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アイスは一日一個までだったあの日

夏の終わりが近い。
このクソ暑い夏が。

みなさま如何お過ごしですか。
残暑見舞い申し上げます。

残暑見舞いは8月中に出しましょうなんて、どこかの偉い人が言っていた気がしますが、9月に入っても今だに猛暑が続いていますから、少しくらい遅れても文句は言われないでしょう。

暦的には8月7日(日)が「立秋」であり、古人はなぜこの日から秋と定義したのか理解に苦しむほどに、夏本番さながらの残暑が私たちの肌を焼いています。


「夏なんて嫌いだ」子供の頃はそう思っていました。
それから年齢を重ねた今、夏が嫌いだとは思いません。

蝉の鳴き声が五月蝿いなと思っていた昔。
今は蝉の声が少なくなったような気がして少し心配です。

夏が終わりに差し掛かった頃にどこからともなくやってくるヒグラシの声は、1日の終わりを感じさせて少し悲しくなった思い出。
こちらは今でも健在です。むしろより悲しく感じます。


さてさて今年は本当に猛暑続きで、35度以上の日は「酷暑」って言うらしいよと知り合いが言っておりました。

どんどん暑くなって地球やばいんじゃないの?って物思いに耽ったりもしますけれども、地球の長い歴史からみると今は寒冷期だそうですよ。
(信じられるか?)

でも暑いものは暑いし、私を含め多くの人たちはもうエアコンなしでは生きられいし、エアコンも24時間使い続けるのが当たり前になってきたりして、世の中が便利になっていく一方で、私たちは生物としての肉体的な強さを捨てているような気がしています。

でもこれは退化、ではなく正常な進化なのかもしれません。

人間は自然や環境を擬似的にコントロールするという創造神のような力を得てしまったが故に、自分の肉体を進化させるよりも世界をコントロールすることの方がローコストになってしまったのでしょう。

団扇とか風鈴の音で必死に涼を取っていたあの頃から一変して、今ではリモコンのボタンひとつで快適極まりない空間が作れるのだから、文明の力に縋ってしまうのは必然です。

そして大人になりある程度の自由を得た私は、エアコンの設定温度を必要以上に下げて長袖を着てアイスを食べるなんて贅沢なことをするようになり、今日は暑そうだから外に出るのはやめようとか、そんな怠慢も誰からも咎められることはなくなってしまいました。

(真似するのはやめましょう、節電は大事です。)

子供の頃は教室にエアコンなどなかったし、家のエアコンの設定温度と稼働時間は決められていたし、汗で宿題の用紙にシミを作りながら勉強に取り組まないといけなかったし、部活も熱中症上等って感じだったし、部活帰りにコンビニで買うアイスは決まってガリガリ君だったし、冷凍庫に入っているファミリー用のアイスは一日一個までだった。

だから夏は嫌いだと思っていました。

でも本当は夏が嫌いだったわけではないのかもしれません。

多分早く大人になりたかっただけなのだと思います。

大人になれば、エアコンをどれだけ使おうが、アイスを1日にたくさん食べようが全ては自己責任で、誰かに怒られることはないから。

夏になると冬の到来に恋焦がれていたのは、冬が恋しかったわけではなくて、時間が早く進んで欲しかったからで、その証拠に大人になってしまった今、この夏に終わって欲しいとは思わないのです。

時間の流れが無性に早くなってしまった今、今度は時間が止まって欲しいとすら願っています。

だから夏の思い出を残そうとして、この夏を何か意味のあるものにしなければと言う気持ちが逸る。

そしてこれから訪れる束の間の休息の秋も、寒さと冷たさで私たちを孤独にしてくれる冬も、出会いと別れで涙するかもしれない春も、そしてこのクソみたいな暑さの夏も、すべて終わって欲しくない季節なんだと思うわけでした。

なんて、ちょっといい感じにまとめてみましたけれども、でも本当はやっぱり夏なんて好きなわけでもなくて、こうやって自己中極まりない虚飾でしかない理由を並べて、不実なものを真実だと自分を納得させるのが上手くなってしまっただけなのかもしれません。

何はともあれ今年の夏はもうすぐ終わってしまって、次の夏が来る頃に私がこの世に生存していたとするなら私もまた1つ年齢を重ねていることになります。

今年の夏は今年で終わりであり、来年の夏は今年の夏とは同じではない。
アイスは一日一個までだった昔と今年の夏は全く違った夏であるように。

だから今年の夏にしなければいけないことは、是非とも今年のうちにしておきたいものです。

そんなこと改めて言われなくてもわかっているし、それでもやる気が起きないのが人間ですから、思い出のない夏を思い出とするのもまた良いかと思います。

それではみなさま、2023年残り僅かな夏を心の赴くままにお過ごしください。


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