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衝動の対極にあるもの

先日、こんなツイートをしたら、たくさんの反応があった。

端的に言って、自分でもよくやってきたと思う。

運と、人の助けと、自分の努力が三位一体になってようやく今の生活がある。そのどれが欠けても、今の自分はないわけだけれど、最も大事なのはリスクを取ることを、最終的に自分で選択したこと。

大人が子供に教えるべきこと

リスクを取らずに、何かを変えようとすることは、もはや狂気と同じ。なぜなら、「リスク」とは将来の不確実性の大きさを示す言葉だから。その不確実性には、当然将来が「いいこと」に振れる可能性もあれば、「悪いこと」に振れる可能性もあって、そのどちらかしかないのはリスクがゼロということになるから。結果が決まっているゲームを、誰が見たいと思うだろうか。

でも、不確実性に立ち向かうとき、誰もが恐怖を感じるわけで、その恐怖をコントロールする能力と、必要なリスクを取る勇気を、子供は大人になるまでに身につけなければいけない。

逆を言えば、自分が取り得るリスクを判定し、実際にそのリスクを取ることができない人は「子供」であり、自分がやりたいことを、失敗したときの恐怖を感じた上で、やると選択して、実行した人は「大人」だ。

たとえそれが実らずに、今いる自分の位置が全く自分の求めていたものと違うところだったとしても、自分の人生の舵を握っているという一点においてその人は徹頭徹尾「大人」である。そして「大人」である限り、その人の魂はその人のものだ。

大人が子供に教えなきゃいけないのはそれだけだと思っている。

We try, because we might not win.

じゃぁ、その勇気はどうやって持てばいいのか。私が大きなリスクを取る決断をした時、いつも決断する前から自分がどうしたいかはわかっていた。そのハラの奥底にある細胞全体の集合知のような存在を、便宜的に「衝動」と呼んだ。

衝動は、不確実性に立ち向かう時、無責任に最後に背中を押してくれる。衝動とはなんだろうか。衝動を理解するには、衝動の対極にあるものが何か、と問いを立ててみればよいだろう。

衝動の対極にあるもの

言うまでもなく、それは「金銭的な利益」のことだ。

金銭は、将来の価値に対する交換を保証するもの。10万キロ走った車に修理保証がついていたら、その車を買うべきかどうかに決断が必要ないように、保証があるところに、決断は必要ない。したがって、金銭的見返りには衝動が発生しない。

一見、不自然に聞こえるかもしれない。お金がいいところに就職したい、と思うのは当たり前だし、実際、給料は低いより多い方がいいことの方が多い。

しかし、お金はその性質上、多いか、少ないかでしかないわけで、単なる値だから、衝動に背中を押される必要がないわけだ。どうなるかわからないから怖い、のであって、あなたの価値はいくらです、という命題に同じ怖さはない。だから、金銭的な多寡が発生する選択肢を選択する時に、衝動は必要ない。

お金は大事だよ〜

お金を軽視せよと言っているけではない。お金は身にふりかかる不便を回避する貴重な原資だ。お金は大事だよ。実際に、私の今回の転職も給料が下がるのなら行かなかった可能性もある。でもそれは、最後の決断のところでは既に評価が終わっているのだから、そこにお金由来の「怖さ」を克服するための「衝動」は必要なかった。

給料のいい海外の航空会社はわりとあるし、プロとして同じ仕事をするならより多く稼げた方がいいと考えるのは自然なことだ。でも、だからといってそれだけが転職の判断材料になってしまったら、こんなに面白みのないこともないだろう。

金は大事だ、それは判った上で「金」と「衝動」は疎遠なことなんだと理解することもまた、大事なことじゃないだろうか。

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