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青春の後ろ姿のその先55 〜半島を出よ〜

 『半島を出よ』は、はじめに単行本で出た時にすぐに読んで、文庫が出た時にもう一度読み返しました。日本の福岡を占拠する方法や、おたくたちが展開する作戦など、発想が奇想天外ですらあって、フィクションならではの楽しさに満ちています。一方で、危機感がなく決断力がない政府の対応や、市街地の占拠後の攻防の様子がシミュレーションされていてリアルさも感じます。
 三年寝太郎の話のように、共同体で労働力にならない無用とされる者が、トリックスターとして共同体の存続に関わる危機から救うという話は、古来から数多くあります。それは、閉塞感に満たされた共同体の内部の人たちの変化への期待の象徴なのか、周縁の者たちへの共同体的な優しさの表れなのか、それともことわざのように圧倒的な経験知に基づいた教訓なのか、そういうことを考え始めてしまってまた楽しくなります。でもこの小説で一番好きなところはヤドクガエルが出てくるところだったりします。
 

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