84.夜が明けるまで

はい、203号室の南雲あかりです…
雨がやみました。
中の島公園で、東さんと朝までお喋り。
『たまひらハイツ』にすぐに戻る勇気もなくって。

東さんが話してくれたことがありました。
それは、亡くなったお母様のことでした。
小さい頃に母を亡くしているんだそうです。
汐里（しおり）さんという方で、海が好きだったと。
だから、貝殻を耳に当てたら、母と喋れるんじゃないかって。
小さい頃は本気で思ってたといいます。
皆さんも、聞いたことありませんか？
貝殻を耳に当てると海の音が聞こえるって。

東さんは、翔君が少し羨ましいと言いました。
「だって、生きていたら、会えるじゃないですか」

その言葉に息が苦しくなりました。自分の愚かさを思い知りました。

東さんは不器用だけど、こんなわたしのことを応援してくれて。
朝まで話に付き合ってくれました。
わたしは、なんとお礼を言ったらいいのか…
勇気を出すための勇気を貰った気がします。

夜が明け、放置されていた自転車のもとに戻った時には、かごに鳥の糞が。
ほら、あの話は冗談じゃなかったでしょ？
後ろに乗ってくか聞かれたんだけど、断りました。
ほら、西口さんに一緒にいたと思われたくないし。

神様、もし本当に神様がいるのなら、傷付いても、押し潰されても、何度でも這い上がる力を、強い心をわたしにください。

#雨あがり #中の島公園 #たまひらハイツ