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Pilot's note NZ在住Ashの飛行士論

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NZ在住のパイロットAshによる飛行士論です。パイロットの就職、海外への転職、訓練のこと、海外エアラインの運航の舞台裏などを、主に個人的な経験に基づいて事実と意見を織り交ぜ、毎回… もっと読む
自分が訓練生だった時に、こんなレポートがあったらよかったな!と思えるような内容を意識しています。自… もっと詳しく
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いつもAsh のnoteをご覧いただきありがとうございます。メインで「運航」しております有料マガジン「Pilot's note」についておしらせします。 この度、有料マガジンご購入者の方々の利益を守りつつ、より多くの方に私の有料記事を読んでいただくために、有料マガジン「Pilot's note」に格納されている全ての有料記事について、本日ご購入分から「返金可能*」としました。同時に、各記事の価格の改定も行なっています。 ほとんどの記事でちょい値下げしました。 有料記事の

NZからAUS転職して思ったこと

NZとAUSいっしょに働いている人たちの「今日1日ぱぱっと仕事してサクッと帰ろうぜ」という基本的なノリとか、失敗に寛容だけどグレードはきっちりつける訓練カルチャーなど、NZとAUSで似ているところはたくさんある。でも、よくよく考えると私の生活はかなりの部分で大きく変わっている。 家族と離れて暮らしてる エアバス飛ばしてる 高速道路で通勤してる 早朝出勤や深夜帰宅がある 国際線飛んでる 昼休憩がない フライトタイムが長い AUS独自のATCやエアスペースの問題がある まだあ

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正常性バイアスを断ち切るのは簡単ではない、が

本日のネタはこちらになります。 FL120と言われたのに、FL130だとキャプテンに言われた。流されそうになったけれど、踏みとどまって確認したら私の方が合っていた。と言う話。当たり前の話に聞こえるかもしれないが、英語圏で飛んでいると、英語がネイティブの人たち(周りのほとんどがそう)の「英語の間違い」を指摘するのは、とても難しい。今回は踏みとどまれたけど、こういう罠はそこいらじゅうに散らばっている。 正常性バイアスを断ち切るでも、正常性バイアスを断ち切る、と言葉では簡単に言

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PPLからつづく俺の弱点とは

いやほんとにしんどかったよ。 どのレイヤーで話をするかによって異なるんだけど、一番浅いというか、短期的かつ表面的なところでは、前回も書いたジェット機の速度と高度、つまりエナジーマネジメント。 風の強いNZでATR飛ばしてきたのと、よくできている飛行機のおかげで、3000ftから下の操縦にケチがついたことはなく、割と風が強くても(訓練生の間は20ktの横風制限だから、大した風ではないんだけど)ふーん、って感じで毎回降ろしていた。 問題は、3000ftにちゃんと持ってこられ

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ベースはどこがいいかな

今日はこれについて オーストラリアに来てそろそろ半年が経つ。今はメルボルンだけど、うちの会社はベース間の動きが多いので、今のところ移ろうと思えばどこへでも行ける状態。さて。 それぞれのベースの特徴メルボルン 長所 東海岸を中心に短距離路線(=離着陸多い)が多く、面白い 大きな都会で、便利。日本への直行便(QF JAL)。子供の教育機会が充実 短所 忙しい、深夜早朝便、4セクター、馬車馬ベース 家の購入は厳しい。今の場所(高速で20-30分くらい)だと、1億はする。 オー

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ジェット機に100時間乗って感じたプロペラ機との違い

ジェット機のA320に乗っておよそ100時間。 ターボプロップ(プロペラ)機のATRから移って最も難しいと感じた違いは、やっぱり降下プロファイルとスピードの管理(エナジーマネジメント)だった。頭の整理も兼ねてちょっとまとめてみる。 プロップは運用限界高度が25000ftで、運用限界速度(VMO)は250kt。滑走路から降下開始点(TOD)にVNAVが引いた降下プロファイルは基本的にずっと3度のままで、降下開始したらパワーオンでずっとその3度を降りていけるし、巨大なプロペラ

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2023年の暮れに

今年を簡単に振り返る記事を書いた。 年の切り替わりを前に、特別なことは何もしていない。カレンダーの年が切り替わることに、実務的な意味が個人的にほとんどないのは、人生が充実している証拠だと思いたい。 最近の状況タイプレーティング、グラウンドコース、シム、と順調にこなして、路線訓練が始まった。今年1月に始まった転職だから、今年中に飛び始められたのは順調な方だと思う。訓練が忙しかったのはもちろんだが、国をまたいで転居と転職をしたのは非常に大きな変化だった。オーストラリアはNZと

衝動の対極にあるもの

先日、こんなツイートをしたら、たくさんの反応があった。 端的に言って、自分でもよくやってきたと思う。 運と、人の助けと、自分の努力が三位一体になってようやく今の生活がある。そのどれが欠けても、今の自分はないわけだけれど、最も大事なのはリスクを取ることを、最終的に自分で選択したこと。 大人が子供に教えるべきことリスクを取らずに、何かを変えようとすることは、もはや狂気と同じ。なぜなら、「リスク」とは将来の不確実性の大きさを示す言葉だから。その不確実性には、当然将来が「いいこ

NITSブリーフィングを知っていますか

英語が話せるようになりたいというとき、よく聞くのが「仕事の英語より、雑談の英語の方が難しい」という言。確かにそうなんですよね。では、どうして雑談の方が難しいのでしょうか。 それは、話題の背景となる知識や経験、言い回しなどに不慣れで、話されている言葉が英語であっても自分の知っている英語ではないからだといえるでしょう。日本語でも、共通の話題がない人との会話は難しいですよね。 雑談は仲の良い友達を作って共通の話題を持つしかありません。つまり、究極的には英語圏で生活するしかないと

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タイプレーティング終わってAUSに帰ってきました。

エアバスのタイプレーティングを5週間で取って、2週間休みでした。五週間が早いのか遅いのかはよく分かりませんが、だいぶ詰め込んだ内容だったと思います。 シミュレータセッションは全部で11回で、12回目が審査です。やることはほとんど決まっているので「難しい」ことはないのですが、それでもテストはテスト。ナマモノなので全く気は抜けません。 旅客機のタイプレーティングはこれまでに2度(DHC-8とATR72)経験しましたが、今回のA320が最も自他ともに評価の良いタイプレーティング

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バスの運転手になります

実は先日、ATR72で最後の乗務を終えました。 5年間務めた現在の会社を退職して、ある会社に移ることになりました。ベースはメルボルン。そう、今回は会社だけでなく居住国もニュージーランドからオーストラリアへ変則ムーブをカマすことになります。 乗務機種はエアバスA320です。ATRの時もそうだったけれど、CBT(Computer Based Training)の教材は、量が膨大な上に、信じられないほど退屈で、辟易しています。 さて、今はどこにいるかというと、オーストラリアで

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3C's:リスクをとるときのフレームワーク

今回は、リスクのあるオプションを取る判断をする時に使うフレームワークの「3C's」なるものについて書いてみよう。前回の有料版で書いた通り、出典はこちら。 3つのC具体的には、Criticality、Consequence、Control の三つの頭文字のことだ。 Criticality(目的の重要度) そのオプションを取ること、つまりミッションの目的が、どれだけ重要なことかを指す。重要なことであればあるほど、危険を顧みずにそれのオプションを完遂する動機が強くなる。 C

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プロフェッショナルと職人の違い

プロフェッショナル(プロ)とは何か。 個人的には、プロの定義は、職人との違いと対比するとわかりやすいと考える。 プロは、報酬(外的動機)の範囲内で、要求された仕事を満たし、しくじった時のリカバリー方法(会社や組合や保険)確立している組織で働く専門職。つまり、もらった金の分の仕事はきっちりやるけど、それ以上の仕事はしない。自分の責任の範囲を超えた仕事もしない。 一方、職人は、自らの美学(内的動機)によって、ある前提条件のもとで仕事の質を極限まで高めようとする。基本的に、失

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ルールを破ったことはありますか

Behavioral Questionsの中で嫌なものには、「ルールを破ったことはありますか」がある。この質問は、その人の「正直さ(Honesty)」を聞いている質問で、これに「Never」と答えてしまうと、嘘をついているのでは、疑われてしまうことになりかねない。 パイロットだったら「SOPを破った時のことを教えてください」とか。いや、百歩譲ってSOPはもしかしたら今まで一度も破ったことがないかもしれないけれど、おそらく自動車の法定速度を1km/hも超えたことがない人はほと

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