石田想太朗超現実館

カラコルムの山々 石田想太朗超現実館が自宅で開催する記述イベント「オムニバスの夢」より…

石田想太朗超現実館

カラコルムの山々 石田想太朗超現実館が自宅で開催する記述イベント「オムニバスの夢」より掲載。

最近の記事

現実エッセイ #5 青山学院大学4年後期開始編

 大学4年後期、ついに学生生活最後のタームが始まった!1年次からコツコツと、4年をかけてちょうど均等になるように単位を取り続けている僕には、まだまだ取らなければいけない単位が残っている。とても計画的で、学びに偏りのない素晴らしい計画性なのだが、やはりまだ週3回大学に行かなければいけないしんどさはある。しかも、青学には珍しい、シュルレアリスム研究を行う面白そうな授業がどれも1限で、これまたツラい。  ただ、ノートをカバンに入れて大学に向かう日々は楽しい。人につい話したくなるよ

    • 現実エッセイ 番外編 トーキョーミッドサマー2024

       1秒1秒をあんなに噛み締めたのは久しぶりだった。ゆっくりと過ぎてゆく時間。満員のベースメントバーに僕の言葉とカラコルムの音楽が満ちていくのを感じた。僕は昨夜、ストーリーテラーであった。自分が目指す、音楽と物語のちょうど間にいる存在にはじめて成れた実感があったのだ。それは、ひとつひとつの小さな言葉を用いて大きな物語を紡いでいく感覚。そしてその根源にある感情そのものを伝える音楽が、物語世界を立体的に、リアルにしていった。  僕はあくまで厳格なストーリーテラーとして、昨日のベー

      • 超現実エッセイ #4 夏の魔物編

        残暑に熱せられた川崎の埋立地。あの夜、あの場所で大量の鰹節が踊っているのを、僕は目撃した。 何ヶ月か前、友人が僕に言った。 今年の夏、あの地に魔物が集まる。 それも言葉と音を巧みに操る、恐ろしい魔物たちだ、と。 例えば、鬼、般若。奇妙な歌うたい。人間が取り憑いた椅子の三脚組や、ドラムを叩く猫と林檎のミクスチャー生物。 なるほど、わかった友人。だがなんだ。この鰹節の群れは。聞いていないぞ。 知らない、知らない。 我々はもしかしたら、魔物巡りを経て、深淵に辿り着いてしま

        • 現実エッセイ #4 夏の魔物編

           僕は中学3年生の時、hiphopという音楽に出会った。最初に食らったのはRHYMESTERだった。K.U.F.UのMummy-D氏の渋い日本語に、15歳ながら痺れた学校の帰り道を今でも覚えている。  RHYMESTERを入り口として、あっという間に日本語ラップにハマった。MSC、ソウスク、スチャダラ、ZORN、PUNPEE、Jin Dogg...…しかし、まだ当時は高校生だったこともあり、ライブには行ったことがなかった。そんな僕を見兼ねた友人に、あるフェスに誘われた。夏の魔

        現実エッセイ #5 青山学院大学4年後期開始編

          超現実エッセイ #3 就寝前

           超現実に突入した僕の就寝前。もはや理にかなった思考ができる状態ではない。今日一日で出会った全ての経験を無闇に鍋に入れたごった煮のような思考。支離滅裂で即興的で、相入れない取り合わせの風景が連続してゆく。  果たしてここで呟かれる僕の言葉が作る世界と、このあと僕が見るであろう夢の世界は、一体何が違うのだろうか。 ※これは僕が就寝前に行った実験的な試み。ベッドに入ってから寝てしまうまで、止まらず実際に喋り続け、それをを文字起こしし、加筆修正したものである。 塚地武雅がぐら

          超現実エッセイ #3 就寝前

          現実エッセイ #3 就寝前

           僕が1日を終えて布団に潜るのはいつも深夜1時半くらい。お風呂から上がったばかりのまだ濡れた髪をタオルで乾かしながら帰りの電車の時点でもう死んでしまっていたiphoneを充電器に繋ぎ、僕はベッドに寝転がった。 ※これは僕が就寝前に行った実験的な試み。ベッドに入ってから寝てしまうまで、止まらず実際に喋り続け、それをを文字起こしし、加筆修正したものである。  今日の制作は面白いほどうまくいったな。やはり曲を書かなきゃという使命感で机に向かう時より、今自分が考えていること、見え

          現実エッセイ #3 就寝前

          超現実エッセイ #2 渋谷にて

           小田急線から井の頭線へと乗り継ぎ、僕は渋谷に降り立った。ここはスクランブル交差点。今日もMAGNET(109メンズ館)のオーロラビジョンにはビートルズの『A Hard Day's Night』の最初のコードだけがループで流れ続けている。その不可解なコードが街のサウンドスケープを支配し、人々の心をぼんやりとした不安に陥れていた。  すると、同じビジョンでカラコルムの山々の『大仏ビーム』のMVが流れ始めた。山間から顔を出す大仏の第3の目から、緑色のビームが放たれる映像。巨大物

          超現実エッセイ #2 渋谷にて

          現実エッセイ #2 渋谷にて

           小田急線から井の頭線へと乗り継ぎ、僕は渋谷に降り立った。ここはスクランブル交差点。今日もMAGNET(109メンズ館)のオーロラビジョンでは三千里薬局のCMが流れ、その愉快なメロディーが街のサウンドスケープを支配している。  と思えば同じビジョンで、フジロック・フェスティバルの若手オーディション、ルーキー・ア・ゴーゴーの告知映像が流れはじめた。去年のルーキーステージに出演した15組の断片的な映像が流れる。その中で『カラコルムの山々』の演奏も紹介されていた。僕は初めて渋谷の

          現実エッセイ #2 渋谷にて

          超現実エッセイ #1 生田駅ロータリーから改札まで

          バスを降りる頃には、もう雨は止んでいた。ここは生田駅ロータリー。とはいえど、駅から隔離された場所。昔はもっと駅に近かったはずだが、10年くらいの月日をかけて少しずつ追いやられ、移動し、今では人っ子一人見ることはできない。  今日もここでバスを降りたのは僕一人だけだった。駅の反対側に建物は何もなく、地平線までまっさらに見通すことができる。4秒に一回くらいのペースで、大きな空をスキージャンパーが流れ星のように横切っている。まるで砂漠のような生命を感じない大地には、着地に失敗したス

          超現実エッセイ #1 生田駅ロータリーから改札まで

          現実エッセイ #1 生田駅ロータリーから改札まで

           バスを降りる頃には、もう雨は止んでいた。5〜6人くらいの主婦と老人と共にバスを降りた。通勤ラッシュを終えた午前11時の小田急線生田駅ロータリー。春の陽が穏やかに差す。雨でできた水溜まりに反射する太陽が眩しく、ロータリーの真ん中に取ってつけたように生えている木は優しくざわめいていた。  つい3時間前まで会社員、学生が雨傘で凌ぎを削りあっていた場所。時間の経過によるこの極端な雰囲気の差に、なんだか不思議な気持ちになる。そんな時、僕はいつも何時間か前のこの場所の光景をリアルに想

          現実エッセイ #1 生田駅ロータリーから改札まで

          18歳の男がすきやばし次郎で見たもの。

          12時ぴったりに坊主ともショートとも言えない髪の若者が出てきて店に通してくれた。奥から数えて5番目の席に座った。次郎さんはいなくて、息子さんが寿司を握ってくれた。空気は張り詰めていて、高校の部活以来のヒリヒリした緊張感を感じたので、無闇に口を開けなかった。 席に着いて20秒くらいで1貫目のヒラメが出てきた。何よりうまかったのは、シマアジ、イカ、タコ、赤身、こばしら、くるまえび。縞鯵には本当に震えた、足の先まで幸福感で満たされてゆくのを感じた。『幸』とはこれか! 職人の仕事

          18歳の男がすきやばし次郎で見たもの。