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【登壇レポート】データ・AIの活用で切り拓く建設DXのこれまでとこれから(2023.12.14第8回JAPAN BUILD TOKYO 特別講演)

2023年12月13日(水)から15日(金)まで、“建築の先端技術展”「第8回JAPAN BUILD TOKYO」が開催され、弊社も株式会社KENZO様と共同出展をしました。そして、展示会2日目に主催者による「建築・建設DX特別講演」にて、弊社代表取締役社長博多が登壇させていただきました。今回はその登壇内容をレポートさせていただきます。


「JAPAN BUILD TOKYO」とは?

JAPAN BUILD TOKYOは、建築・建設・不動産業界の課題を解決する最新の製品・サービスが一堂に出展する日本最大級の専門展示会です。2023年12月13日から15日まで東京ビッグサイトで開催された「第8回JAPAN BUILD TOKYO」では510社が出展し、3日間合計で約34、000人が来場しました。「建設DX展」「高性能建材・住設EXPO」「スマートビルディングEXPO」「建物の脱炭素EXPO」などの展示会から構成され、SORABITOは建設業に特化した電子商取引クラウドサービス「建設PAD」を提供する「株式会社KENZO」様と「建設DX展」に共同出展、合計14社ものミニセミナーを開催し、多くの来場者の注目を集め、その様子は「Build App News」でも取り上げていただきました。

ブース内セミナーの様子(出典:Build App News様 https://news.build-app.jp/article/25262/)

ここはライブ会場?展示会主催者企画ならではの演出

登壇を聴講するために向かった先は「東京ビッグサイト西ホール」。ご存じの方も多いかと思いますが、通常展示会場内で行われるセミナーは、展示ブースが並ぶ中、パーテーションで区切られた区画に椅子が並べられ、大型スクリーンに資料を投影しながら登壇するスタイルをイメージするかと思います。ところが、今回の主催者セミナーは一味違いました!

まず、入口の雰囲気が違います。「ココはテーマパーク?」と思わせる様な、わくわくさせられる入場ゲートが設置され、ゲートをくぐった先は暗い空間の中にLEDで照らされた通路がお目見え。その先にある暗い会場に入ると、重低音の音楽が流れ、超巨大スクリーンには最新技術が駆使された未来感ただよう建設現場の映像が流れています。まさにライブ会場か、リンゴのマークで有名な某有名企業の製品発表会の様な様子でした。そして司会者に紹介され、3名の登壇者がステージに上がりました。

博多の講演はAが正解です


ライブ会場か新製品発表会を想起させる超巨大スクリーン

3社が一緒に登壇している理由と登壇各社のご紹介

特別講演はパネルディスカッション形式で行われました。テーマは「データ・AIの活用で切り拓く建設DXのこれまでとこれから」。ファシリテータはSORABITO代表取締役社長博多 一晃が務め、株式会社アクティオホールティングス 取締役CIO経営戦略部長の井原宏尚様と、株式会社PKSHA Technology 執行役員アルゴリズムソリューション本部長の森田 航二郎様に登壇いただきました。

左から株式会社PKSHA Technology 執行役員アルゴリズムソリューション本部長 森田 航二郎様、株式会社アクティオホールティングス 取締役CIO経営戦略部長 井原宏尚様、SORABITO代表取締役社長 博多 一晃

なぜこの3社が?と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、実はこの3社は「建機」×「AI」で協業しており、そのご縁で今回の登壇に至っています。具体的な協業内容は、レンタル資産の効率的な運用支援。PKSHA TechnologyのAIアルゴリズム(処分価格予測AIモジュール)を利用し、保有資産の時価評価に活用できるサービス「i-Rental AI」をSORABITOが開発。建機レンタル業界最大手のアクティオに提供するというスキームです。協業についての詳細は、2022年3月9日にプレスリリースもさせていただいています。

講演は各社の紹介からはじまりました。井原様によるアクティオ社のご紹介では、同社が建機レンタルの国内最大手で、国内シェアは25%、グローバルでも3位の売上があることがグラフでわかりやすく紹介されました。

同社のビジネスモデルは、最近注目されているシェアリングエコノミービジネスのさきがけとも言えます。マーケット自体の堅調な伸びとあいまって業績も年々向上。各建設会社が建機や機材を所有する事による投資リスク分散やコスト低減だけではなく、レンタルにより業界全体で建機の回転率を高める事で、各社がいち早く最新の機械が活用できるため、建設業の皆様にとっても、建機メーカーにとってもメリットが大きいビジネスモデルとなっています。また、災害が発生してしまった際には、一度に大量の機械が必要になるため、レンタル会社の重要性は年々増していることも紹介されました。建設機械という”モノ”の「レンタル」だけではなく”知恵”も貸す「コンサルティング」にも注力し、「レンサルティング」と呼ぶ「コンサルティング型のレンタル」サービスを提供しています。

また、PKSHA社はAIの先駆者である東京大学松尾研究室出身の第一号博士である上野山勝也氏が代表取締役、技術顧問として松尾豊氏が名を連ねる、日本を代表するAI企業です。

森田様のご紹介では、売上約150億円、社員は研究者・エンジニアを中心に約500名が在籍、AIの研究・開発だけではなく、製品・サービスとして事業展開も両輪で行うことで、未来のソフトウェアを社会に広く浸透させるビジネスを展開していることが紹介されました。小売、広告/マーケティング、医療/製薬、製造、モビリティなど多様な業界・産業でAIを活用したDXの実績が豊富で、建設業においても、前述のアクティオ社が持つ大量の建機データと、SORABITOが持つ市場データを活用し、上述の保有資産の時価評価に活用できる「i-Rental AI」の開発もいただいています。清水建設様、東亜建設工業様、奥村組様などで活用されている「社内問い合わせ対応の自動化・効率化」に関する領域でも活用されています。

DX推進にあたっての組織のあり方

パネルディスカッションでは、「DX推進にあたっての組織のあり方」について意見交換が行われました。多くの企業では「推進したいが、なかなか現場に浸透しない」「どこから手を付けて良いかわからない」といった課題があり、なかなかDX推進が進まないという声も多く聞かれます。

井原様からは、多くの方が感じている「推進の難しさ」の原因が示されました。長年創意工夫して築き上げてきた業務フローを見直すのには、そもそも現場の大きな心理的な抵抗があります。また、DXを推進するためには、全拠点でそのやり方や段取りを変える必要があり、さらには自社のみではなく、顧客や取引先とのやり方も変える必要があります。当然それらを根本的に変えるのは困難を極めます。ところが、人手不足という危機が目の前にあります。これからその人手不足などの危機が解消される見込みは薄い一方で、仕事量は増えているという現実があります。効率をあげないと顧客に機械がお届けできない。この危機感がDX推進を行わなくてはならない大きな理由になり、強力にDXを推進しているとのこと。

そこで、DX推進にあたってのポイントが2つ共有されました。1つは「プロジェクトのスポンサーを決める」こと。本部長、役員、専務クラス、場合によっては社長などの影響力が大きい人自らがスポンサーとなり、スポンサーの右腕となっている人物をプロジェクトリーダーとし、仕事のやり方を変えていくことが重要とのことでした。2つめはその配下に役割分担されたチームを作り、そこにそれぞれの分野のエース級を配属すること。よくある話では、IT部門がDX推進をリードすることもあるのですが、システムチームももちろん作るものの、DX推進のためには、ビジネス側がリードをすることが重要であることが力説されました。技術の進化で、やりたいことができる様になってきたことも、DXを推進する環境変化として大きいのかもしれません。

建設業におけるAI活用の事例

博多からは「建設業におけるAI活用の事例」についても投げかけがありました。2024年問題が差し迫っており、今まで以上に現場へ多大な負荷がかかってしまうのは目に見えています。そのために、若手に早く活躍してもらう環境を構築する必要もあります。一方で、現場が忙しく、ベテランが若手を指導する時間が取れないというジレンマもよく聞きます。ナレッジシェアなどの仕組構築も一つの解決策と言われており、AIが親和性が高いのでは?という内容です。

森田様からは、AIの進化に伴う活用方法の事例共有がされました。従来のAI活用は「外観検査」や「職人業務」などの特殊技能の代替えが中心だったのですが、生成AIの登場により「知識の運用」ができる様になり、知識をわかりやすく人に教えられる様になったことが最近の大きな変化とのこと。建設業に限らないことではあるものの、特に建設業では知識がベテランに集約してしまい、その知識が運用されにくいという課題があったのですが、その知識をAIが学習して、検索することで、わかりやすく若手が理解したり活用できる様になってきたことも例示されました。具体的には従来、各種法規制、建築基準、安全衛生法、個社ノウハウなどが、ベテランの方に情報集約される一方で、ベテランの方であればあるほど忙しく、若手は直接聞きにくいという事実が挙げられました。そのため、様々な情報の個別調査に膨大な時間とコストがかかっているという課題があります。事例では、これらの情報をAIが学習することで、若手がAIから適切な情報を引き出し、「建築基準チェック」「品質チェック」「安全管理」などに応用できる様になってきていることが共有され、生成AIの活用により、情報の引き出し方も対話式ででき、誰でも使える様になっている点が、多くの聴講者の関心を集めていました。

建設業の課題解決のために

パネルディスカッションを通じ、AIの可能性を感じると共に「最も強いものが生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。 唯一生き残るのは、変化できる者である。」という、 チャールズ・ダーウィンの言葉が思い浮かびました。

人手不足、市場の変化など建設業のみならず、産業界には多くの課題があるものの、その課題を解決しないことには未来を切り拓くことはできません。AIはそれを切り拓くツールでもあり、データを活用することでAIを充分に活用し、課題を解決していくことができることは明白です。一方でそれらを活用して課題解決を行うためには、過去の習慣やルールに縛られていては、なし得ないことも痛感しました。SORABITOは「世界中の明日をつくる」をミッションに掲げ、建設・建設機械の領域を中心に業界の発展に貢献したいと考えています。講演を通じ、その想いを一層強くしました。
講演では、多くのご質問を頂戴しました。質問やその回答については、年始の記事にて改めて共有いたします。

データ活用に課題があれば、お気軽にお問い合わせください



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