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食の風景「春を告げる朝ごはん」


 ふわりと目が覚めた。昨日まではお布団から抜け出すのが億劫に思っていた部屋の中が、なんだかほんのり暖かい。三月も十日を数えて、急に春が近寄ってきたみたい。


 気持ち良く目覚めた朝は、家事もいつもより捗る。日々、ついつい家事に追われてしまって、忙しない朝ごはんになりがちだったけれど、今朝は久し振りに、好きな器に、好きな物を盛り付けて頂こうかなと思う。
 作り置きのスープには焼き餅を入れよう。それも二つ。このお餅は家族で作ったわが家のお餅。まん丸でふにふにで、焦げ茶の焼き色が食欲をそそる。果物は何が在ったかな。そう、先ずは青森の早生ふじりんご、それからお試しに買ってみた国産のキウイフルーツがあった。後は八朔が少しと、やっぱり苺だ。今日はちょっぴり贅沢をして、三粒盛っちゃおう。うん、とってもいい色合い。サラダにはスナップエンドウ、法蓮草、刺身わかめもまだある。茹で玉子も作り置きしておいて良かったと、冷蔵庫から一個取り出して、半分に割って添える。鮮やかな黄身が青物と共に目に良い演出を与えてくれる。醤油にしようかな、お塩にしようかな。

 いつもはワンプレートにしがちな朝だけれど、今朝は数枚に分けて用意した。どれもお気に入りの一枚だから、一皿ずつ仕上がるごとに、心が楽しくなってくる。こんな小さな日常の変化だけでも、自分を楽しませる事ができた。それが先ず一つ嬉しい。
 そうだった、私の朝に欠かせない一品があったんだ。ナッツと干し葡萄にきな粉と黒胡麻をかけたもの。これを茶色の洋風小鉢へ。朝ナッツ類を食べると体の内側からしゃんとする気がする。ようし、今朝の朝ごはん、出来上がり。

 毎日きちんと用意するのは、知らぬ間に気負いが先に立って無理をしてしまいそう。けれど、こうして、不図気分が乗った日とか、美味しい苺がお買い得に手に入った時とか、青空広がる天気の良い日とかに、いつもより少しだけ、手を掛けてみる。あなたへ届ける積りで、盛り付けてみる。そうすると、自分の事もちゃんと大事にしていると思えたりして、朝ごはんの支度も楽しくなってくる。

 苺の赤、スナップエンドウの緑、玉子の黄色―食卓に並んだ自分の朝食を上から眺めてみる。

「お」

 今朝はまるで、春を告げる朝ごはんみたい。

「いただきます」

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 続けて別の日の朝ごはんも、せっかくだから載せておこう。

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 あなた好みの春はございますか?    

                          おわり

                              

                       文と写真と料理・いち                   

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