人で9,000円の会計だったとして、1人3,000円ずつレジに出して会計ということは出来ません。1人がまとめて支払っていただく必要があります。少額ならそんなに問題ありませんが、例えば会計が10万以上する宴会とかは注意が必要です。カードの限度額や電子マネー残金が足りないというケースもあり得ます。

対処方法は、事前に現金が使えないことを伝えておくことが重要です。PayPayやLINE Payなら簡単に友達に送金もできるので割り勘シーンではかなり活躍します。

みんなから会費をLINE Payでもらっておいて、まとめて支払う人はポイントやキャッシュバックも付くので得をします。お金のやりとりにはいろんな方法がある事を、こちらからお客さんに提案すると良いです。

・手数料が高い

クレジットカードは概ね3%前後の手数料がかかります。店側からするとこれは痛いですよね。料率はカード会社やキャッシュレス事業者によっても異なりますが、それでも店の負担になることに変わりありません。

ただ、見方を変えれば手数料分くらい回収してしまえばいいんです。現金を扱わなければ現金管理コストは無くなります。店側も備品や公共料金、仕入れなどの支払いをカード払いにすれば、ポイントが付くので得をします。現金管理しない分の浮いた時間で、ドリンクのお代わりを1杯もらえれば手数料分をまかなえるかもしれません。管理者は、手の空いた時間でさらに付加価値の高い仕事ができます。大事なのはどのように手数料を回収するか計画することです。

また、手数料の低いもしくはかからない決済方法を勧めるのも良いです。例えばPayPayなら2021年9月30日まで決済手数料は0円らしいです。さらにユーザーは10%還元があったり、今月はペイペイジャンボとして抽選で全額キャッシュバックなどもやっているようです。僕も目の前で12,000の買い物がタダになったところを見た事があります。

・入金までにタイムラグがある

現金の最大のメリットは即入金できることです。支払いサイトが長過ぎると入金までに資金がショートする可能性もあります。これに関しては、キャッシュレス事業者によって支払いスケジュールがかなり異なるようなので、いろいろ比較検討してみると良いです。早いところは翌日入金もあります。経営が安定しているところはあまり問題ないかもしれませんが、多くの飲食店はこのご時世で不安も多いのではないでしょうか。収支に関しては慎重に検討していただければと思います。

最後に

実際に運営してみて、多くのお客さんから「キャッシュレスいいよね」「分かってるね」と言って頂けています。想像以上にお客さんはキャッシュレス対応できている印象です。当店をきっかけにPayPayやLINE Payデビューをする人も多いです。

今後は『会計業務そのものを無くせないか?』と模索をしています。商品だけで差別化するのが難しくなってきた現代で、飲食店の価値は『ヒト』であると思っています。その『ヒト』の付加価値を最大化するためにも、誰がやっても変わらない作業的なことはどんどんテクノロジーの力を借りていきましょう。『ヒト』と『システム』が今の僕の関心ごとです。

おしまい。

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