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筋トレ上級者故のマインドブロック

「筋肉は簡単にはつかないから。」

筋トレに本気に取り組んだ経験がある人なら、一度は言ったことがあるセリフではないだろうか。


あなた「女性も筋トレをした方がいいよ!」

女の子「えー、私筋肉がついて太くなるのが嫌なんだけど。」

あなた「筋肉はそう簡単にはつかないよ。女性の場合は筋トレすれば引き締まるから。」

女の子「えー、嘘ー。」

あなた「ベンチプレス100キロ、スクワット100キロ挙げてる自分ですらこれくらいだから。そもそも男性と女性ではテストステロンのレベルが違うし、筋トレ以外にも食事や睡眠も大事だから、本当にそんなに簡単に筋肉は大きくならないから。」

女の子「本当かなー?」

この一連の流れは、まさに平々凡々の流れである。


軽々しく筋肉がつくとかいうやつを見ていると、「本気でやったこともないくせに筋トレ舐めんなよ」と一言物申したくなもなるだろう。

私もずっとこう思ってきた。


ある時、ジムで筋トレ初心者に出会った。

そいつの筋肉はあっという間に肥大していき、簡単に私を追い越した。

私の数年間の努力はあっさりと完膚なきまでに叩きのめされてしまった。

私はどうしてもその秘訣が知りたかった。

勇気を出して聞いてみた。

彼は言った。
「毎日筋トレしているのだから成長して当然でしょう。」

そいつは誰よりも筋トレを楽しんでいた。

その時私は思ったのだ。

筋肉が簡単に大きくなるわけがないと、決めつけていたのは自分自身なのではないか?

それが自己暗示となり自己成長を無意識に押さえつけていたのではないか?

これまで、筋肉を効率的に肥大させるために、ありとあらゆるトレーニング方法を研究し、解剖学や栄養学についても学び直した。

実践しては修正しての繰り返し。

しかし、そんな筋トレ理論よりももっと大事なことがあったのだ。


最近は何を語る上でも、論文の結果を持ち出すようになったと思う。
論文ベースのエビデンスがあれば、多くの人にとって再現性が高く、説得力と権威性がある説明ができるからだ。

エビデンス至上主義となった昨今の多くの人が理屈っぽくなったように感じるのは私だけではないはずだ。

そして根拠のない理論はスピリチュアルだからと忌避される。

確かにエビデンスは重要極まりない要素ではあるが、最近はあまりにもエビデンスが持て囃され過ぎていると思う。

私もいくつものエビデンスという確からしい根拠を求めてきた。

しかし、どの分野でも頂点に立っているようなやつは、偏差値において正規分布のベルカーブからは逸脱した存在であるのも確かだ。


JBBF日本ボディビル選手権で優勝経験をもつ「横川尚隆」選手がたった数年間でボディビル日本一の座を手にしたのも、彼が常識人ではないからだと思う。

最近はタレントとしても才能を開花させている彼は、お茶の間で見かけることも増えた。

彼はとあるテレビ番組で、風呂にプロテインを入れて皮膚からタンパク質を吸収しようとしていたという過去のエピソードを語っていた。

まず当たり前だが、皮膚から巨大分子であるプロテインは吸収されない。

普通の人間なら無意味なことだと笑うだろう。

案の定その発言で会場の大爆笑を誘っていた。

しかし、私は全く笑えなかった。

そんな馬鹿げたことを本気で信じているやつだからこそ、常識という世界の理から外れ、凡人では辿り着けない領域に達することができたという、私史上の大発見をしてしまったから。

プロテイン風呂なんてことを考えつくやつは多分日本全土で彼一人であり、そんな常軌を逸脱したマインドの持ち主だからこそ日本一になれたのだろう。

論文のエビデンスや、物理的な常識なんてものさえも、ぶち壊して彼は本当に皮膚からタンパク質を吸収していたのかもしれない、などとスピリチュアルなことを考えてしまった。


この世に存在する生物だけでヒトだけが、前頭葉を異常なまでに発達させ、未来について思考する能力を得た。

人間以外の生物は完全に今この瞬間を生きている。

将来に投資することができるのは人様の特権であるが、その分私たちは余計なことで頭を悩ますことになる。

熟考すればするほど、自分の見通しがどれだけ甘かったかを思いしらされ、五里霧中になってしまう。そして将来が不安になり勝手に自己嫌悪をする始末だ。

もっと単純に考えた方がいいこともある。

かの偉人、ソクラテスの教えに「無知の知」という教えがある。

「私は自分が何も知らないことを知っている。無知を自覚していない人よりも無知を自覚している私の方がマシである。」という格言だが私はこの言葉が好きである。

自分は知識人だと信じて疑わないやつは、いつも無知のバカに先を越されて文句を言う。

ソクラテスの教えの本質からは少し異なるが、知らないことは悪いことではないし、知らないからこそ信じられることもある。

このお菓子は体に悪いと思って嫌々食べている人よりも、このお菓子は体に悪いことを知らないで美味しいと思って食べている人の方が、多分幸せだろう。

人生もまさにそんな感じだ。

馬鹿げた話に聞こえるかもしれないが、病は気からと言うように、本当に気の持ちようで人間は変わる。

新薬の治験で、プラセボ(偽薬)であってもそれが薬だと信じて服用していれば、少しだけ効果が出てしまうように。


エビデンスばかり集めていた私は、本当に大切なことを忘れてしまっていたのだろう。

筋トレで1番大事なことは、筋トレを楽しむことであり、筋肉がつくと信じて疑わない絶対的な自分への信頼だ。

そうだ、筋肉がつくのが嫌なんだよねと言っていた女の子は、自分の筋肉が大きくなることを一ミリも疑っていなかったではないか。筋トレをすれば筋肉がつくと心の底から信じていた。

我々はそんな彼女を見習わなければいけないのではないか?

さあ筋トレ上級者よ、初心に帰る時が来た。

これでマッチョになれると信じて疑うことのなかった、ジムに入会したあの時の気持ちを。

これがドーピング薬に匹敵するほどの効果があると、一辺の曇りもなく信じていた、初めてプロテインを飲んだ時のあの時の気持ちを思い出すのだ。

さあ筋トレをしよう。

筋トレするとすぐ太くなっちゃう体質だからと仰っている女の子のマインドを魂に宿して。

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