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コンビニで助けを求めてきたおばあちゃんに逆にありがとうと言いたいこと。(前編)


それは仕事の帰りのことです。

コンビニに立ち寄り、電子マネーのチャージをしようとしていました。

おっとその前に何か飲みもの買おうとしています。するとコンビニのATMの前ですいませんという声が聞こえました。

見るとおばあちゃんが私に声をかけていたのです。

店員さんの仕事だと思い、私は店員さんを呼びます。

「すいません。店員さん!」

反応がありませんでした。

仕方がないので私はおばあちゃんの声に耳を傾けることにしました。

するとタクシーを呼んだがお金がなくておろせなくて困っているとのことでした。

私は高齢者にスマートフォンの操作方法を教える仕事をしています。

まだ教えるのがうまくはないという自覚があるのでこれも勉強だと思って、おばあちゃんにATMの操作方法を教えるようにチャレンジしてみます。

「お兄ちゃん、私の代わりにやって!」

むげに断るとなんだかバチが当たりそうです。

少し照れくさい気持ちでATMを見つめました。

「!」画面には操作開始というボタンがあります。

まるで私はゲームをやるかのような気分になっていました。

つまりATMにはまるでスクリーンセーバーがかかっているようです。

はじめからキャッシュカードを入れても反応がないように一瞬錯覚しました。

おばあちゃんの代わりにそうたいは操作開始ボタンを押します。

「!!」画面には銀行だのゆうちょ銀行だの信用金庫だの金融機関の名前が並んでいます。

幸いにしておばあちゃんのキャッシュカードは地方の銀行でしたので、そうたいは「銀行」を選び、あいうえお順にならんでる銀行の名前をさらに選びます。

銀行名を選ぶと時間帯別に手数料の案内が読めるようになっていました。

あとは任せるとばかりにその場を立ち去ってそうたいは強炭酸水を選んでお会計に向かいました。

タクシーはすでに待っていておばあちゃんはタクシーの運転手に事情を話している様子でした。

少し私はおばあちゃんの顔を見つめて大丈夫だったのかとばかりにタクシーの発車を見送るつもりです。

なんとその後おばあちゃんはタクシーのドアを開けてそうたいに向かってきました。

なんとういことでしょう。おばあちゃんはそうたいにお金をおろすのを手伝ってくれと再び頼み込んで来たのです。

あれ?さっきは無事におろしたんじゃなくて?とそうたいは怪訝な表情を浮かべます。

おばあちゃんはタクシー料金の分おろさずになぜかタクシーに乗り込み、自分が困ってることを運転手に向かって説明し、運転手もただ困惑するだけだったのでした。

そうたいはここで断ると後で後悔するような気がします。

別にATMの操作ができなくて困ってるおばあちゃんのことを雑に扱う理由はありません。

お年を召しているということはそれだけ実は年下から見たら尊敬すべきことです。

それと私は英会話のCHATにハマってるのでなんだかおばあちゃんが海外で困ってる様子をまるで見てるかのような気持ちになってきました。

例えば見知らぬ土地に行くと、それだけでもかなり心が不安になります。

おばあちゃんは見知らぬ土地に来てさまよってるかのようにそうたいは感じたのです。

情けは人の為ならずと思いそうたいはATMの使い方を直接教えることにしました。

ただ全部肩代わりにするとおばあちゃんも今後困るだろうと思います。

なので残高不足なのか確認してあげることにしました。


「!!!」おばあちゃんは硬貨をおろそうと必死になっています。

さらに暗証番号もうろ覚えでおろし方を忘れたか、それともATMをあまり利用したことがない様子でした。

そうたいはこのATMがお札専用で、硬貨の分まではおろし切れないことを説明し始めます。

「!!!!」お札だけおろせるという説明で残高不足ではないそうでした。

私は180度体をひねり、おばあちゃんの暗証番号には関わらないように意識して回れ右をします。

秘密の4桁の番号は何だった?とかそうたいは暗証番号という専門用語を使わないようにガイドしようとします。

考えてもみるとおばあちゃんがATMに慣れていないことを何か恥ずかしいと思ってるようでした。

とんでもないお話です。

おばあちゃんに分かりにくいATMを作っておきながら、何もおばあちゃんたちの意見を聞かないでおいて何が恥なのでしょうか?

製品の開発者や提供する企業の側の問題です。おばあちゃんに合わせるべきでしょう。

おばあちゃんに偉そうに指図をし、機械に強くないことを何か恥ずかしいと思わせるなにかをそうたいは感じたのです。

別に人件費を惜しまずに機械に強くない人を相手にすることは必ず残ります。

ただそれができる人はごく少数になっていくのは止められない

流れであることはなんとなく体でわかります。

頭で考えると合理化の波に乗り切れない少数派からそれが積み重なることで多数はになろうとする過渡期のようにも感じました。

本題に入りましょう。

そうたいはお金がなくておろせないのなら親か今日はどこだと尋ねるとまったく違うのです。

旦那さんには死に別れ、こどもは別の遠くへ住んでいて呼び出せないといいます。

そうたいはおばあちゃんの背中を眺めています。

そうなんだね。頼れる人がそばにいない不安は分かります。

そうたいも心細くなると見知らぬ土地でよく人に質問してしまう人間だからなのです。

そうたいはATMでおばあちゃんの代わりに操作をしています。

ただ暗証番号だけは教えてもらわないようにこちらから2回めの回れ右をします。

そうたいは「秘密の番号だから誰にも教えてしまったら駄目だよ」とおばあちゃんに諭しました。

おばあちゃんはなんとか4桁の暗証番号は覚えていました。

そこから先はそうたいは残高紹介をしておかんをあるだけお札で引き出してあげました。

随分感謝されたのでしばらく気持ちが高まりました。

さて、そこから何を学ぶかです。

おばあちゃんは機械に強くない。そんなのはわかりそうです。

おばあちゃんが日常的に困ってはいないか?気がかりになります。

よく見るとその口に残ってる歯はわずかでした。

そうたいは少しだけいたたまれなくなります。

何か人肌脱ごうという気になりました。かなり照れくさいですね。

果たしてそうたいが例えばもし80なら80になったでちゃんと無事に過ごせているのかどうかが気がかりでした。

今から高齢者になる覚悟をしても意味はないような気も若干します。

けれども、自分の未来を案じることは決して無駄ではない確信がありました。

そうたいが先に死に、残されたパートナーさんはどうやって将来を過ごすのか余計な世話を焼く世界を想像してみたのです。(後編に続きます)


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