見出し画像

自作本ができるまで⑤ 印刷


印刷前

  • 以前決めたこと:テキストはリソグラフ。カラーはレーザー。

    リソグラフ印刷:1ページごとに、版(マスター)が作られる。インク代より、版が高いので、多く印刷した方が単価が安くなる。

    レーザー印刷:インクが高い。毎冊ごとに一冊分の料金が増える。

    元々、一冊ならニュー・カラーでレーザー印刷できたが、作る部数が増えるにつれ、そしてそこのレーザー印刷機は時間がかかるので、他の所を探す必要があった。

    難しい点
    - ネット印刷と印刷所は自分の紙を持ち込みできる場所が少ない。
    - ネット印刷は折った状態で納品する場合が多い。
    - 折ったものをリソグラフに通すのは難しい。

    その時、リソグラフを使わないも一つの選択肢だったが、どうしてもニュー・カラーで印刷したかった。それで、選んだ機械抄き和紙を諦めてもよかった。

    加藤さん(その時は名古屋で展示をしていた)と中川さんは、夜中3時まで印刷方法を探してくださった。(本当にありがとうございました!!)中川さんの友人の紹介で、紙を持ち込める印刷所を見つけていた。

    レーザーの色、速度、インクの値段は機械によって大幅異なる。

レーザー印刷

印刷所でまだ面付け… 中川さんがいると、心強い。

コンビニのマルチコピー機より背が高いレーザープリンター。この画面を見た時は、どきどきどきどき。何年も重ねた冒険が印刷されるなんて。

一冊目ができた!あれ?暖かい写真は少しグレイになった。ニュー・カラーで試し印刷の色と全く違う…

「黄色。この写真が黄色っぽい……」

黄色の沼に落ちてしまった。一冊目の色を確認してと言われたが、調整する時間すらなかった。今回の印刷はせっかく予約できて、中川さんも仕事上がりの後に助けてもらい、月曜日がリソグラフ印刷。私の都合だけではなく、多くの人が関わってくる。理想の色ではなかったが、進むしかなかった。

気が抜けながら、一瞬笑った。昨日は30kgも持てるスーツケースを使おうとしていたが、現実的に「いっぱい紙」はバックパックにも入れられる。

その日、中川さんと別れて、紙を抱えて銀座線のメトロに向かった時に、気が沈み、街の音が聴こえなくなり、涙がぽろぽろ落ちていた。

今の感情を記録した方が良いと、和紙職人・千田さんが言ったことを思い出して、電車で書いたもの:

「解像度と色は想像と著しく離れている。レイアウトに、この本に、全てをささげたが、結果、思ったクォリティと違う。次から次へと。失敗の重なり。ニュー・カラーの印刷機は、色の相性が優れていた。がっかり。表紙はまだチャンスがあって、何かできる。が、すでに印刷されたら、もう終わりだ。見たくない。本を開けたくない。誰にも見せたくない。ほこりも持たない。超わくわくしていたのに、、今これだけやっている。全てのエネルギーを注いでいるのに、一冊目が出た時に、止めた方がよかった。時間がない。写真はぼやけていた」

家に戻り、玄関で紙を抱いて、腫れた目で木のようにじっと立っていた。

「どうしたの?」写真家のハウスメートに聞かれた。

「…」

「見せて」、紙を手に取って「よく印刷できているよ。高品質の印刷だよ」

「気分よくさせてくれるだけでしょう」

「いや、あなたの感情どうでもいい。本当のことを言っているだけ」

「…。色が違う。写真もぼやけている。ファイルを変換した時に私は間違えたと思う」

「これが普通だよ。パソコンの画面で見えた写真と印刷された写真と比べてはいけない!」

「おぉ?」

翌朝(土曜日)
「これは超イエロー」がいまだに脳海に反復し続けたところ、「これはイエローじゃない」という穐吉さんの言葉が浮かんできた。あ!偶々、彼女の写真が超黄色になって、まさに代表作の『ロング・イエロー・ロード』に当てはまる。なんと!

がっかりする時間がない。日本語と英語の文章を直さないと、はじめたものを完成させないといけない。

朝に、リソグラフのマスター(版)が切れた。明後日に印刷できないかもしれないというメッセージがきた。夜に分かったのは、月曜日午前中、京都からリソグラフのマスターが届くみたい。そして、加藤さんから古いレイアウトに赤字をいただいた(ありがとうございます)。新しいレイアウトと前のレイアウトとほぼ全く違うので、誤字はどこだ〜い。

日曜日の朝に、ハウスメイトが「前書きはまだ磨いていないじゃん。完璧でないと印刷しない方がいい。明日の印刷を延期できないの?同時に、5人が話しているみたい」

「できない!!明日印刷!」彼が毎行ごとに止めて、極めて戸惑っている顔をしていた。それを気になって、何時間も前書きを修正した。英語を変えたら、日本語も変えないといけない……

お昼は、いつもご飯を作ってくれる友達とそばを食べたら、彼女が「全てが初めて、完璧になるわけがない。完成させることが大事。すごい所で印刷と製本をしているでしょう。プロセスを楽しんで」と言った。

前書き、レイアウト、文章。何を優先すべきか?全てが大事だが。 

リソグラフ印刷当日

朝6時
まだ時間があると思って、穐吉さんと鈴木さんの英語をチェックしていた。そして、もっと思い出を入れていた。あ、日本語数字のフォントはまだ変えていない!!そして、直した英文をGoogle Docからレイアウトに改めて流し込んだ方がミスを避けられると思ったら、アルバム名のイタリックが消えてしまった……

駅からニュー・カラーまで歩いたとき、気づいたことは、もっと入れるより、既にあるものを磨くべきだ。しかし全てが遅すぎる。

ニュー・カラーに着いたら、今日届いたマスターが使えない。今日は印刷できないかも?

(やーた!直す時間を稼いだ!)

20分後、今日は印刷できるかも。今から、加藤さんが車で横浜から都内まで取りに行く。

(あああ、時間がない!)

加藤さんが戻った時、まだ修正が終わらなかった。もうこれ以上お待たせすることができない。そろそろ面付けしないと。

皆さんを何時間もお待たせしてしまい、起こってしまった後に、深刻さに気づいた。失格だ。

リソグラフの面付けの後
レーザー印刷の時、白紙でも印刷機に通すと料金がカウントされるため、両面が白紙になるページを取り出した。ページ番号が2回印刷されないように、リソグラフ面付けのレイアウトに、すでに印刷された番号を白い正方形で被せる。そして、取り出した白紙を正しい順番に入れる。

レーザーは一冊分(1〜56ページ)の順番で印刷、9冊分は30分以内にできた。リソグラフの場合は、1ページ目を9回印刷してから、2ページ目に進む。なので印刷前に、同じページを纏める作業。A3の面付けPDFは合計56ページ。この日は、片面(和紙のつるつる面)の28枚 x 9冊分 = 252ページを印刷して、5時間かかった。印刷した物は乾かしていないので、ざらざら面は翌日に印刷する。

リソグラフ印刷スタート!

最初は普通のA3用紙を2枚印刷。1枚のA3用紙(テキストのみ)を取って、レーザーで印刷された本番の紙(写真のみ)に被せて、向きを確認する。そして、光に透かして見て、2枚の紙の真ん中の黒線を見ながら、リソグラフの印刷機に上下左右の位置をミリ単位で調整する。0.1mm単位も微調整できる。

心配する場合、もう一度A3のコピー用紙で印刷してから、1枚目の本番の紙で印刷する。その紙を改めて光に当てて、表と裏の線を見る。もう少し微調整したいなら、2枚目の本番の紙で刷ってみる。OKであれば、残りの7枚を同じ設定でいっぺんに印刷する。

ページ数の場所が統一していない理由:レーザーは加熱があるので、紙が伸びる。

印刷中、自分のミスを見つけて、指でこすっても取れない。印刷されたら、もうコマンドZができない。印刷の時はさらにミスが起こらないように集中したから、考えすぎないようにした。

ニュー・カラーのエレベーターを降りた後、中川さんに「本は色んな人が一緒に作ることだから、今回は全て自分でこれまでできたのはすごいよ」という優しい言葉をいただいても、傷だらけの心は痛み続けた。

つるつる面は奇数。ざらざら面は偶数。そうすると、半分のデータはまだ直すことができる?!よ〜し。

翌日に偶数のリソグラフを印刷する

17時まで、半分直したファイルを初めて自分で面付け。17時にできていない場合、昨日のファイルで印刷する。

面付けの時間を確保したが、A4の面付けの時、エラーが出続けていた。もう、出発しないと。電車、歩きながらも(危ない〜)試していた。A3に面付けした時に、またエラーが出てきた…

説明もくれない。「^!」ってなんだ?

ニュー・カラーに着いた時、階段に座って、まだ謎のエラーとの戦い。

やっと面付けができた!確認した時、なぜか英文はこのようになった。

17:15
「今日印刷する半分の文章を直すつもりでしたが、確認のために昨日できたファイルと擦り合わせたところ、間違いがありました。これ以上、お待たせることができないので、昨日のデータで印刷します」

「直した方がいいと思うよ。時間があるんで。他の作業もできるから」と加藤さんが言った。

「ありがとうございます……」

そして、もう一回最初から面付けをやり直し。中川さんがいなかったから、どきどきしていた。

印刷翌日
白山駅のPaper Naoで表紙を直すアイディアを受けに行った。その後、近くにあるジャズ喫茶「映画館」を久しぶりに訪ねた。

まずトイレで手を洗う。手が濡れたまま出たところ、「知らない人が多いけど、実はエアー・タオルがあるんですよ」とマスターの吉田さんに言われ、私は戻ってそれを使った。

「それは自作。あるいは、失敗ですね」

わぁぁ。ちょうど、今私の気持ちだ。心に刺さった。「何で作られたんですか?」

「掃除機のモーターを2台、ヘアドライヤーを1台。光センサー」

そして、もう一回、『悲情城市』をおすすめしてくれた。

次のチャプター:製本


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?