夫婦のカタチ

結婚して間も無く丸15年になる。

よく独特の空気感の夫婦だと言われる。自分達もそう思っているから、否定はしない。
友達の延長、或いは遠い親戚、とにかく男×女で成り立っているというのとは少し違う、独特の関係性。

夫は7つ年上だ。
だからといって兄妹っぽい訳でもない。
お互いが空気のような存在、という訳でもない。
オープンだけどクローズ。
居心地は悪くない。

そもそもなぜ結婚する事になったのかすらも、もう覚えていない。
夫は結婚する気もなかったし、まして子供を作る気もなかったらしいので、いまだに本人も『何で気が向いたのか、俺も分からない』と言う。
しかも元々の女性の好みと180度違うタイプの、私と。

夫は基本的に自由な人だ。
独りの時間がないとfrustrationで辛くなる。
時間は守る人だけれど、気分が乗らない(大抵は天気に左右される)日は本当に機嫌が悪い。
会う約束をしようとしても、『気が向いたらね』と予定を曖昧なままにされ、結婚前は週末を何度無駄な連絡待ちで過ごした事か分からない。

アメリカ暮らしを数年していたせいか、元々の性格もあってか、炊事洗濯は出来る人だし、料理は結婚してから数年は私より数倍上手だったし、多分いまでも独りで生きて行くのになんの問題もない。
強いて言えば各種手続き系を面倒くさがるので、行政とのやり取りはネックかも、くらい。

喧嘩は殆どした事がない。
喧嘩になるようなトピックも無かったし、多分それなりに私に不満もあったのだろうけど、夫が飲み込んでくれていたから。
私は私で、夫を本気で怒らせるとややこしいので、黙って片付けていたことが多々あって、そう言う意味ではお互いに本気で向き合う事を避けてきたのかもしれない。

じゃあなぜまだ一緒にいるのだ?と訊かれたら、夫の言葉を借りれば『家族だから』としか言いようがない。
私達は家族だ。
もう“夫婦"ではなく、"家族"だから。

決して愛情がないわけではない。
家に帰れば真っ先に話したいし、居ればとても落ち着くし、頼りにしているし、取り留めない話だってする。
だけどそれはもう、恋愛の延長ではなく"家族愛"だ。


ふと時々、私は夫から自由を奪ってしまったんじゃないかと考えることがある。
専業主婦をしていた頃からそう思っていたけれど、主にそれは子供達と私の生活を夫ひとりの肩に背負わせていることだった。
今は私もそれなりの収入があるけれど、その代わり育児の負担を一部担保してもらうことについて、何だか後ろめたく思ってしまうのはそのせいだと思う。

子供が嫌いではないけれど、自分の時間を奪われるのが嫌なひとだから、何だか申し訳ないと思ってしまうのだ。
子供達は可愛いけれど、時々子供のいない生活を選んでも良かったのかな、と思うこともある。
夫にいちど本当のところを訊いてみたいけれど、怖くて訊けないでいる。

酷く歪に見えるだろうし、もっと膝を突き合わせて話せというひともいるかもしれない。
でも、そんな風に何年も過ごして来たから、今更どうして良いか分からない。


夫の中には決して誰にも触れない領域があって、夫自身が『一番の理解者』だと言い切る私ですらも、そこにはきっと辿り着けない。
本人も『絶対に無理だ』と言いきる。
それはもう諦めていることだけれど、時々どうしようもなく寂しさを感じることがある。

日々は淡々と過ぎてゆく。
子供達がいて、賑やかで、楽しくて、余計なことを考えずに済む時間。Negativeになりそうな心にそっと蓋をして、今を楽しみ、笑う。いつでも強くありたいと願う。

こんなカタチでも、私にとっては幸せで、それは人が思うほどそんなに悪いものではないよ、と思う。
きっと、これからも。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?