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超現実エッセイ #3 就寝前

 超現実に突入した僕の就寝前。もはや理にかなった思考ができる状態ではない。今日一日で出会った全ての経験を無闇に鍋に入れたごった煮のような思考。支離滅裂で即興的で、相入れない取り合わせの風景が連続してゆく。

 果たしてここで呟かれる僕の言葉が作る世界と、このあと僕が見るであろう夢の世界は、一体何が違うのだろうか。


※これは僕が就寝前に行った実験的な試み。ベッドに入ってから寝てしまうまで、止まらず実際に喋り続け、それをを文字起こしし、加筆修正したものである。

塚地武雅がぐらの応援を終えて海に飛び込もうとしています。でも、僕のピントは自然と塚地武雅そのものではなく、足元のカブトムシに合っていますから。黄土色のカブトムシ。地面に潜っていく。カメラをカブトムシの目線に取り付けてみます。気づくとカブトムシが7匹に増えてるってことは、あと6個Go Proを用意しなきゃいけないじゃん。どうやら自分で作らなきゃいけないみたい。だめだ、無理すぎる。じゃあもう家に帰っちゃおうよ。

 早速家に向かいますは、自慢のお気に入りのダンプカー。帰る道はなぜか舗装されていない山道になっていて、地元のスイミングスクールはなぜかリゾート地になっている。なんだかすごく、しゃらくさいねえ。家の近くに着きました。でもなんか普段と雰囲気が違う。パクられたミッキーのように胡散臭いよ。確かに特徴は捉えているけども。僕が何年ここに住んでいると思ってる?

 家の前にはデカすぎるバイク。それは星野源のもの。星野源に話を聞いてみよう。何かがわかるかもしれないよ。坂の下に住んでいる河合さんの家から、革ジャンに画鋲を打った知らないバイク乗りが出てきた。かっこいいとは思えても、自分なら絶対やらないことって、世の中たくさんある。そのバイク乗りが星野源のデカすぎるバイクを盗んだ。星野源悲しそう。「まだ間に合うぞ!」と叫んで走っていく星野源。切り替えがはやいね。
「この続きは次週!」みたいな昭和テレビのテロップが入ったけど。はたして次週っていつなんだろうね。

(リビングで愛犬が鳴く声)

(正常な思考を一瞬取り戻したのか、一度寝返りを打って携帯の画面をタップする音)

そうなんですよね。今日は録音をしながら寝ていますけども、今何喋ってたのかはもうわからないねー。

 あぁ。あれ、マルセイのバターサンドを星形にくり抜かなきゃなのか。積み上がっていくバターサンド。少し冷たくて美味しそうだね。これ以上積むには小さな割れ目にハメていかなきゃいけないってことだ。断層みたいな。その地割れの間で、間っていうか、とても深いところで、小さいキリンが首をぐにゃぐにゃさせてこっちをみている。これ、どうやって東京まで連れて行こう。水槽に入れる?水槽には言葉がたくさん入っているからダメ。全部ひらがなだけどいいのかな。ひょうろく、ひょうろく。ひょうろくがめっちゃいる。ひょうろくだっていつか凧をあげたいはずだもんね。あぁ、ひょうろくが凧になればいいのか。でもめっちゃ高くに揚げちゃったら、それも違うか。ランウェイを歩いた方がいい。アリスのハート騎士の格好とかね。そうだね、これが一番イメージに近いか。他には、何だろう。うーん。

(これ以降、僕が喋ることはなかった。約8時間の長い睡眠に突入したのであった。)


【あとがき】
果たして意味があるのかも分からない、今回の実験的試み。冒頭で夢との差異は一体なんであろうか、と問うたが、体感的に寝ぼけは、夢よりも景色の質感のディティールが細かいことに気づく。登場する人間も、動物も、虫も、何故だか少しグロテスクで、肉感が強い。そして一つの風景は必ず何度も何度もリフレインし、次の場面に行くのに多少時間を要する。頭に浮かんだ奇妙な光景が、なかなか頭を離れてくれないのだ。それゆえにストーリーがうまくつながらず、気づくとその文脈を忘れて突拍子もない方向に進んでしまう。

こんな無意味な発見を書き残して、今回のトリッキーな超現実館を終了する。

次回は初心に立ち帰り、エッセイらしいエッセイを書こうと思っています。

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