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「組織の発酵」という言葉に辿り着いた「とある企業での新規事業開発プロジェクト」でのエピソード

そもそも、人材育成を生業としている私が
発酵というキーワードにたどり着いたのか?
今日はそんなお話をしてみる。

それは、もう10年近く前になる。
とある飲料メーカーさんでのシリーズ(プロジェクト)型研修。
1年かけて、新商品企画を作っていくプロジェクトだった。

4人✕4チームぐらいで、各班に分かれて毎月ワークショップを実施し、企画や実践、実験を繰り返していくものだ。

集められたチームメンバーは、自主的に意欲的に参加された方もいれば、上司やチームに推されて参加した方もいました。

プロジェクトがスタートした当初、この誰かに推薦されて参加していた方の数名が、明らかに参加意欲が低かった。夜の打ち上げの席では、主催事務局やコンサルタントの方に聞こえないところで、こんな声がだんだん聞こえてきた。「こんなのやっても無駄だよ」「うちの会社は、、、」「あの先生だって何も知らないくせに」

その上、昼間のワークショップを辞めるでもなく、淡々と参加している。。。

私は、立場上こうした声も貴重な声として受け取る事を大事にしてきたが、他の意欲的なメンバーに対する悪影響を心配していた。

ある時、このメンバーで合宿があった。
身体を洗い、浴槽につかって、やや皆のぼせている時だった。
「もう、このプロジェクト辞めた方がいい」「私は降りたい」と、裸の付き合いをしている中で、キッパリ言われてしまった。

私には、プロジェクトを止めるとかメンバー交代をするなど、そんな権限はない。ゴールまで伴走し、成果を出すことがミッションだった。事務局や担当コンサルタントに相談しようかとも一瞬考えた。しかし、そのまま伝えたらならば、もっと強く巻き込む(締め付ける)、尻を叩くという動きが発生し、逆効果になることも想定された。

私は聞き役に徹しようと決めた。

ある時は、打ち上げの3次会、深夜の3時まで話を聞いた。
愚痴を聞くだけでなく、こっちからもツッコミ返した。
「この会社に入ってやりたかったことがあるんでしょ!」
「モノづくりに関われるチャンスじゃないですか?いいんですか?」
(あれ?聞き役に徹してないじゃん!笑)

そんな問いかけが響いたのか、あるいは何か違う作用があったのか、それは分からない。この意欲が低かった数名のメンバーが、我々のワークショップ以外のところで、他のメンバーのサポートをし始めたり、大事な取引先(つながり)や情報を提供したりし始めたのである。

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この変容を見て、私はとても驚いたのである。
あれ?変えようとしても変わらなかったのに、勝手に変わった!

しかも、この当初意欲が低かったメンバーは、最終的に新商品企画にあたっての重要な役割や機能を果たすまでになっていったのである。結果、この意慾が低いメンバーがいたチームは、素晴らしい成果を出すにまで至ったのである。

言い方が悪いのだが、意慾が低かった=”悪玉菌”が、美味しい料理を作り出してくれた!
そんな印象が、強烈に残ったのである。

さらに悪玉菌を、プロジェクトから抹殺(消毒)しなくて良かった。
そうも思えたのである。

この体験以降、研修などでも受講生を見る姿勢が大きく変わった。
本当に意欲もなく、他責で悪態ばかりついている場合は手の打ちようがないこともあるが、「腐りかけている人には、何かヒミツがある!」

本当はやりたいことがあるのに聞いてもらっていない
ちょっとした過去のミスがトラウマになっている
仕事ではなく職場の人間関係がひっかかっている

こんなことが、実は知識やスキルよりも大事なのではないか?

この体験からの気付き
・変えるではなく、変わる
・悪玉菌も、引き出し方次第だ
・組織は殺菌したがるけど、ちょっと待て!

組織にとって、発酵プロセスが大事と感じ始めるきっかけとなったのである


組織発酵学 プロデューサー
Brew株式会社
代表取締役
原 佳弘

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