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中小企業がCookieレス時代に向き合うために必要な”データマーケティング”とは?

昨今Web広告業界で話題となっているCookie規制。中小企業がすべきことは何か?アドテクノロジー領域の専門チーム・マーケティングテクノロジー本部 本部長の小野 友嘉さんにインタビューしました!

インタビューの前に、Cookieについて簡単に整理します。

CookieはWeb広告には欠かせない存在

Webブラウザに備わっている機能である、Cookie。私たちがWebページを閲覧するとき、WebブラウザとWebサーバー(ドメイン)の間で、データのやり取りをする仕組みのことです。

Cookieには二種類あります。「1st party Cookie」は、閲覧したWebページのドメインから直接発行されているCookie。例えば、あるECサイトに再訪問するとき、ログイン情報の入力なしでログインできたり、過去にカートに入れた商品を確認できたりします。

「3rd party Cookie」は、広告配信サーバーなど異なるドメインから発行されるCookie。例えば、TシャツのWebページを見たあと、ほかのWebページを閲覧する際、TシャツのWebページのバナー広告が出てくることがあります。Cookieを活用してアクセス履歴が記録され、広告配信のターゲティングに使われているのです。

特にWeb広告では、ユーザーのターゲティングやコンバージョンの計測など、あらゆる場面で利用され、Cookieは広告効果の最適化のために欠かせない存在だといえます。

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世界で進むCookie規制の動き

一方、Cookieで得られるデータを第三者に提供して問題になるなど、世界ではプライバシー保護の観点からCookie規制に動き始めています。

Apple社は、2017年にユーザーのプライバシーを守るため、ITP(※2)1.0を発表し、実装しました。Google社も、2020年1月に2年以内にWebブラウザ「Chrome」で3rd party Cookieの利用を規制することを発表しています。
*2021年7月現在では、3rd party Cookieの利用を2023年まで延期。

※2:ITP(Intelligent Tracking Prevention)
iOSとMacに搭載されたブラウザの「Safari」内で3rd Party Cookieを利用したユーザーの行動データの収集を規制するもの。

中小企業がCookie規制に向き合うためには?

では、中小企業は、Cookie規制にどう向き合っていけばよいのか。アドテクノロジー領域の専門家である小野さんに伺いました!

小野さんは、2021年2月「Criteo Expert」に認定されました。Criteoプロダクトに精通し、優れた運用実績と知識を持つ個人を認定する制度で、日本全国の広告代理店のうちわずか3名が選ばれています!

現在は、Criteo広告をはじめとしたデータフィード広告やアドテクツールの導入支援に特化したマーケティングテクノロジー本部の本部長を務めています。

小野 友嘉(マーケティングテクノロジー本部 本部長)
2011年株式会社Cygamesにエンジニアとして入社。ガラケーからスマホ化やアプリ化の時代をフロントエンジニアリーダーとして従事。2015年ソウルドアウトに入社し、アドテクノロジーに特化したチームにて、フィード広告とアドテクツールの拡販に従事。2018年下期COO賞。

▼オンラインでインタビューを行いました!

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――—まず、Cookie規制が進むと、どのような問題が起きるのか教えてください!

小野:これまでWeb広告で活用していたデータが欠損していきます。何も対応しなければ、広告効果が悪化してしまうと思っています。

例えば、リターゲティング広告です。一度Webページに訪れたユーザーに広告配信を行うので、ユーザーがコンバージョンに至る確度が高く、Web広告を実施しているほとんどの広告主が取り組んでいる手法だと思います。しかしリターゲティング広告は、Cookieを利用してユーザーに広告を配信しているので、効果の悪化が見込まれますね。

ほかにもWeb広告では、Cookieを経由して、年齢や性別、興味・関心などの属性情報や行動履歴を収集し、ターゲティングを行うことがほとんどです。また、コンバージョンの計測にも支障が出る可能性が高いですね。

――—では、広告主は、どのような対応が必要なのでしょうか?

小野:Cookieに頼らないデータを使って、効果の計測ができるようにすることです。

Facebook社では、2020年の秋頃「コンバージョンAPI」の提供を開始しました。コンバージョンAPIは、オンライン・オフラインにおけるFacebook・Instagram広告の効果を、3rd party Cookieを用いずに計測することを可能にします。

しかし利用するためには、取得するデータの仕様を設計したり、APIを実装するためにソースコードを書いたり、その後の配信設計を考えたりと、複雑な仕組みを理解する必要があります。とてもすばらしい機能である一方、プログラミングとFacebookの両方の知識を持ち合わせていなければ利用できないだろう、と感じています。

―――そうなんですね。Facebook以外の媒体では、Cookie規制に対応する方法はありますか?

小野:Yahoo!、Googleでは、オフラインコンバージョンのデータを利用することができます。オフラインコンバージョンとは、店舗への来店、商品購入、電話での注文などをさします。広告主がもつ顧客データです。このデータを広告アカウントに読み込ませて、広告運用に活用します。

―――Facebookも、Yahoo!、Googleも、中小企業が対応していこうとすると、かなり労力がかかりそうです。

小野:そこで私たちが開発したのがDATA CONTROLというツールです。

お客様がもっている「1st Party Data(※1)」を使い、各広告媒体にシグナルとして送ります。そうすることで、Cookie規制で欠損していくデータを補完し、広告効果の最適化をより強固なものとするツールです。

*ニュースリリース「Cookieレス時代に向けたデータ連携ソリューション 『DATA CONTROL』の提供を開始。各種媒体の欠損データを補い、広告効果の最大化へ」(2021.08.04)
https://www.sold-out.co.jp/news/topic_20210824

※1:1st Party Data
自社で蓄積した顧客データのこと。サイト内での行動ログ情報だけではなく、会員登録時の属性やメールアドレスなどのデータも含む。
*MarkeZine「1stパーティーデータ とは?(First Party Data/自社ユーザーデータ)」
https://markezine.jp/word/detail/1st%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF

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―――「DATA CONTROL」にはどんな特長がありますか?

小野:誰でも簡単に使えることですね!

「DATA CONTROL」では、お客様がもつ1st Party DataをExcelファイルに入れてハッシュ化(※)します。生成したファイルをツールにアップロードするだけで、媒体にシグナルとして送られるように設計されています。私たちが向き合っている地方、中小企業が、FacebookのコンバージョンAPIや、Yahoo!、Googleのオフラインコンバージョンを簡単に使いこなせるようなツールです。

Web広告業界では、類似のツールやサービスが出てきました。ツールではなく、コンサルティングのサービスを提供している企業もありますね。FacebookのコンバージョンAPIを広告主のWebサーバーに実装して、データを活用できる仕組みの構築をサポートする、といったサービスのようです。

※ハッシュ化
元の数値や文字列からハッシュ関数によって固定長の擬似乱数を生成すること。

―――これまで、最新のアドテクツールは、大企業向けの代理店やツールベンダーが先行して提供。その1、2年後に廉価版が市場に広がり、中小企業に行き届き始める、といった印象がありました。しかし今回は、特に不明瞭なことが多い領域に対して、比較的早い動きを取ったように感じます。

小野:そういった流れは確かにありますよね。しかし、Cookie規制は段階的に既に発生しており、Google社の発表では2023年という期限があります。時間に余裕はないと危機感をもち、自分たちで開発するべきだ、という結論に至りました。

そして、Cookie規制の影響は、広告パフォーマンスにダイレクトに影響を与えます。なので、大企業に比べてご予算が限られる中小企業ほど、今回のソリューションを求めていると思うんですよね。

待っているよりも、私たちが先行投資してツールを作る。そして技術やノウハウを貯めておき、困ったタイミングですぐに提供できるようにしたい、と考えました。

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―――地方、中小企業は、Cookie規制の対策に早期に取り組むべきだと考えていますか?

小野:そうですね。Cookie規制に関わらず、データを活用したマーケティング、”データマーケティング”に取り組んでいくべきだと考えています。

媒体のアルゴリズム(※)はどんどん進化しています。Web広告の最適化は、機械学習にどのようなデータを与えられるかが攻略法になってきていると思うんですよね。例えば、顧客データにフォーカスした1st Party Dataを媒体の機械学習に与えることができれば、ターゲティング精度が高まります。そのときに重要なのは、データを簡単に送れる環境をつくっておくことです。

まだ日本では、データマーケティングに取り組んでいる企業が少ないので、踏み出せない企業さまが多いかもしれません。ですが必ず、対価は返ってくると思っています。

※アルゴリズム
ある特定の目的を、より効率的に達成するために定式化された処理手順やルール。
例えば、Instagramのアルゴリズムでは、「良質な投稿だ」と認識すると、ハッシュタグトップや発見タブレコメンドに表示される確率が上がる。
*株式会社ホットリンク SNSコラム「【2021年最新】シグナルとアルゴリズムから考えるInstagramアカウントグロース #まなぼうSNS」
https://www.hottolink.co.jp/column/20210615_109434/

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―――今後はデータマーケティングが重要になってくるんですね。ソウルドアウトでは、どんなことに取り組んでいきたいと考えていますか?

小野:まず、「DATA CONTROL」をあらゆる媒体で使えるようにしていきたいです。

そして、もっと先のことを考えると、データを使うことが怖くない、といった状態をつくれればいいと思っています。お客様に、「ソウルドアウトにデータを渡したら、どうにかしてくれる」と思っていただけるような会社にしたいですね。そのソリューションが、人なのかツールなのかは分かりませんが。

例えば、ECで、売上や顧客データといったデータすべてを、AmazonやShopify、BASEなどの複数のプラットフォームで展開し、マーケティングで活かす。そんなことができるとおもしろいと思います。ソウルドアウトがデータ統合プラットフォームになるイメージです。地方、中小企業のITの困りごとを解決するのがソウルドアウトでありたいです。

―――小野さん個人としては、将来どのようなことに取り組んでいきたいと考えていますか?

小野:今向き合っているお客様を助けたいです。困りごとを解決する方法が、たまたまテクノロジーだっただけなんですよね。最終的には、ソウルドアウトのお客様だけではなくて、全国の中小・ベンチャー企業さまを助けられるようになりたいです。

あと、向き合うお客様を広げていったり、取り組みの幅を広げていったりすることで、後輩も育っていくと思います。エンジニアなら、プログラミングのスキルが上がっていきます。一人で解決できることは限られているので、私だけではなくたくさんの人が、困りごとを解決できるようになればいいな、と思いますね。


編集後記
「ITP対策が必要」最近よく聞く言葉でしたが、理解しているつもりになっていただけの気がしています。小野さんの話を聞き、中小企業がCookieレス時代にどう向き合うか、なぜ向き合わなければならないか、明確になりました。一人でも多くの企業に届いてほしいです!

【話し手:小野 友嘉/取材・執筆:みやたけ(@udon_miyatake)】


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