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オジサンと多様性

ネットで調べた観光情報では、比地大滝までは、遊歩道の入口から片道1300m、所要時間は40分、となっていた。アップダウンも、それなりにありそうだった。
ビックリマンシールを集めるがごとく、各地の観光地をゲットしている私なので、滝、というものも、数は、それなりに見ている。マップルの記事の書きっぷりと、小さく載っていた写真を見れば、どんな滝か、だいたいわかる。比地大滝は、推測すると、大変失礼な言い方で恐縮ですが、普通の滝だろう。駐車場から、片道40分。往復すると、なんだかんだで、2時間はかかる。ツーリング中の2時間は、貴重だ。普段だったら、見に行かない。でも、沖縄ツーリングは、時間に余裕があるので、行くことにした。
数年前だったら、比地大滝に行かない理由は、時間がかかることではなくて、往復で80分も歩くことだった。最近は、歩く距離は、あまり気にならなくなった。比地大滝は、大変失礼な言い方で恐縮ですが、たぶん、普通の滝なので、今回、楽しみにしていたのは、道中の林の景色だった。実際、林の景色は、期待通りだった。妙に細い木が大量に生い茂っていて、道端の草も、葉っぱの形が、普段見ない形をしていて、しっかりと南国のジャングルの気分がした。真っ黒なヤモリが、草陰でジタバタする、というおまけまでついて、40分間、ずっと楽しめた。
そういえば、今年、大学の同級生から届いた年賀状に、山歩きを始めた、と書いてあった。どうも、そういう年頃らしい。若いころは、歳をとった人が、一様に同じような趣味に興じているのを見ると、歳をとったせいで若い人がやっているような趣味ができなくなって、消去法と妥協の結果、落ち着くところに落ち着いた、みたいに感じているところもあった。でも、実際に、歳をとってみると、諦めも妥協もなく、気が付くと、歩くのが嫌いじゃなくなっていた。周りの同じ年頃の人も同じようになっているところを見ると、これは、ただ単に、そういうお年頃、ということのようだ。幼稚園の年長くらいになると、急にアンパンマンを見なくなるのと同じだ。なのに、なんだか、残念な感じになる。
世の中のいろいろなことは、だいたい、若い人たちの嗜好に合うように作られている。その、メインストリームの趣味嗜好に同調できないと、周縁化されて、いないのと同じみたいになるから、というと、大げさか。社会の多様性、というようなことが、よく言われるけれど、今の時代、オジサンは、わりと、マイノリティなのかもしれない。

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