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青春の後ろ姿のその先49 〜箴言と考察〜

 『ラ・ロシュフコー箴言集』よりずっと前に出版された訳本です。古い訳の方が好きだと思ってきましたが、なんとこの役もまた、内藤濯でした。名訳をする方なんですね。

 『箴言と考察』は、もちろんラ・ロシュフコオです。この本を知ったきっかけは、中学生の頃、田中健が主演する学園もののドラマの中で、この本と、その中の箴言が紹介されたのがきっかけです。その箴言があまりにも良くてとっさに『しんげんとこーさつ』とメモして、翌日には本屋さんに行って本を注文して手に入れました。
 その時に感動した箴言はこれです。箴言番号276

相手が目の前にいなくなれば、並なみの恋は冷め、大きな恋は募る。風が吹けば蝋燭が消え、火事が起こるように。

 たしかドラマの中ではもう少し言い換えていたように思います。「好きな人が目の前からいなくなれば、並なみの恋は冷め、並なみならぬ恋は募る。ちょうど風が吹くと蝋燭の炎は消えるが、火事はますます燃えさかるように」正確かに記憶していませんが、こんな感じだったと思います。

 この『箴言と考察』はまもなく絶版となり、『ラ・ロシュフコー箴言集』として翻訳者も翻訳も一新されて改めて出版されました。ところが学校ラ・ロシュフコー箴言集』では、大好きだった同じ箴言が全く違う訳が施されていました。それがこれです。箴言番号276

不在は並の情熱を冷まし、大いなる情熱をつのらせる。ちょうど風が蝋燭を吹き消し、火事をあおり立てるように。

 どちらの訳が良いかとか、どちらが正確な訳だとかはわかりません。でも、中学生の頃に、もし後者の訳がドラマのセリフで使われていたら、私はメモもしなかったし、本屋に注文もしなかった、つまり『箴言と考察』という本やラ・ロシュフコオという人とも出逢うことはなかったと思います。

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