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「御先祖様の御蔭さま」

「もう止そうかと思いましたがお盆の話をします」
「ええー今更ー?」
「はじめます」

                *

 おそらく、この夏はまだ多くのご家庭が直前まで悩まれたのだろうと推測致します。御多分に漏れずわが家と、そして数年帰省を見送った妹家族も、互いにぎりぎりまで、それはもう前日まで悩みに悩み抜いて、それでも互いに元気で、対策を万全にする事で帰省は可能だと判断して、今年、やっとお盆の帰省を迎えることができました。

 これはそんなわが家の、育ち盛りの甥姪たちを全力でもてなそうとする自分目線の超個人的なお話。ほぼ「食」部分しかお見せ出来ないけれど出来る限り写真を撮ったつもりなので振り返ってみます。

 お迎え前日。自分は今日からお盆休み。前日はやること盛りだくさん。仕事の合間に立てたおもてなし計画表に基づいて、朝から仕込みに入る。まるでおせち料理を仕込むように、黙々と台所で作り置きおかずを仕上げていく。大きく異なるのは外気温。食中毒など洒落にならないから、食材の扱いにも、仕上げた料理の管理にも細心の注意を払う。保冷剤などを活用して素早く冷まし、とにかく冷蔵庫へ収めていく。既にお盆前の買い物を済ましてあるから、いつもより中身の詰まった冷蔵庫です。年に数回あるか無いかの頑張りどころだよと肩?を叩いておく。家電も時々励ましておかないと思い掛けないタイミングで拗ねるから。

 ペットボトルのジュースなんて久し振りに買った。チーズやウインナーなどもたくさん。これも珍しい。一番必要と思われる麦茶は鶴瓶さんのが準備万端で、湯を沸かしては五百ミリリットル程の麦茶の素を作り、水を足しては冷蔵庫で冷やすを繰り返す。ペットボトルのお茶も種類豊富だけど自分は普段飲まないから、いつもの延長で作る事にした。

 さて、数日の滞在となれば食事以外にも必要なものがあります。布団と着替え。それにスリッパ、バスタオル等と思い出してから、自分はううむと少し考える。何しろ育ち盛りの子ども達。この数年で背丈がぐううんと伸びに伸びて、小さい自分は当の昔に抜き去られて、現在進行形ですくすく成長中の子ども達。どう考えても布団が足りないし、どう考えても着替えやスリッパが小さい。このかわいいミッキーのスリッパに似合う足をお持ちのお子様はどこへやら・・。

「買わねば」

 妹が事前にある程度は宅配便で着替えなど送って来たけれど、それだけでは心許ない。当日もできるだけ身軽においでと言ってある。うだるほど暑い地方に建つわが家。その癖エアコンは二階に一台あるだけだから、みんな汗をうんとかくかもしれない。着替えは十分に揃えなくてはと思う。万が一馬鹿みたいな猛暑に襲われた場合は、避難所としてエアコンの一室を解放し、無事に過ごして貰う計画だ。その為に数日前にコンセントを差して試運転を済ませておいた。完璧だ。わが家のエアコンは存在を忘れ去られそうな程出番が少ない。私はエアコンが苦手。家中ぱーぱーに開け放って外の風さえ流れて居れば幸せなのだ。

 さあいよいよ出迎え当日がやって来た。行きは電車で来る。こんな時最寄り駅が徒歩圏内で助かると思う。駅まで迎えに行きたいけれど、今日はもち米を炊いて朝から冷やし団子を作っている。暑い中やってきたみんなに、まずは冷たいお団子を御馳走して旅の疲れを癒して欲しい。帰省の始めがそんなだったらいいなあと想像して、どうしても作りたくなったのだ。それにちょっと買い物も行く。実は別方向から兄の家族もお墓参りにやって来る。兄弟が多いと全員揃うのは難しいけれど、今度のお盆は入れ替わり立ち替わり兄弟が実家に顔を出す。面白い予感しかしない。自分はすぐ張り切ってあれこれ力の限り活動してしまうので、反対にみんなに気を遣われないよう、張りきり過ぎないようにと言い聞かせたつもり。そう、今回のテーマは「日々の延長」無理しないの大事。

 料理の合間に買い物を済ませて、再び台所へ籠って仕上げに取り掛かっていると、門扉の開けられる音が聞こえて来た。数人の声も。自然と顔が綻ぶ。

――来た来た、三年振りに帰って来たよ、お母さん。

「懐かしいー!」
 子ども達よりも妹が一番大きな声を出した。
「いらっしゃい」
 玄関から洗面台へ一人ずつ直行して、奇麗になった人から家の中へ。みんなよく分かっているから徹底している。マスクはもう外していいよ、御覧の通りぱーぱーだからね、扇風機も三台回しているよ。マスクや手洗いも大事だけど、今回の滞在で一番重要なのは「換気」。空気を停滞させてはいけない。これは鉄則。安心して過ごす為、扇風機はしっかり用意して、常に風の流れを作りました。

 今年の春に一度だけ会った子ども達だけど、みんなまた大きくなっている。そりゃ育ち盛りだもの、当然か。それにしても羨ましい位すくすく伸びるのね。体つきもしっかりしてきて、それに日焼け「どした!!?」という程焼けて。そっか、部活頑張ってるんだ。話には聞いていたけど、本当に、日々の積み重ねを感じます。

 ここからは、事前に準備した作り置きおかずやら、冷やす時間が足りずにあえなく皿へ取る方式になったお団子やら、朝はお宿気分でと思って台所で開いた朝食ビュッフェやらと、お墓参りや遊びに興じた滞在中の食卓を写真で掲載します。これ以上長々語られても皆様お困りになると気付いたのです。あんなことこんなことの思い出は各自の胸にしまっておこうと思います。


前日の仕込み風景。いいきゅうり。
オクラ和えと酢の物
小豆を炊く
あんこになる
ごはんの鍋でもち米を炊く
できたての餅へ冷たいあんこをのせて
白和え作り。白ごまの活躍する日。
夏はもろこし。3本分てんこ盛り
れんこん金平も大量
到着時のお昼だけ出来合いの助六などにも助けて貰った
朝食ビュッフェ
ステーキな夜
朝食ビュッフェ
盆の宴
朝食ビュッフェ


 それにしてもみんな本当によく食べた。まず好き嫌いを言わない。もちろん好みはそれぞれある。けれど出された物を何でも食べる。喜んでくれる。「日々の延長」を心掛けた結果野菜中心の献立だったけれど、子ども達も箸を伸ばすし、美味しいという言葉をいっぱい貰った。凄く嬉しかった。これだけよく食べるんだもの、大きくなるよね。何とも頼もしく、賑やかで楽しいお盆休みを過ごす事が出来ました。心配していた猛暑も、滞在中は不思議な程大人しかった。助かった。

 妹家族を見送って一週間後、みんな元気か確認のメールをしてみた。一同元気に過ごしているとのこと、こちらもみんな無事を伝えて、ほっと胸を撫で下ろした次第。

 数年ぶりに戻って来たわが家の賑やかなお盆。無事に始まり、無事に終える事が出来たのも、きっと御先祖様の御蔭だ。今頃はもう各々の場所へ帰られただろうか。空の彼方、ずっとずっと高い場所へ。

 またお会いできる日を楽しみにしています。
                                  
                                                                                            おしまい

わが家のお盆休みにお付き合い下さいまして誠にありがとうございました。
                                  
                                いち


   おまけ

優しい甥がお小遣いで買ってくれたお土産を、みんなが帰ってから食べました。





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