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城跡巡り

那覇から名護に向かうときは、岬巡りだった。
うるま市から那覇に向かう道は、城跡巡りになった。
 
最初は、勝連城跡。
勝連城跡というと、しっかりとした大きな四角い石垣と、その手前をうねりながら伸びる石でできた通路、という写真が定番で、行ってみたら、ほとんど、その景色しかなかった。石垣は、大きめの四角い石がきれいに並んでいた。沖縄式じゃない、普通の城の石垣に近かった。他の城跡と同じように、勝連城跡も、石垣の一番上から、海を見渡す爽快な景色が見られた。でも、座喜味城や今帰仁城と比べて、格別、というほどでもなかった。ここは、今は入場無料だけれど、2022年からは、入場料が600円になる。値段のわりに、他の城跡より魅力を感じないのが、正直な感想だった。
沖縄の城跡も、観光するのが三カ所目となると、言うことが、ずいぶん偉そうになる。こんな、簡単に偉そうになる奴の言うことは、信用してはいけない。
 
次は、中城城跡。
沖縄では、城を「ぐすく」と読みます。勝連城は、かつれんぐすく。今帰仁城は、なきじんぐすく。では、中城城は、なかぐすくぐすく、かというと、なかぐすくじょう、ということになるらしい。だから何?と言われても、そうらしいですよ、という以外に、何もないです。
そんな中城城跡は、名前に城が二つも入るだけあって、沖縄の城跡の王様でした。一番広くて、一番見どころも多かった。ご主人、沖縄で、一つしか城跡を見に行けない、ということでしたら、中城城跡がよいかと。ええ、間違いないです。ただし、入場料が400円かかりますよ。あと、観光するには、少々、お時間がかかります。
入場料を払って、中城城跡の中に入ると、入口の脇に、電動カート乗り場があった。電動カートに乗ると、係の人が、城の奥まで運んでくれた。そこから入口に戻る遊歩道が、観光コースになっていた。このシステムは、全部見るつもりの人にとっては、往復しなくていいので、大変に合理的で便利だ。言い方を変えると、一旦、電動カートに乗ったら、全部見るしかない、ということになる。遊歩道は、それなりに距離もある。私の場合、ゆっくり歩いて、一時間くらいかかった。イヤイヤご主人、ここはもう全部見ていただいて、ええ、それだけの価値は十分ございますので。ハイ。
城の入口の石垣が少し崩れかけていて、古代遺跡みたいなのもかっこいいし、先に進めば、いろんな大きさの石でできた、いろんな形の石垣が見られた。石垣の上から見える景色も、素晴らしかった。他の城跡でできることは、全部入っていた。遊歩道の最後は、広い芝生の広場になっていて、石垣に腰を下ろして、のんびりと休憩できる、という、おまけもついていた。いかがですか、ご主人。中城城跡。いやいや、そんなこと言わずに、どうか一つ。
 
城巡りの最後は、首里城。
今まで見てきたのは、城跡だけど、首里城は、城。敷地の中に、建物がたくさんあった。他の城跡も、現役時代は、同じような建物がたくさん立っていたのだろうか。建物がたくさん建っているところが他の城跡とは違う首里城だけど、石垣も違った。沖縄の石垣と言えば、小さい石が、無造作に積まれているように見えながら、不思議に隙間なく並んでいるのが一般的なのに、首里城の石垣の石は、大きくて、機械で切ったように切り口がまっすぐで、壁のように平らだった。首里城と、他の城跡は、同じ沖縄の城跡でも、建物として根本的に違う気がした。
守礼門なんかを見学しながら先に進んで、一番奥の、正殿のあるエリアに着いた。そこから先は、入場料が必要だった。正殿は、2019年の火事で焼け落ちてしまって、今は、まだ復興中だった。有料エリアの入口の前で、ちょっと考えた。入場券売り場の近くに、琉球民族の衣装を着た女性のガイドの人がいたので、聞いてみた。
「この中には、何があるんですか」
「今は、正殿はないんですけど、台座とか、今しか見られない、貴重なものがいろいろあって、あの、大丈夫です」
ガイドの人は、一生懸命説明してくれた。なんで、俺は、いつもこうなのか。自分の雑な性格が、本当に嫌になった。
少し多めに入場料を払いたいような気持ちで、入場券を買った。中は、がれきの撤収が、だいたい終わって、これから、再建に向けて、工事の計画を立てる、というところだった。きれいに、何もなかった。再建には、まだまだ時間がかかりそうだった。残った台座の周りには、火災直後の写真が展示されていた。痛々しくて、見るのがつらかった。何がある、なんて、聞いた私が悪かったです。そんな姿は見せないでいいです。元気になるまで、ゆっくり休んでください。
首里城の、有料エリアの一番奥は、展望台になっていた。展望台からは、海が見えた。地図を見て考えれば当たり前の話なのに、那覇のような都会の真ん中にある首里城から、海が見えるのは意外だった。いろんなところが、他の城跡と全然違う首里城だけど、城のてっぺんから海が見えるところは、一緒だった。

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