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母、韓流にハマる

母は、昔こう言っていた。

「芸能人の追っかけとかできる人がほんとうにうらやましい。お母さんはそこまで夢中になれない。何事にもドハマりするということがない。夢中になれたら、ほんとうに楽しいだろうね。」

母は、高倉健、佐藤浩市、上川隆也、がほんのり好きだった。
でもそれよりも読書が好きで、書店で本を買ってきては毎晩読書タイムを設け、ウトウトして本が顔に落ちてくるなんてことも。ジャンル問わず色々読むが、五木寛之さんをよく読んでいたような。

余談だが、私は多感な頃に、母から借りた『マディソン郡の橋』、川上弘美『センセイの鞄』を読み、魂をわしづかみされたものである。

(↓※ちょっとネタバレです※)

喪失感、やさしい虚無、これほどまでに強烈にそばにいるのに、もう相手はこの世にいない、そもそも相手はこの世ならぬ場所からきれいな流線のように落ちてきたのではないかと、思うほどに胸が締めつけられる。悲しく、せつなく、茫漠として、秋の終わりの匂いと残るあたたかさ、冬の始まりのつめたい風のような、さみしく、掻き立てられる、当時そんな印象をもった。

話をもとに戻すと、いま母が夢中なのは、チャン・ヒョクという俳優さんである。
画像をみると、爽やか、清潔感、セクシー、ワイルド、併せ持ったような方である。『マイダス』という作品でハマったそうだ。ちなみに主演の女優さんも、昔の石田ゆり子のような可愛いさ、次に生まれ変わったらお母さんこんな感じになりたい、と言っていた。

「生きてると、何があるかわからない。お母さん、ほんとうに幸せ。肌ツヤもよくなった気がする。」と母は大喜びしている。

娘としても嬉しい。私は地元から遠く離れたところで結婚したから、寂しい思いをしてないか、いつも心配だ。私自身もホームシックでつらかった。たしかに今も寂しいとは思うけれど、チャン・ヒョクさんが癒してくれる。

生きていると、年齢は関係なしに、自分では想像もつかなったことに出逢う。

私もまさか自分が2回も結婚するとは思ってなかったし、ふるさとから遠い場所に住むなんて思っていなかった。他にも、大学卒業後何年も経って見知らぬ土地でまた1年間学校に通ったこと、などなど。

自分が1人で山登りするなんてありえないと思ってたし、車中泊で各地をまわり、瀬戸内海で、日本海で、大平洋で、釣りをし、色々な島で海水浴やアウトドアクッキングを楽しむとは思ってなかった。自然が好きなので、有り難く思う。

季節はいつも巡り、過ぎ去る。あと何回楽しめるだろうと、いつも思う。

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