わたしが身体のどこかを痛がると、3歳の娘が飛んできて撫でてくれる。 お腹が痛い、と言えばお腹を、腰が痛いと言えば腰を、「よしよし」と言いながら優しく撫でてくれるのだ。そのちいさな手の感触が、あどけない声が、たまらなく愛しくて、気持ちが良い。 触れられた部分からぬくもりが伝わって、ほんとうに薬になる気さえする。 「もういたくない?」 と、聞くので、痛くなくなったよ、ありがとう。そう答えると、彼女は満足げに頷いて、先ほどまで遊んでいたおもちゃたちのもとへいそいそと帰っ
こんにちは、ソラと申します。 いつもはnoteで育児にまつわるエッセイを書いていますが、今日はここで、娘の予防接種についてずっと不安をかかえていたことについて書いてみようとおもいます。 BCGの予防接種を打つ前 現在4歳になる娘は、いまのところ定期接種・任意接種のどちらのワクチンもすべて打ってきました。 とくに生後6ヶ月までに打つBCGは、生涯に1度だけ打つもので、役所からも医師からも必ず接種を受けるように指導されています。 それだけ念を押すからには相当重要
紙の上にクレヨンを滑らせることに幼い娘が慣れてきた頃、そろそろ色鉛筆を買おうとおもった。 どこで買おうか、何色セットにしようか、などと、ぼんやり考えながらも忙しい日々のなか、実際に買い求めるのはつい後回しにしていた。 いつだったか、雑談のなかでそのことを実家の母に話すと、 「昔使ってたやつが家にあるよ。あれで良かったら持って帰り」 と、あっさり言われた。 はじめての色鉛筆はこれがいい!というこだわりは全くなかったので、有り難く譲り受けた。 24色の色鉛筆。
夜空に輝く月を見た時、きれいだね、と平々凡々たる感想を述べたわたしの隣で、「おつきさまのなかに、あさがいるみたいね」と娘は言った。 まだ言葉をうまく話せない頃から、娘は月を見上げるのが好きだった。 星よりも月。美しい夜景よりも、月。娘が赤ちゃんだった時に一度だけ一緒に見たことのある虹よりも、もしかしたら月のほうが好きなのかもしれない。 この日も窓の外に満月を見つけて、「あ!むーんちゃんや!」と娘は叫んだ。 ムーンちゃん、と言うのは娘が好んで使う、月の愛称である。
隣の家から赤ん坊の泣き声が聞こえる。 四月もあと数日で終わろうとしている頃の話だ。冬の間はほとんどずっと閉めきっていた窓を、この時期にはしょっちゅう開けて、部屋に風を通す機会も増える。先日まで聞こえなかった隣家の音に、だから突然気づくのだった。 「なんか懐かしいなぁ」 夫が何を思い浮かべてそう言ったのか、聞かずとも分かったので、 「うちの子もずーっと泣いてたよね」 と、わたしは答えた。 きっと同じ映像が、わたしと夫の脳裏に浮かんでいた。 娘がまだ寝返り
園生活が始まる最初の日、幼稚園の玄関で母と別れるとき娘はきっと泣くだろうと思っていた。 うわんうわん泣いて、ママおいていかないで、なんて言われたらどうしよう…。想像するだけで胸が張り裂けそうなくらい、娘のことを溺愛している。自覚はある。 いよいよそのときが来ると、娘は、幼稚園の先生と仲良く手をつないで、淀みない足取りでさっさと教室へ入っていった。 うそでしょ!?あの人見知り大魔王が!?と、わたしは唖然とした。 人気作家、江國香織さんの著に「号泣する準備はできていた
それまで見ていた景色が、ふと途切れる感覚とともに、わたしは目を覚ました。なにか夢を見ていた気がするのに、なにも思い出せない。ぼんやりと天井を見ているうちに、左の肩にずしりと重いものが乗っていることに気づいた。頬に触れるのは、娘の髪。起こさないようにそうっと娘の頭をベッドに下ろして、寝室を出た。 今日は娘の通う幼稚園の、初登園の日だ。昨夜、念入りに確認した通園バッグの中身を、最後にもう一度確かめる。 娘にとって、これが初めての集団生活となる。大丈夫かな。困ったことがあっ
初めまして、ソラと申します。 2020年6月1日、育児にまつわるエッセイを書き始めました。 もともとはブログを書いていましたが、雑記・日記の類ではなく、小説風に日常のことを書いてみたら面白いかな、と思ったところで、それってつまりエッセイでは?と気づきました。 そして、それを書くならばブログよりもnoteにしたほうがシンプルに楽しめるのではないか、とも。 一般的なエッセイのような、やわらかくて面白い文章ではないと自覚していますが、実体験を自分の視点で書いているので