見出し画像

1月『隣人』名古屋公演

新年だし何か新しいことを始めてみたくて、今年は公演が終わったらnoteを書いてみることにした。面白さとかは保証出来ません。道端に落ちていたカリントウを口に入れるようなもんだと思って読んでください。

久しぶりの名古屋公演


『隣人』の上演写真

「演劇Showcase!という企画で40分程度の作品を上演していただけませんか?」名古屋市にある昭和文化小劇場に声をかけて頂いたのは22年の夏。名古屋ではバトル形式の演劇イベントが多いが、この企画では競うことなく、多様な三つの作品を陳列すると言うのが企画趣旨のようだった。そういえばここ数年30-40分作品をつくっていなかったし、なにより5年ぶりに名古屋で公演ができると思うとワクワクし、即お引き受けした。

フィジカルシアターをつくりたい

近年の幻灯劇場の作品は、ざっくり言うと、身体表現を使った「フィジカルシアター」/ 歌と芝居が並走する「音楽劇」二つの路線が主軸になっている。(実際はもう少し雑多で、ジャグリング作品作ったり、映像作品作ったり、しっちゃかめっちゃかしている) 
ところが22-23年は『鬱憤』⇨『0番地』⇨『DADA』と、三作品連続音楽劇の上演を予定しており、このままでは音楽劇の劇団だと思われるのかもしれないと焦り始めた。

音楽劇『0番地』

音楽大好きだから大歓迎なんだけど、もっと大好きなフィジカルシアター(身体表現を散りばめた演劇)作品を1年以上つくれていなかったので、これを機に、身体性の高い俳優達とフィジカルシアターのレパートリーを一つ作ってみたいという想いで作品選定を始めた。

なにをやろう誰とやろう

「今後やりたい作品リスト」を漁っていると『隣人』という台本が出てきた。この作品は20歳の頃、『ファントムペインに血は流れるか』と『虎と娘』の間の期間に書いていた戯曲で、上演されずにほったらかされていた。青年が殺人を犯してしまった夜、同時刻殺人を犯した隣人が部屋へ訪ねてくる、というような物語だ。

企画の詳細が固まり始めた10月頃、劇団内で新作の出演者募集を始め、フィジカルシアターに必要な身体能力と、新作立ち上げに必要な好奇心を持っている村上亮太朗、中尾多福、鳩川七海、藤井颯太郎、この四人の俳優と製作に挑むことにした。ただ、この四人、ちょっとバラバラに住んでいるので(京都やら東京やら兵庫やら大阪やら)12月末にWSを行い、1月に入ってから集中制作期間を設けるというスタイルで臨むことにした。

村上亮太朗 / 僕 / 鳩川七海 / 中尾多福

現象から芝居を立ち上げる

12月24日、WSが始まった。
俳優で演出家でもあるリロ・バウアーが「コメディアデラルテに参加した際、即興をしていた俳優達が非常に魅力的だったのに、台本を読み始めた途端その魅力が色褪せてしまった」という話を聞かせてくれたことがある。字面だけを追い続けると、身体や現象が死ぬ。なんで、ひとまず台本はテキトーにざっくりウロ覚えて貰って、身体の状態がどのようになっていれば面白いか、どんな現象が起きていれば面白いかを探っていく。

死体を捨てるシーンや、車のシーン、殺人のシーンなどなどをセリフが曖昧なまま作っていく。死体から喋る死体へ、喋る死体から死体へ。日常的な身体から非日常的な身体への移行について探ってみる。このつくり方はメチャクチャ楽しい!!「見たことはない動きだが、見たら一発で状況が理解できる」というラインを目指して、見立てや動きの流れをあれこれアイディア出ししていくWSが四日続いた。

死体を投げ捨てようとするシーンなどは、この段階でアイディアが出た

年を跨いで、集中制作期間初日。「使わなくてもいい小道具」を買うため、みんなで散歩。「使わなくてもいい小道具」は稽古場でアイディアを出すための道具で、物語に登場しない道具もひとまず買ってみる。縄跳び、滑り止め、赤い毛糸などなど。(中には劇中に登場した道具もあって、観劇された方には何が作中に出てきたかバレると思う)
物語を豊かにする為に、物語に関係ないものを揃えてみると、自然と「あ、この為に買ったんだなぁー」と思えるタイミングが来るはず。辛抱強くそのタイミングを待つ。

年末のWSで出てきた動きを軸に、それぞれのシーンを組み立てていく。この段階でもまだセリフはうろ覚えのままふざけ続けてもらい、無駄なシーンをどんどん増やしていった。
とうとう無駄なシーンを増やしすぎて上演時間がオーバーしたので、無駄なシーンを守るため泣く泣く必要なシーンを削ったりもした。削ったのに稽古してたらふざけて増えてしまう、また必要なセリフ削る。そんな事を繰り返す、激しい修行の日々が続いた。

シーンのアイディアがある程度並べられたら、台本を軸にしてブロッキング(演技中の動線)を作っていく。三回の稽古で通し稽古(最初から最後まで止めない稽古)までたどり着く。最低限、演技の約束事さえ決まってしまえば技術スタッフ陣とのすり合わせが出来る。

通し稽古を終え作品の輪郭を把握したらば、次にテーブル稽古(台本を読み合わせしたり、解釈を話したりする稽古)に取り組む。誰が嘘をついているのか、誰が痩せ我慢し空元気を振り撒いているのか、一つ一つ話し合い、作品の質感を作り込んでいく。まっ!他にも色々あるけれど、そんな感じで稽古場での時間を過ごした。

音と光ありがたや

今作では劇団側に技術スタッフはおらず、企画サイドのスタッフ陣の皆さんに沢山のお力添えとアイディアを頂きました。本当にありがとうございました。

死体を海に投げ込もうとしたあと、亮が無人島の話をする際、ジェフ・バックリィ『Hallelujah』に亮のセリフを被せた。翻訳家を目指していた亮が、通訳するようにセリフを話すという意図の演出でした。死体を積んだ車が疾走するシーンで車内に流れる『Wet Dream』も同様に、歌詞とシチュエーションが共振出来る距離にあることを意識し選曲しました。

僕からの演出オーダーがフヤフヤやったのにも関わらず、舞台監督の岡田保さん、音響の内海豊司さん、照明の今津知也さんお三方が最強すぎて、劇場に到着した時点でオーダーしたことが綺麗に実現されていた。更に面白いアイディアも次々頂けて、本当に皆さんには感謝してもしきれません。

名古屋のお芝居

自分たちの上演も楽しみだったけど、一番楽しみにしてたのは名古屋のカンパニーさん達のお芝居を見られることでした。

鹿目由紀さんとの出会いは2017年。鹿目さんは名古屋学生演劇祭の審査員を務められていて、僕たちは県外招致枠として参加していたのでした。

2017年うりんこ劇場で上演した『56db』
鹿目さんには“壮大な馬鹿”と褒めてもらいました。

鹿目さんは日常会話から面白くて、書かれる本も面白いんだろうなぁと思っていました。いざ上演を拝見してみたら言葉選びが面白くリズミカルで、跳ねるように喋り躍動する俳優の皆さんを見てずっとゲラゲラ笑っていました。
交流会では初演の時の字幕やタブレットの演出について伺い、鹿目さんとあおきりみかんさんは本当に演劇がお好きで、これまで楽しめなかった人/楽しめなかった場所でも楽しめるように演劇の形を変容し、開拓して来られたのだろうなと思いました。カッコいいな、と思いました。

廃墟文芸部は、ずっと前から名前がビンビン届いてくるストロングスタイルのビンビン劇団。僕は個人的にクォータースターコンテストの『モノカキ』位からファンで、斜田章大さんの戯曲なども何作か読んでいたのでした。初めて実地でタフな上演を拝見し「やっぱ演劇は生だよな! いいなぁ!」と、当たり前すぎることを再確認させられました。音の響き、空間の作り方、時間の流れ方。廃墟文芸部をみれば映画でもなくドラマでもなく、演劇が好きになる。そんな魅力を持っていらっしゃる劇団さんでした。

「名古屋」は岸田作家や、日本劇作家協会が出版している優秀新人戯曲集に掲載される劇作家も多く、会話劇の名手がウジャウジャいる恐ろしい土地というのが京都に住む僕のイメージでした。実際共演させて頂いた二団体は面白く、恐ろしい土地であることが分かったわけですが、その面白さの理由が、僕は観客の皆さんにある気がしました。

名古屋の観客の皆さんはリアクションが暖かく、積極的にお芝居を見てくれているのが舞台上まで伝わって来ました。アンケートや終演後の評なども積極的に書いてくれます。この環境が名古屋から次々才能ある作家を輩出している所以なのかもしれないと思いました。

みなさんのお力添えにより『隣人』はとても大切な作品の一つになりました。また、名古屋に呼んで頂けるようorツアー公演でやってこれるようにがんばります!!

またお会いしましょー名古屋!

追記
全国の劇場さん。『隣人』という、とても良い短編のお芝居が出来たのでどこへなりとでも呼んでください!!呼んでください!! 

❤︎スキを押してくれると「心の底からありがとう」というメッセージが出ます。他にもいろんな場所からありがとうが出る可能性があります。 サポートしていただいたお金は僕の生活や創作を潤します。なぜか最近手がカサカサなのでハンドクリームを買います。ありがとうございます