見出し画像

呼吸の瞑想(3): 喜びへの気づき

おはようございます。前々回前回と「身体に関する考察」についてお話しさせて頂きました。今日は「感受に関する考察」についてお話しします。「感受」というのは五感などの感覚とそれに付随する快・不快のことです。感覚には、心地良い感覚と嫌な感覚があります。どちらでもない感覚というのもあるとは思いますが、基本的にはどれも多かれ少なかれ快か不快かのいずれかの感情を伴うものです。今日は呼吸を通じて、これらの感受、特に喜びについて考察します。

 ではまず、少し瞑想してみましょう。前回と同じようにまず呼吸に集中しながら息を吸って下さい。そのまま少し呼吸に注意を向けていて下さい。そうしたら次に、呼吸ができることに喜びを感じるようにしてみてください。「ああ、この呼吸は楽しいな、この空気は美味しいな」と思いながらゆっくりと呼吸を味わってみてください。しばらくすると自分の中に喜びの感情が生まれてくるのを感じることができると思います。

第二の四考察(感受に関する考察)
5. 「喜びを感じながら息を吸おう。喜びを感じながら息を吐こう」と訓練しなさい。
6. 「安らぎを感じながら息を吸おう。安らぎを感じながら息を吐こう」と訓練しなさい。
7. 「心のプロセスを感じながら息を吸おう。心のプロセスを感じながら息を吐こう」と訓練しなさい。
8. 「心のプロセスを静めながら息を吸おう。心のプロセスを静めながら息を吐こう」と訓練しなさい。

 これが5番目の考察になります。「喜びを感じながら呼吸をしよう」というものですね。前回までの「身体に関する考察」に習熟してきた方であれば、これは比較的容易に感得できる境地だと思います。重要な違いは、「身体の考察」では呼吸であったり身体であったり、比較的直接感じ取れるものに意識を集中する訓練をしたのに対して、「感受に関する考察」では、そこから出てくる自分の感情へと意識を向ける点です。

 呼吸に「喜び」を感じられるようになったら、今度は同じように心の安らぎを感じながら呼吸をしてみてください。これは「安らぎを感じながら呼吸をしよう」という6番目の考察になります。すでに「喜び」を感じる段階で「安らぎ」も感じられたという方もいるかもしれません。どちらかと言えば「喜び」は強い感情なのに対して「安らぎ」はもっと穏やかです。そして「安らぎ」のほうが安定して続く状態だといえます。

 これらの感情は一生懸命に感じようとするよりは、呼吸の瞑想を通じて思考を一旦止めたところで、自然に感情が感じられるのを待つほうがうまくいきます。思考を滅して呼吸に集中したときに現れる高揚感が喜びであり、次いで現れる寂静の心が安らぎです。十分に感じられるようになるまで訓練をしてください。

 さて仏教の瞑想は大きく分けて止(し)と観(かん)の2つがあります。サマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想ともいいます。マインドフルネス瞑想の用語では、focused attentionとopen monitoringと呼びます。が、どれも同じ意味です。止は思考や感情を停止させるための瞑想、観は自分の心をあるがままに見るための瞑想です。一般に観の瞑想のほうが難しいので、止の瞑想に習熟した後に行います。

 いまお話ししている「呼吸の瞑想」では第6番目の考察までが止の瞑想、第7番目からが観の瞑想になります。すでに第5,第6の考察にも観の要素が含まれていますが、いよいよ7番目の瞑想からは自分の心と向き合う、観の瞑想に入ります。あまり拙速に進むと心に負担をかけすぎてしまう可能性もありますから、まずこの第6番目の考察までをしっかりと実践できるように訓練しておく必要があります。必要に応じていつでもこの段階まで戻ってきて下さい。呼吸の瞑想によって心の安らぎを容易に得られるようになったら、先へ進んでいただければと思います

 本日は最後までお聞きくださり、どうもありがとうございました。

「呼吸の瞑想(4): 快と不快」へ

「呼吸の瞑想(2): 身体への気づき」へ

「呼吸の瞑想」目次ページへ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?