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#13 会社を辞めました


1年間休職するも復職に至らず、退職へ

8年勤めた会社を辞めた。

1年間の休職期間が終わりに近づいた頃から、復職に向けて会社と調整をしていたのだけれど、どうにもスムーズにいかず、残念ながら復職には至らなかった。

無理さえしなければ仕事もできるくらいには回復していたのだが、絶対に無理はしたくなかった。あんなしんどい思いをするのは、もう二度とごめんだ。
せっかく休職して、休職前の元気だったときよりもずっと元気になったのだから。

戻ればまた無理をしてしまって、また前と同じ状況に陥るのではないか。
戻ってもまた同じことの繰り返しになるのではないか。

そんな恐怖心があった。
そんなの当然、あるに決まってる。

であれば、ビクビクしながら仕事をするよりも、多少のリスクはあっても自分のやりたいことにチャレンジするほうがずっと建設的なのではないか。
私はそう考えた。


休職期間中の会社とのやりとりが、しんどすぎた

在職中は会社のことを書くのを控えていたんだけれど、これでやっと遠慮なく書ける!
というわけで、これまで書いていなかったことを書いていこうと思う。

休職期間中にとてもしんどかったのが、会社とのやりとり。
会社の総務人事担当者が窓口となり、月2回程度のメールのやりとりをしていたのだが、これが私にとって非常に大きなストレスとなっていた。
そしてこれは間違いなく、私の復職に対する気持ちを挫いた。

ざっと書き出しても、これだけある。
(箇条書きにしようとしたけど、全然ならない…)

・休職に入って10日くらいしか経っていないのに状況確認される

「どうも、僕です。お休みに入って10日くらい経ちましたけど、調子どうですか〜?」
こんなめちゃくちゃ軽い感じで、電話がかかってきた。そして、このタイミングで、休職に至るまでの経緯についてヒアリングされた。

まず「僕です」っていう挨拶に大混乱。彼はなぜ普通に名乗らなかったのだろうか。友達でもないし、それほど仲良くもないのに。いまだ謎だ。
私も「どちら様ですか?」って聞き返せたらよかったんだけど、元気だったらそれくらいのことはできたんだけど、当時はそれすらも面倒でしんどい状態。そのときは声で判別することもできず、終始「この人、誰だっけ???」と思いながら話していた。本当にしんどかった。

経緯の説明も、当時の仕事の状況からいちいち話さないといけなくて、このときの私にはとてもとってもしんどい作業だった。なぜにこのタイミングなの?? いま話さないといけないことなの???
私の頭は混乱するばかりだった。

私は頭を抱え、言葉を選びながらゆっくりとゆっくりと話した。伝えるべきことを整理して話すこともスムーズにできない。私はこんなに苦痛で表情を歪ませながら必死で話しているのに、電話なので相手にはその様子はおそらく伝わっていない。

極めつけは、まだ休み始めたばかりのこのタイミングで、復職の話をされたこと。「復職できる状態になったら、1か月くらいかけて会社でリハビリをするので、早めに言ってくださいね。準備に時間もかかるので」とか言われた。
そんなこと、とてもまだ考えられる状態じゃないのに。それくらいのこともわからないの??? ほんまに、なぜにこのタイミングなの???

会社に対して不信感と嫌悪感を抱くようになったのは、このときからだった。

・休職に入って3か月目、父が他界した直後にも復職の話をされる

これは見出しのとおりなのだが、父が他界した直後に電話で話す機会があり、そのときにも「復職できる状態になったら早めに言ってくださいね」と言われた。しつこい。
「復職できる状態になったら、こちらから早めにお伝えしますので、それまでお待ちいただけますか?」と何度もお願いしているのに。

わざわざこのタイミングで言うことなの?
デリカシーなさすぎない??
肉親を失って間もなくで、とても大きなストレスを受けたばっかりだって、アホでもわかるよね???

会社に対しての不信感と嫌悪感はさらに増していく。

・休職に入って4か月目で退職勧奨される

休職に入って4か月目に、会社に呼び出されて当該担当者と面談をした。

面談の内容を簡単に要約すると、
「休職して4か月も経つのに全然良くなっている感じがしないから、在職したまま療養するのは意味がないと思う。退職して治療に専念したらどう?」
というものだった。

向こうが「調子はどうですか?」と聞くもんだから、その当時の自分の状況や回復のために取り組んでいることを答えられる範囲で答えた。それなのに、「全然良くなっている感じがしない」と言われたのは正直いい気分がしなかった。

「そんなことしてるから治らないんじゃないの? その主治医って信頼できる先生なの?」
そんなことまで言われた。
なんなんだろう、無礼極まりないこの発言。

あんなにしんどい思いをしてここまでやってきたのに、そして回復のためにこんなに頑張っているのに。それを「意味がない」とバッサリ切り捨てるなんて。病気のことも治療のことも何も知らないくせに、なんでこんなことが言えたのだろう。この人は(あるいは、この会社は)本当に何もわかっていない人(会社)なんだな、と思った。

この担当者には、私の発達障害のことも話していて「当社は障害者雇用もしているので、障害者手帳があれば会社として最大限の配慮はさせていただきますよ」と前に言ってくれていた。
しかしやっぱり知識がないのか、このときは理解してくれるような雰囲気は微塵もなかった。初めから退職勧奨をするつもりで、私を呼び出したのだろう。私の話を聞く耳なんて、そもそも持っていなかったのだ。

この件については、主治医と相談したうえで、当該担当者とあらためて面談をすることを口約束していたのだが、スケジュールがきつくて対応が難しくなってしまったため日時変更をお願いするメールを送った。すると、こんな恐ろしい返信が。

「現在は休職中で静養していると思うんだけど。 復職に向けた会社との話し合いより大事な用事があるのか?」(←意訳だけどほぼほぼこんな感じ)

つまり、「病気で会社を休職してるくせに、会社の用事を放ったらかして、なに遊んでんねん」って思われてるわけだ。

このメールに憤慨した私は、直属の上司に相談。
上司から当該担当者に話をしてもらい、以後の面談は回避された。

もちろん、この件は主治医にもちゃんと相談した。
「そういう話は聞いたことはないですが、それは退職勧奨にあたるので応じなくていいです。会社から呼び出しがあっても従う必要はないです。現在はまだ面談ができる状態ではないので医師から止められていると言って断ってください」
そのときの私にはとても心強いアドバイスだった。

・私が送ったメールをスルーする

会社とのやりとりで、私から会社側に依頼することが時折あった。とても小さな依頼ではあるが、その依頼はことごとくスルーされた。
対応できないならできないと、理由をきちんと説明してくれればいいのに、事前にわかっているのであれば最初にそう言ってくれればいいのに、納得のいく説明をしてくれない。返信もなく、メールを送っても送ってもスルーされる。

こんなことが、毎回のように続いた。
これが私の大きな大きなストレスとなった。

会社に対しての不信感と嫌悪感は増すばかり。
っていうか、私を辞めさせたくてわざとやってるのかとも考えた。

私が聞きたいことには答えてくれない。
とにかく、まったく理解がないなと感じた。
私の障害のことも知ってるくせに。それを知ったうえでのこの対応って、大問題じゃない??

その後、女性の担当者に変わった。これでかなり楽になるかと思ったが、そうでもなかった。少しだけマシになったくらい。
結局、このストレスは退職するまで続いた。


会社から突きつけられた、厳しい復職の条件

復職に向け、休職期間中に約1か月間のリハビリを会社で実施することになっていた。私の休職期間が終了するまであと1か月を切ろうかというタイミングで急に、「本人と主治医と総務部担当者にて三者面談をしたい」と会社に言われた。
メンタル疾患で休職した場合にはこれが必須になっているということを、そこで初めて聞いた。必須であるなら、もう少し前もって説明しておいてくれればスムーズに調整できたのに。会社の対応に、またイライラ。

主治医を含めての三者面談については、クリニックによって対応が異なる。
私の通うクリニックでは対応していなかった。別のクリニックではどうなのかと興味があったので尋ねてみると、対応しているところもあった。しかし保険適用はできないそうで、その費用は企業負担になることが一般的のようだ。

私の通うクリニックでは、主治医と会社間のやりとりは書面であれば可能とのこと。それを会社に伝えると、会社は私の主治医宛てに質問状を送った。

質問状に書かれていた会社側の復職の条件は、フルタイム勤務で、休職前と同等の業務に戻ること。
企業によっては、時短やフレックスでの勤務がOKだったり、軽めの業務から始めさせてくれたりするところもある。「戻ってすぐに、前と同じように働いてもらう」というのは、休職者にとっては正直しんどいと思う。主治医に聞くと、徐々に慣れるように配慮してくれる企業は多いけれど、うちの会社みたいな企業も一定数で存在しているとのことだった。

それはまぁ仕方がないとして、会社とのやりとりのなかで私が引っかかったことがある。

復職できるかどうかの判断は、「体調を崩した原因が再度生じても問題ないか」をリハビリ期間で見極めるというのだ。

これについては私の主治医も「問題がないわけがない!」と呆れていた。
前とまったく同じことは怖くてとてもできない。またそれをさせようとしているということは恐怖でしかない。ハッキリ言ってこれは「脅し」である。

私が休職に至ったのは、業務量が自分の許容範囲を大きく超えてしまったことが原因だ。

休職前4ヶ月間の私の残業時間は平均で40時間だった。これは前年度の私の残業時間の平均と比較して2.7倍という数字だ。

もっと働いている人からすれば、なんだそれくらい、って思うかもしれないけれど、それまでの私の業務量と比較して明らかに、急激に業務量が増えた。これは紛れもない事実だ。

「体調を崩した原因が再度生じても問題ないか」ということは、休職原因となった事象が再び発生する前提だということなのか。
会社として必要最低限の配慮(いわゆる合理的配慮?)をしてもらったうえで「体調を崩した原因が再度生じないようにするために、どのように対処していくか」が重要であるというのが医師や私の考えだ。そういう観点で、私はそれまで治療を続けてきた。会社と治療側の観点が大きく異なっているような気がした。

そのようにメールで反論すると、会社からは以下の返信。
「休職前の業務について事業部に確認したところ、業務の質、量ともに、会社が通常求める範囲であり、過度な業務ではなかったという認識です」

まぁ、そりゃそうだろうな。
仮に過度だったとしても、そんなこと絶対に認めるわけがないだろうよ。

だから「自分の許容範囲」って言ってるよね?
私は「会社のせい」とか「誰のせい」なんて一言も言ってないし、思ってもいないよ?
これじゃまるで、私が「会社に明らかに無理な業務量を押し付けられたせいで体調を崩した」って主張してるって誤解されかねなくない???
私はそれがとても心配になった。

会社からの質問状を主治医に見てもらったうえで相談して、復職はしない方針を固めた。

主治医は「なんか変なんですよ。こんなものが入ってて。ビックリしました」と言って、茶色い封筒を取り出して私に見せてくれた。返信用として封筒が同封されていたのだが、それには切手が貼られていなかった。

「あぁ、私に切手代を負担しろってことだと思います」と私が返すと、
「そういうことですか。これだけでもこの会社がどういう会社か、よくわかりました」と同情してくれた主治医。

「でも、いっしょに働いている社員の人たちは、みんないい人たちばかりなんですよ」と私は付け加えた。すると主治医は、
「社員がいい人たちでも、上層部がダメなら、そこはダメな会社ですよ」と、私をやさしく諭してくれた。

休職してからずっと、会社とのやりとりが大きなストレスになっていることを、主治医にはすべて、包み隠さず相談してきた。

「魅力的な会社であれば、戻りたいと思うはずですから。そう思えないのは、それだけの会社だということですよ」
主治医のその言葉が、強く印象に残っている。


やっとの思いで退職手続きに漕ぎつける

退職手続きに漕ぎつけるまでも、長くて複雑な道のりだった。
やっとこさ退職手続きができるとなったときには、「これでやっと前に進める!」と歓喜した。

退職の手続きは、私が通うクリニックにほど近いところにあるカフェで行われた。総務担当者と事業部の上長が、わざわざそこまで足を運んでくれた。
総務担当者とのやりとりはずっとメールでしかしてこなかったので、これが初対面。上長とは久しぶりの対面だった。

まずは、社員証や名刺などの返却物を手渡す。
次に退職届と退職願を書き、離職票へ必要事項を記入する。
退職に関するアンケート(あくまで総務部内で参考にするだけとのことだった)への記入なんかもあった。
そして、必要な書類(退職証明書、社会保険加入状況など)をもらって、その説明を受けた。

ひととおり手続きが済んだ後に、例の業務過多の件、「自分の許容範囲を超えた」の意味について私から話した。誤解されているのなら、それだけはしっかり解いておきたかったから。

前任者よりはずっと話しやすい人だったので、わりとちゃんと話ができたかな。私の調子が良ければ、メールだけじゃなく対面や電話で話したりと、もっとコミュニケーションをとれたんだけどな。それができていれば、もっと良好な関係を築けていたかもしれない。

向こうも「そんなふうに感じられていたなんて思いもしなかったです。確かにメールのやりとりだけだったので、意思の疎通が上手くいかなかったところはあったかもしれません。そんな思いをさせてしまって、すみませんでした」と謝ってくれた。
人と人とは、やっぱり会話が大事なんだなと痛感した。

最後に、お世話になったお礼をあらためて言って、私は店を出た。

これで終わった。
これでやっと、前に進める。
ここまでなんやかんやといろいろあったけど、終わりよければすべてよし、だ。

私のこの経験から言えるのは、復職を目指す場合は、できるだけ早い時期から準備を始めておくことが大事だということ。もちろん無理は禁物だ。自分の体調に合わせて、できる範囲でいい。担当者と面談するなどして少しずつ調整を進めながら、できるだけ会社との良好な関係を築いておくと、きっとスムーズにいくはずだ。

私は、それができなかった。
私の勤めていた会社は、そこそこ大きい企業だったから、ちゃんとしたナレッジがあるものと期待していた。休職者に関しての対応マニュアルのようなものもあったにはあったようだが、それが正常に機能していたようには私にはとても思えなかった。

会社には過度に期待しないこと。これに尽きるかな。
会社には会社の立場があるから、そう簡単に社員には寄り添ってくれないと思っておいたほうがいい。

私の体験談が少しでも誰かの役に立ってくれれば、会社を辞めたのにも大いに意味があったというものだ。

私は、この会社に勤めたことで自分に発達障害があることがわかったわけだし、こんなに面白いネタをたくさん提供してもらえたので、これはこれでよかったかなと、ある意味とても感謝している。

転んでもタダでは起きない。
そう、それが私。超前向きなアスペルガーなのだ。

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