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食の風景

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「食の風景」とは、食に纏わる美味しいお話から、料理のあれこれを、時に脱線しながら、思うままに腕を揮っては語っております。レシピは無いけれど、今日も美味しいご飯を一緒に食べませんか。
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#フードエッセイ

食の風景「春来りて」

 列島に、桜舞い散る束の間に、こんなごはんを頂きました。  道明寺粉を使った「さくら生麩」を適度な大きさにカットして、加工フライパンに並べ、弱火で数分。面を変えながら焼き色をつけます。鮮やかな紅色が、食卓に素敵な春を呼び込んでくれそうな予感です。 柔らかい春の大根を炊くのが好きです。 冬の凛とした白色から、優しい乳白色になった春大根は、良い出汁の出る椎茸と一緒に鍋でコトコト。竹串がスッと刺さるようになれば頃合い。火を止めて、出汁餡をゆっくり入れていきます。再び火を点け、

食の風景「卵とじうどん」

うどんが食べたい、そんな気分。 我が家の冷凍庫には讃岐うどんがずっと昔から常備されています。子どもの頃、体調が悪い時は母にお粥かうどんを作ってもらいました。しんどくても、食欲がなくても、これなら食べられるんですね。胃に負担が少なく、優しい美味しさ。手軽でおいしいうどん。そんなうどんを頂きます。 味付けはシンプルに、出汁と塩。卵とじにして、どんぶりへ。お好みで、七味ととろろ昆布。刻みネギがないので、水菜を彩りに添えました。 「いただきます」 熱々の内に、麺をつるつるっと

食の風景「里芋ころん」

 昨年の晩秋のお話です。家で穫れた里芋を、初物として頂きます。収穫から数日、この日を待ち遠しく思いながら暮らしました。今年はどんなお味だろう、まさか未完成なんてこと無いよね・・・等と内心どきどき想像巡らしました。なにしろ作り方を教わった事などありません。料理と一緒、手探り、チャレンジ精神です。  洗い終えた里芋です。みんな生き生きと良いお色をしています。きれいですね。形・大きさの良いものはおせち料理のお煮しめに回すので、今回は小ぶりなものを選びましたが、ハリもあり、期待が膨

食の風景「そうだ、餃子食べよう」

不定期にやってくる、「そうだ、餃子食べよう」。 子どもの頃から家で包んできたので、餃子を食べる=豚ミンチと皮を買って作ること。と思い込んでいます。思い返してみても外食で餃子を注文した記憶がほとんどありません。生協を利用していた頃は冷凍の餃子を買うこともあったと思います。うちの家族もみんな餃子が好きです。というわけで、早速買い出しをして餃子を作って食べましょう! いつもは近所のスーパーで一番枚数の多い、それなのに一番お安い餃子の皮を買うのですが、具材がぎゅうぎゅうに詰まった

食の風景「おせち2023」

私のおせち作りは黒豆を水に浸すところから始まります。 2022年は26日から仕込みを始めました。買ってきた新物の黒豆をガラゴロガラゴロと鍋に移して水を張ると、さあ、今年もいよいよ始まるなという気持ちになります。 事前に作成した仕込みの段取り表に則って、毎日少しずつ進めていきます。そして、年末無事仕事納めを迎えますと、翌日からおせち作りが本格化します。 29日のお台所の様子です。 翌30日。まずは夕べ洗って水に浸しておいた2.8kg (2升)のもち米で、午前中にお餅を作

食の風景「肉じゃが食べてから行ったってや」

そんな日々に追われんといて。12月だからって急がんといてや。ああほら、また適当に済ませようとしてるやん。もう、せめて肉じゃが食べてから行ったってや。すぐに出来るで、待っとって。 今日は牛肉の肉じゃがや。肉と玉ねぎと人参は先にサラダ油で炒めるんよ。でも急いでるんやったら全部一気に煮始めたってちゃんとできるから心配いらんわ。そや、蓋忘れんといてや。早う火が入るからな。 ほなちょっと見てみるわ。どや、うまそうになって来てるか?ああ、ええ匂いがしてるわ。しかしあれやな。 色が欲

食の風景「冬暮らし、朝ごはん。」

おはよう 今朝も寒いね。朝ごはん、食べてきた? 今日は久しぶりに朝ごはんを撮影したよ。今わが家には御歳暮で頂いた青森のサンふじと山形天童市のラフランスと和歌山のみかん、それに今年出会ったお気に入りの青森の青りんご「ぐんま名月」があって果物王国なんだ。嬉しいな。 胡桃とカシューナッツには一匙のピーナツペーストを添えるよ。 刺身わかめには黒ゴマ、ほうれん草にはおかかを。そういえばほうれん草が旬を迎えたね。さっと湯がいたほうれん草の色鮮やかなこと、自然美を体現して憚らないんだ

食の風景「寒い朝の卵とじ雑炊」

 公園沿いの銀杏が一息に黄色く染まり、風が吹けばひらひら道へと舞い降ります。ビルの日陰は長く伸び、街にはイルミネーションが灯される季節がやって来ました。そろそろ冬の到来を感じています。  パジャマの袖で手を隠したくなるような冷たい空気に満ちた朝は、あったかくて、ほっとするような朝ごはんが食べたいと思います。  夕べ作った野菜スープを温め直して玉子とじにします。  溶き卵に塩と少々の水を加えておき、混ぜ合わせます。スープがぐつぐつ煮立ったら、そっと回し入れていきます。ふわふ

食の風景「ぶどうに誘われて牛たたき、秋に囲まれる」

 去る秋に頂いた果実酢の可能性を探るべく、引き続き果実酢料理のお話をします。巨峰味と合わせてみたいので、牛たたきを作りました。  オージービーフの牛もも肉塊を買って来て、塩胡椒を振りながら全面を鉄のフライパンで焼いていきます。その後アルミホイルに包んで余熱で少し火を入れ、冷めたらラップに包み冷凍保存も可能です。半解凍位が切りやすいです。    今日は白菜の千切りと焼きしめじ、秋南瓜、それに焼き粟麩を添え野菜にしました。もも肉ですからあまり出汁は残っていませんがたたきを焼いた

食の風景「果実酢の可能性」

 口に入れた瞬間、まるで果実を齧ったようなフレッシュな甘味と香りが広がりました。  去る秋の事、果実の旨味がぎゅっと詰まったお酢を頂きました。「シークワーサーと八朔」「巨峰」「マスカットオブアレキサンドリア」の三種類です。炭酸水などで割って飲む以外に、お料理にも使えるとのことで、想像が膨らみます。早速色々試してみました。 こちらは巨峰味のお試しに用意した、きのこと野菜の炒めです。塩胡椒しただけの炒め物が、どんな味に変化するでしょうか。どきどきです。 もう一品、海鮮マリ

食の風景「天麩羅に秋を綴じる」

 朝晩はすっかり冷え込むようになり、家から望むお山がみるみる赤味を帯びました。秋ですね。  以前おはぎに使った九重栗南瓜に再会しましたので、天麩羅にしようと思います。今日の相棒には、こちらも奇麗な蓮根です。熊本産です。 早速衣纏わせて揚げて参ります。小麦粉と水で作るシンプルな衣ですが、この割合と混ぜ方で、衣の仕上がりが変わって来ます。 また、油の温度にも気を付けたいです。しっかり熱された所へ種を入れれば天麩羅の表面がさくっと仕上がります。 以前天麩羅をお届けした時も語りま

食の風景「それならスープにしませんか」

具材は何でも良いのです。台所にあるものを鍋でぐつぐつことことすればスープです。これだけあったら食事になるのです。 スープにしませんか。 日々の時間に追われてしまった時、どうしても元気が出なくて台所へ立つのが億劫になることはありませんか。品数が増える程料理に時間がかかります。ただ栄養は摂りたいと思います。こんな時はスープにします。今日はそんな頼もしきスープの数々を写真で御紹介致します。それでは、 「いただきます」 和風洋風とこだわる必要もなく、その日の気分で、その日ある

食の風景「君が好きなきいろみどり、そしてあか」

旬を迎えた南瓜が美し過ぎやしませんか。半分に切った状態で断面を見せて並んでおりました。その多くは秋の彼岸に思い立っておはぎの南瓜あんとなりましたが、残りは元々食べたいと思った蒸焼きかぼちゃにしました。鉄のフライパンへ皮を下にして並べ、水を回し入れて蓋をします。じゅうじゅうじゅうじゅう、あっという間に甘い香りが漂います。水分が飛んだ頃に蓋を開けて焼き色を確認。こてんと向きを変えて、全体に火が入っていれば出来上がりです。味付け無し。それで良いのです。旬の南瓜は味付けいりません。甘

食の風景「秋の先陣切ったよ平茸ごはん」

そこは秋の入り口。少し歩けば大きなかぶがありました。平茸の株です。おばあさんやねこやねずみの力を借りなくても一人で持ち帰れるサイズの平茸の株です。 スーパーにきのこが盛り盛り置かれるようになると、「秋だもんねえ!」とやたらと誰かに共感を求めたくなります。年中食べられる食材ですが、秋のきのこは格別です。どれもみんな旨味が増して、活き活きとしています。余計な事はしないで、只炭火で焼いて頬張りたい。そう思わせる姿形をしています。 そんな立派な平茸を、ごはんの鍋で炊き込みご飯にしま