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青春の後ろ姿#83 〜20代は、清志郎と、バイクと、文学以外に何もありませんでした〜 たったひとりの世の中

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 鈴木一雄先生『たったひとりの世の中』は平安期の女流日記文学について考察したものです。
 古文単語で「世」、「世の中」は、「この世」「世間」といったいった現代語と変わらない意味の他に、「男女の仲」、「夫婦の仲」という意味があります。「世」、「世の中」が、この意味で使われる時は主に女性によって書かれた時です。
 なぜかというと、平安期の女性貴族は、生涯、外を自由気ままに歩く機会はなく、外の世界を知る手立ては女房たちから聴く物語や、夜な夜なやってくる男性貴族たちの夜伽ぐらいだっただからそうです。
 つまり、自分のところを訪れる恋人、夫は、当時の平安貴族の女性にとって世界の全てだった、だから「世」、「世の中」には「男女の仲」、「夫婦の仲」という意味がある、ということを、大学院の頃、鈴木一雄先生の授業で聴きました。
 その元となる話がこの本です。
 ひとつの古文単語に息づく哀しみ、せつなさのようなものを感じました。言葉って深いなあと思えた本です。

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