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【8月の読書振り返り】

8月は漫画などを含めて14冊読了。特に印象に残ったのは写真の5冊。

⚫︎ウラジーミル・ナボコフ 『アーダ』
旧訳を読んだのは20年以上前かな。ようやく新訳で読みました。訳者の若島正さんが「ナボコフ度200%」と評する、やりたい放題の大作。ペタンティックでポルノグラフィックでSF風味もある兄と妹の愛欲の物語。難解だし、登場人物にはまるで共感できないのに、読み出したら止まらず、読了後は感動に包まれてしまうナボコフの魔法を堪能しました。『ロリータ』、『青白い炎』と並ぶ大傑作。

⚫︎千葉聡『歌うカタツムリ 進化とらせんの物語』
カタツムリに関する軽い読みものかと思いきや、進化論の発展をめぐるスケールの大きな物語でした。有名無名問わず多数の研究者が登場しますが、中心にあるのはカタツムリ。ところどころに散りばめられているユーモアも良かったです。

⚫︎若松英輔『イエス伝』
若松さんの著書はしばしば真面目すぎるなあ、と感じるのですが、本書はその真面目さが見事にプラスに働いた力作。非キリスト教信者が大半の現代の日本人に向けてイエスの伝記を書く意義に正面から向かい合っている著者の姿勢に胸を打たれます。

⚫︎岡田暁生/片山杜秀『ごまかさないクラシック音楽』
私はお二人より5歳ほど下なのですが、感覚に共通するところがあって、楽しく読めました。岡田さんが作曲家としてのブーレーズやハーバーマスについて辛辣な評価をするところが面白い。片山さんのいつもながらの博覧強記と広い視野には感嘆するばかり。

⚫︎小野寺拓也/田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』
120ページ程のブックレットながらも、いまだに唱える人が絶えない「ナチスは良いこともした」論に、論理的に反証しています。歴史を考察するとはどういうことなのかについて学べる好著。

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