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だいふんとう

小安峡のことは、今回のツーリングのルートを考えるまで、知らなかった。岩手から新潟に向かうルートに目立った観光地がなかったので、寄れそうなところを探したら、小安峡が見つかった。
そんな、あまりメジャーではない小安峡の観光名所は、大噴湯です。読めますか?大噴湯。私は読めなかった。といっても、難しいわけではなくて、だいふんとう、と読みます。答えを聞くと、その読み方でよかったのか、と思いますよね。だって、だいふんとう、と言ったら、大奮闘、です。
大奮闘、という言葉自体、久しぶりに聞いた気がします。大乱闘、とか、大健闘、はよく聞くけれど、大奮闘、は最近あまり聞かない。同系列のフレーズの中で、ちょっと昭和の香りがする。大奮闘、というと、私のイメージは、ワイシャツ腕まくりの、七三分けの脂っこいオジサンが、顔を真っ赤にして、鼻息を荒くしながら、頼まれてもいないことにまで手を出して、少し空回り気味に走り回って、周りがちょっと引きながら笑っている、という感じ。悪くはないけれど、良いとも言いにくい。
小安峡のだいふんとうは、大噴湯なので、大奮闘ではありません。そういうオジサンのことではなく、おそらく、いや間違いなく、大変に湯が噴き出している、ということでしょう。でも、だいふんとう、と聞いてしまったので、なぜか、大奮闘のイメージが消えない。小安峡、という、知名度がそれほどでもない観光地で、誰かが1人大奮闘している気がしてならない。地元の人が、そんなに頑張らなくても、と少し思いつつ、せっかくがんばっているから、と温かく見守ってくれる中、彼の大奮闘は続くのであった。この場合、彼というのは、地元の役場の若者、ということになりますかね。小安峡の大奮闘を見に行く、となると、その彼に会いに行くことになるわけですが、見に行くのは大噴湯なので、大変に湯が噴き出しているのを見ることになります。
で、実際の、小安峡の大噴湯はどうだったか、というと、これは、名前の通り、大変に湯が噴き出していました。いや違う、名前から想像する以上に大噴湯。岩の裂け目から、轟音を立てて、熱湯が猛烈に噴出。岩壁から、真横に、1mくらい、ブシャーッと。あっちからも、こっちからも、ブシャーッ、ブシャーッ。大騒ぎです。渓谷の、大噴湯の部分だけ、湯気で真っ白になっていた。初めて見たら、思わず吹き出してしまうくらいに大噴湯。
あのね、これはね、大奮闘です。ビジュアルは、まさしく大奮闘。それも、ピークの時の。
「小安峡君、最近がんばってるね」
と、愛しのあの子に言われた直後ぐらい。鼻と耳から、湯気がブシャーッと噴き出して、目が真っ赤になって、こめかみに血管が浮いて、顔がプルプル震えている、そんなくらいの大奮闘。大噴湯が大奮闘、って、どうしようもないダジャレだけど、これは、ダジャレじゃなくて、事実です。大奮闘の語源は、大噴湯です、と言われたら、私は素直に信じる。
小安峡のだいふんとうは、大噴湯だけど、大奮闘でも、だいたい正解です。

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